日本人がドイツでの就職を志すとき、主だった手段としては次の3つが挙げられます。・ドイツ企業に就職する(難しい、中長期勝負)・日本の企業に就職し、その後駐在としてドイツに派遣される(難しい、長期勝負)・ドイツの日系企業に就職する(比較的易しい、短期勝負)
今回の記事では、この3つの手法を細かく分析し、それぞれのやり方に適した応募方法や、その後のキャリアプランなどを紹介していきます。
日本人のドイツ就職の3つの手法の比較
中にはドイツで起業する、ドイツの中国企業に就職する、日本のドイツ企業から本社へ転勤、といったやり方等もありますが、基本的にはこのテーブルの3つの方法が日本人のドイツ就職の9割を占めていると言えるでしょう。
ドイツ企業に就職 | 日系企業から駐在派遣 | 在独日系企業に現地採用 | |
就職活動をおこなう国 | ドイツ | 日本 | ドイツ |
労働契約書 | ドイツ | 日本→ドイツ | ドイツ |
難易度 | ★★★★★ | ★★★★ | ★★★ |
就職人数 | ごく少数 | 多い | 少数~中程度 |
主な就職方法 | ドイツの就職ポータル | 就職ポータル、就職エージェント等 | 在独の就職エージェント |
語学要件 | 英語、ドイツ語 | 英語、(ドイツ語) | 英語、(ドイツ語) |
就労ビザ | 自力で取得 | 企業側のサポート | 自力で取得 |
求められる主なスキル | 特殊技能
(金融、IT、エンジニア等) |
語学
マネジメント・貿易実務等 |
語学
貿易実務等 |
メリット | ドイツ企業の賃金水準・労働環境を享受できる | 海外駐在手当や住宅補助など金銭的サポートを得られる | 日独の文化が良いバランスで混合されている
ドイツの労働環境を享受できる |
デメリット | 入社難易度が高い
ドイツ文化的であり、人によっては困難を覚える |
海外駐在になるかどうかの判断とタイミングは企業に委ねられる
日本文化的である |
駐在員よりも本社の金銭サポートが少ないため、相対的にひけ目を感じやすい |
それぞれのやり方にメリット・デメリットがあります。
ドイツで社会人として活動している日本人の多くは「駐在員」としての派遣である一方、元々大勢の分母の中から篩にかけられたほんの一部の役職が選ばれている背景を鑑みると、実現はそう容易ではありません。
同様に、ドイツ企業への直接の入社もそう容易ではありません。言葉の壁、文化の壁に加えて、ドイツ企業にとってわざわざ就労ビザの問題を抱える可能性の高い日本人を雇うほどの、デメリットを補ってあまりあるメリットを提示しなくてはいけません。
上記二つのやり方と比較して易しいのが在独日系企業への就職で、年間に出回るポジションの数は膨大ではないものの、ある程度のビジネス英語のスキルがあれば就職しやすい穴場と言えます。
ドイツ企業への就職
「埼玉大学 変容する海外で働く日本人 : 現地採用者に着目して」の調査によるとドイツで就職した日本人のうち約7~8割が日系企業への就職で、ドイツ企業への就職はごくわずかであると示されています。言葉や文化の壁もさることながら、やはりドイツ企業からすると「ドイツで活躍できる人材か不明瞭」というのが大きなポイントであり、特にドイツでの自身の実力を証明するまでは険しい道のりです。
そのため、最初は在独日系企業に就職してからドイツ企業に転職、ドイツの大学・大学院に通いながらドイツ企業に就職、といった間にワンクッション置いてドイツでの自身の実力を高める手法が散見されます。
純粋なドイツ企業へ就職するということは、企業側も社員を完全にドイツ人と見なすことが多く、共通言語としてドイツ語の素養が様々な場面で求められます。文化的にも、我々の知る日本社会とは180度異なるドイツ社会に溶け込むこととなるため、人によってはストレスを感じることがあるでしょう。
就職確率を高めるコツ
「エンジニア」や「IT」、「デザイン」など、文化差のバリアが比較的低い業界であれば、日本人がそのままドイツの企業に就職する意味合いが大きいと言えるでしょう。
「営業」や「マーケティング」のような文系職種の場合、どうしてもドイツ企業のターゲットはドイツ市場や欧州市場に傾きがちなため、ドイツ語を母語とする応募者と比べ日本人は不利になります。ドイツ企業の中でも、日本との関係性が強い(日本に支店がある、日本との取引高が多い)企業に絞って就職活動をおこなえば、その分内定確率があがると言えます。
おススメの媒体:
