(5)ドイツ企業のデメリットと転職活動を思い立った理由

ドイツ企業での3年の就業を経て、在独の日系企業に転職活動をおこないました。賃金や仕事環境で高評価を得ているドイツ企業でのキャリアを蹴ってまで、日系企業に転職した理由について述べていきます。

ドイツ企業のデメリット

仕事環境や給料面でのメリットが喧伝されがちなドイツ企業ですが、必ずしも良い点ばかりではありません。以下に、私が仕事をして感じたマイナスポイントを列挙していきます。

結果主義的

私の担当していたのは北米やアジアなどEU外のマーケットで、規制の少ないEU内マーケットよりも負担が大きく数字目標到達の難しい市場でした。にもかかわらず、基本的に上司の評価は一律で「どれほどの案件をこなしたか」「担当している市場でどれくらいの数字が上がったか」などが対象となります。

特に決定的だったのが、2019年以降発生したコロナ禍でした。国外への出張ができなくなったにも関わらず、相変わらず上層部のスタンスは変わらず、国内部署と比べて数字が悪いのであれば、そもそも海外部署自体がいらないんじゃないの、という態度で詰められることが多かったです。

社内折衝が難しい

新製品の開発や出張、ビジネスパートナーの選定などドイツ企業の上層部とミーティングをおこなう機会が多いのですが、そのたびに数値根拠や論理根拠を交えてドイツ語でプレゼンをおこない、プロジェクトの可否を定めることになるため精神的な疲労に結び付きました。

特に、コロナ禍の発生期間中はドイツの経済、産業自体の先行きが怪しくなり、全体的に海外市場よりも国内の足元固めに企業の優先順位もよることとなり、全体的に私のいる部署は交渉事でも後回しにされることが多かったです。

社外対応が非常にドライ

ビジネスなのでしょうがないのですが、どうしても私はドイツ的な「あっさりビジネスパートナーを見捨てる」というスタンスに馴染むことができませんでした。10年以上も提携を結んでいた国外パートナーを、「より多くの利益を生むであろう、新しいパートナーが見つかった」という理由であっさり切り捨てるやり方が散見しました。

また、契約書準拠主義的な部分も度々疑問に思う点がありました。「契約書に書かれてないのでこのマージンは無効」といって現地のパートナーを切り捨てたこともあり、ビジネスの世界とはいえなんてドライなのだろうと驚愕しました。

上記のようにコロナ禍を期に発生した様々な困難が、最終的に私を転職の道に駆り立てました。

ドイツでの転職活動

日本人がドイツで転職する場合、現地のドイツ人やEU国籍保持者がおこなうのとおなじようになると失敗するという話をよく聞きます。特に就労ビザや自身の優位性など、あくまでドイツにおいて自分が特殊な立ち位置であることを理解する必要があります。

就労ビザ

私の場合、転職に有利に働いたのが「既に無期滞在限ビザ」を取得していた点です。60ヵ月以上の就労(ただし現地の大学・大学院卒業で要件短縮)で取得可能。

この無期限滞在ビザがあることで、転職時に一々外人局に行く必要なく、シームレスに転職が可能となります。理論的にはドイツ企業も日系企業も、ドイツに拠点を持つ企業であればどこでも応募可能という状況でした。

転職活動の開始

ドイツにおける転職活動の常套手段は「会社には転職活動を伏せて行動する」です。ドイツ企業での無期限の労働契約書を取得していたため、転職活動をそこまで焦る必要もありませんでしたし、幸か不幸かコロナ禍でホームオフィスが増えたため、転職活動に時間を割く余裕が割とたくさんありました。

ドイツ社会には「退職までの通知猶予期間」というものが存在し、会社側も「明日からクビね」という突然の解雇はできませんし、従業員側も「明日から来ません」ということはできません。法的には(就業期間にもよるが)1~3ヶ月程度の通知期間が必要となるため、転職活動のときもその期間を考慮にいれなくてはいけません。

例えば、転職希望先の企業から「いつから働ける?」と聞かれてもつねにこの「Kündigungsfrist」を計算にいれた日数を伝えなくてはトラブルの元となります。

転職活動の手段

ドイツにおける転職方法はざっくりと以下の3つです。

  1. 就職ポータルサイトを使用
  2. 企業サイトから直接応募
  3. 転職エージェントを使用

就職ポータル

就職ポータルを使用するやり方であれば、リーチできる企業の数は圧倒的に多いです。もっとも、1社1社にCVやカバーレターを送ることになり、手間が発生します。また、就職ポータルで募集していない企業も多く(特に地元の中小企業等は就職ポータルを活用しないことも少なくない)、取りこぼしが発生します。

企業サイトから直接応募

上記の就職ポータルや転職エージェントでの応募をおこなっていなくても、企業の採用ページでは応募をおこなっている、というケースは多く存在します。また、現在は募集していなくても将来的にポジションが空けば声かける、といったシステムの会社も存在しており、就職ポータルなどで上手くいかなかった場合試してみても良いかも知れません。

転職エージェント

転職エージェントを利用すると、リーチできる企業数は限られることとなりますが、代わりにエージェント側で応募先を選定してくれるため、CVやカバーレターを1社1社に対して作り込む手間が省かれます。また、「日本人人材を得意とする」「特定の産業」など、細分化された人材ニーズに特化した紹介を得意とします。

最終的に私の場合、「ドイツ語が話せると重宝される」「日本語が話せると重宝される」「仕事文化や価値観が似ている」という理由から転職エージェントのCareer Management社を通じて日系企業への転職活動をおこなうこととしました。

最終的に、私は上記の転職エージェントを通じて内定先を獲得しました。次の記事で具体的な流れを紹介します。




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