ドイツで就職した日本人のブログやSNSなどで良く語られている話題として「現地採用の日本人は給料が安い」というテーマがあります。
さて、実際問題としてドイツで現地採用された日本人の給料はいくらくらいなのでしょうか?本当に安いのでしょうか?もし安いのであれば、どういった原因なのでしょうか?
ドイツの大手人材紹介会社、Stepstone社およびCareer Management社の調査結果を参考に、本稿では「ドイツ現地採用日本人の給与水準」という語られてこなかったテーマについて切り込みます。
ドイツの大手人材紹介会社のCareer Management GMBHの公開しているデータによると、2025年における日本人現地採用の平均給与額は53,695€となっており、実際には現地のドイツ人と日本人の間にそこまでの乖離はありません(むしろ、日本人のほうが少し高い)。
カテゴリー | 平均値 | 中央値 |
---|---|---|
日本人(現地採用) | 53,695€ | 45,000€ |
ドイツ人 | 52,300€ | 45,800€ |
もっとも、キャリア別に見ていくとこの「現地採用日本人の給与」のカラクリが垣間見えてきます。現地採用日本人の年収に大きな影響を与えるのは実務経験年数で、実務経験が5年以下か以上か(年齢でいうと35歳辺りが境目)で大きく給与水準の違いが表れています。
実務経験年数 | 平均給与 |
---|---|
2年未満 | €45,000.00 |
2~5年 | €50,454.55 |
6~9年 | €54,375.00 |
10年以上 | €58,333.33 |
年齢 | 平均給与 |
---|---|
20~24歳 | €45,000.00 |
25~29歳 | €46,538.46 |
30~34歳 | €50,000.00 |
35~39歳 | €62,777.78 |
40~44歳 | €60,000.00 |
45歳以上 | €57,857.14 |
見ての通り、ドイツでのキャリア歴が長くなるにつれ給与水準が高く、逆に若手・あるいはドイツでのキャリア歴が短い人材の場合はドイツの平均年収値を大きく下回る結果となっています。
この表を頼りに、なぜ「ドイツでの現地採用日本人の給料は安い」というゴシップが囁かれているのか。この理由を解明してみましょう。
一つ目には、ドイツ就職時の初任給の低さです。ドイツにおける給与テーブルは実績に基づいて計算されることが多く、上記の通り実務経験が長ければ長いほど給与は高く評価されます。もっとも、その実務経験を評価するにあたりドイツ企業は「日本での実務年数を評価しない」とすることが多く、ドイツに来たての日本人や大卒・新卒者はインターンや仮採用を通じ、30,000~40,000EURといった相場からキャリアをスタートさせることがあります。
特に、ワーホリなど短期でドイツに滞在する場合はこうした新卒向けの給与テーブルが適用されるため、SNSなどで拡散される情報では「ドイツで日本人の給料は安い」という情報を生んでいる可能性があります。
二つ目に、日本人がドイツに移住する年齢の遅さです。Career Management社の調査によると、ドイツで新しくキャリアをスタートする日本人の平均年齢は約30歳であり、この時点で新卒給与からのスタートとなると、現地の同年代のドイツ人と比較して「自分の年収が少ない」と見られがちです。
特に、日系企業であれば過去の日本での実績を評価して年収テーブルを考えてくれることがありますが、ドイツ企業は日本での実績を評価しないケースが多いため、ドイツ人と同年齢間での給料を比較したとき低く見積もられるわけです。
三つ目には、現地採用と駐在員の給与テーブルの違いがそのまま「現地採用は給料が安い」と見なされる原因になっている可能性が挙げられます。駐在員は日本の本社で長年経験を積み、管理職としてドイツに派遣されることが多いため、給与の他に住宅手当や交通費手当、海外駐在手当など、様々な福利厚生の点で優遇されるケースが多いと言えます。
一方、現地採用の場合自分の意思でドイツで就職しているため、こうした駐在員と比較すると給与水準が安く見えます。こうした一見したところの給与格差が、現地就職者の間で「給料が安い」という言説を生んでいる可能性があります。
実際のところ、ドイツで長年仕事を続けている日本人の間では給与水準は現地のドイツ人と同等レベルに落ち着く傾向にあります。就職先として自身のプレゼンスを発揮できる会社を選択すれば、日本人だからと言ってドイツで給与が不当に安く見積もられることはあまり無いと言えるでしょう。