- Monster
- Step Stone
- Indeed
ポイント:
- 「エンジニア」「IT」など理系職種は文化差の障壁が低く有利
- 文系職種の場合、日本との関係の深い企業への応募が有効
- ドイツでの学位は有効に働くため、すでに思い描くキャリアがあれば、一旦ドイツの大学を介しての就職も
- ドイツでの実績は大きなファクターとなるので、一度ドイツの日系企業などで就職してスキルを磨くことも有効
日本企業からの駐在派遣
日本企業からドイツに駐在派遣されるためには、新卒であれ既卒であれ、一度日本の会社に就職する必要があります。企業や部署によってはそこで5~10年程度国内業務を経験し、その後ようやく駐在派遣される、といった形になります。
どのタイミングでどの国に派遣されるかは人事部の裁量に委ねられるため、今回紹介する3つの手法のうちではドイツにこれるかどうかの確率が一番未知数な方法とも言えるでしょう。また、ドイツに派遣された後も、3~5年の人気を経て日本に帰国する(または別の国へ駐在)こととなるので、ドイツにその後も住み続けられる保証は有りません。
駐在確率を高めるコツ
東洋経済の海外勤務者ランキングによると、海外勤務の割合が高い業種には海運、自動車メーカーや自動車部品、大手電子メーカー、大手プラント、商社(総合商社・専門商社)などが挙げられるとされており、特に上位陣の海外赴任割合は20%と高い数字を保っています。
一方で、中には駐在派遣の敷居が高い企業も多く、TOEIC800点以上、マネジメント職の経験有、優秀な営業成績を残した者、といった条件が課されることもあります。
そのため、自身の軸として「どうしてもドイツに駐在したい」という想いがあるのであれば、ドイツと関係の高そうな自動車部品メーカーであったり、駐在勤務者割合の高い会社を選ぶ必要があります。
また、中には採用時にあらかじめ将来のドイツ赴任が確約された条件付きでの採用を認めてくれるケースもあるので(本人のドイツ語スキルが高い場合等)、あらかじめ就職時にそういった条件を擦り合わせておくとドイツへの駐在確率が高まります。
駐在案件は、ビズリーチのような就職ポータルに多く出回っていますが、DODAやリクナビのような老舗も最近では駐在求人を出すようになっており、自身の分野に見合った応募が可能です。
おススメの媒体:
ポイント:
- 専門商社、ドイツと関係の深い中小メーカーへの就職を狙う
- 就職面接時にあらかじめ将来的な駐在計画を確約してもらう
- ドイツ語が話せるなど、あらかじめ企業にとってドイツに派遣させるメリットのあるスキルをちらつかせる
在独日系企業に現地採用
上述の「日本企業への就職→ドイツへの駐在」とは異なり、日系企業のドイツ法人に就職する方法となります。受け皿はドイツ法人であるため、働き方はドイツの労働法に準拠することとなりますが、文化的には日本寄りである特徴が多々見受けられます。
ドイツ企業への就職と違い、ドイツ語を必ずしも必要としない企業が多いのが特徴です。在独日系企業の場合、社内の公用語が英語であるケースも多いため、英語+日本語の併用で仕事をまかなえる環境が多く、言語要件のハードルは低めです。
駐在員と違い、駐在手当や家賃補助を得られないというデメリットがありますが、代わりに労働契約はドイツ法人に紐づくため、本社の意向で転勤といったことが少なく、基本的には自分のタイミング・意思でドイツに来て就職し、将来的にドイツで年金を受け取ることとなります。
就職確率を高めるコツ
就職ポータル上に出回っていない求人が多いため、基本的にはドイツやヨーロッパの在独日系企業を得意とする就職エージェントを活用することとなります。就職エージェントの中には日系企業を得意とする企業、アジア国籍の採用を得意とする企業、と複数存在しており、いくつか並行してサービスを活用してみても面白いかも知れません。
その分野での実績も重要ですが、「ドイツにずっと滞在したい」「ドイツで仕事をしたい」といったモチベーション的な要素が大きく考慮されやすい就職形態ともいえます。そのため、就職にあたってはエージェントに自身のドイツへの想いをさらけ出してみるのも良いでしょう。
おススメの媒体(就職エージェント):
- Career Management GmbH(日本語可)
- Center People(日本語可)
- Robert Walters
- Approach People Recruitment
- Kelly Services