2026年4月のドイツ失業率は2ヶ月連続で6.4%を計上、コロナ期以来の高水準で労働市場の停滞が叫ばれています。にもかかわらず業界では「人材不足」が叫ばれており、ドイツ企業の多くが人員補充できていないという結果に。なぜこのようなねじれ現象が生じているのでしょうか?ドイツ産業界の構造変革をテーマに解説をおこなっていきます。
2022年以降「不景気」状態にあるというドイツ経済。一度は回復の兆しを見せつつあったものの、2026年のイラン問題によって再び景気観は下落、今年も不景気の波から抜け出せなさそうというムードに包まれています。
ドイツ経済の停滞の原因がどこに端緒を持つか、突き止めることは難しいでしょう。中国の台頭、外需の不振、様々な要因が挙げられますが、最も大きな要因と呼ばれているのが、世界的な競合との厳しい競争の中、ロシア・ウクライナ戦争の余波でエネルギー価格が高騰したことで原材料費が高騰、価格競争についていけず脱落、というパターンです。
ドイツが企業としての平時の「リストラ」をおこなうことは多くはありませんが、工場閉鎖、事業停止となれば話は別です。人件費、原材料費高騰によって採算が合わなくなると数百人単位で失業者が発生します。
こうした失業者の中には、すぐに別の会社で新しいキャリアを始められるものもいれば、既に旧式のビジネスモデル(特に製造業に多い)の中で簡単に別企業でのキャリア転換が難しい者も含まれます。
倒産、工場閉鎖とまではいかないまでも企業の多くは採用に後ろ向きです。ドイツ企業が採用に前向きかどうかを測るifo Employment Barometerによると、2022年以降ずっと100を下回っており(100を下回ると、採用よりも削減が多い)2026年に至っては95を断続的に下回るなど、コロナ期以降の低迷を見せ続けています。
こうした労働市場では、一度仕事を失ってしまうと再就職が困難になることから、労働者の多くは転職や退職に後ろ向きになります。
皮肉なことに、景気が悪くなればなるほど労働者の多くは転職に後ろ向きになるため、一部の必要とされるポジションに対しても転職を希望する候補者がいない状態になります。
特にエンジン車関連や陶器など、旧来式の製造業における失業者は労働市場に溢れている一方、グリーンエネルギーやIT等一部の職種・業種においてはむしろ慢性的な人材不足が続いている状況で、企業側はむしろ欠員を埋められない状況が続いているというわけです。
こうした高技能人材を欠いたままイノベーションをおこせないと、外国市場との競争に敗れ、事業がさらに悪化していく、という悪循環に陥ってしまっているわけです。このように、ドイツ経済は現在「職不足」と「人不足」が慢性的に続いている状況です。
このような内外に問題を抱えるドイツ経済ですが、こうした地政学的不安定な環境の中ドイツの中での「日本」の立ち位置に変化が見得つつあります。
ロシア、中国、アメリカと、大国間の政治ゲームに翻弄される中で「日本」という安牌の価値の見直しが始められています。在日ドイツ商工会議所の調査によると92%の在独日系企業がドイツで利益を計上しているという結果が出ており、ドイツ企業も安定的な日本との取引を望む声が高まっています。
一方日本としても少子高齢化、エネルギー価格の増大、高技能人材の不足、とドイツと似た構造の問題を抱えていることから、こうした問題に連携して向き合っていくことが求められています。特に昨今の円安を受け、ドイツを含めたヨーロッパでの就職を望む若者の数も見られます。
不確実性の増す世界経済の中で、改めて対外政策の方向転換が求められる日独両国。今後の展望に期待が持てると言えるでしょう。