調査結果がドイツの老舗就職エージェントの調査では、ドイツで就職した日本人の半数以上に当たる54.3%が営業、または営業アシスタントといった営業系の職種についているそうですが、次いで人気が高い職業は? 当記事ではドイツで就職した日本人に人気の求人ランキングと就職成功のコツをお伝えします。
ドイツの老舗就職エージェント、Career Management社の調査によると、ドイツで就職した日本人の半数以上に当たる54.3%が営業、または営業アシスタントといった営業系の職種についており、人気の高さが伺えます(参照: 日本人のドイツ就職市場レポート(2020))。
※本記事の情報は2024年1月時点のもので、変更の可能性があります。実際の情報は各企業のWEBサイトを照会してください
次いで人気の高いのは、給料が高くドイツであっても日本での知識が活かしやすい「エンジニア(14.3%)」で、以下同率でマーケティングや総務・経理、物流などが続く形となります。
職種 | 専門知識 | 空きポジション | 年収(エントリーレベル) | |
1位 | 営業アシスタント | ☆☆ | ☆☆☆☆☆ | 31.600 €~46.800 € |
2位 | 営業 | ☆☆ | ☆☆☆☆ | 33.300 €~49.500 € |
3位 | エンジニア | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆☆ | 52.300 €~71.600 € |
4位 | マーケティング | ☆☆☆☆ | ☆☆☆ | 30.800 €~40.800 € |
5位 | 物流・ロジスティック | ☆☆☆☆ | ☆☆☆ | 35.100 €~48.600 € |
6位 | 総務・経理・人事 | ☆☆☆ | ☆☆☆ | 32.300 €~46.500 € |
7位 | IT・WEB | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆☆ | 37.300 €~54.300 € |
営業アシスタント・セールスアシスタント
企業によって様々な呼び名がつけられていますが、基本的には営業社員と相対するエリア職のことで、一般的には女性社員が就職することで知られています(※男性の営業アシスタントも存在します)。
営業アシスタント職への就職に当たって何か特殊なスキルや技能が必要になることはありませんが、国内外の顧客を電話・メールで対応することとなるため、高度なドイツ語(または英語)の読み書き能力が必要になってきます。企業によりますが、ドイツ系企業であればC1 ~C2 レベル、在独日系企業であれば最低でもB2~C1レベルの語学が求められます。
ドイツの産業を支える「製造業」の営業アシスタントとして働く場合、出荷や在庫管理の対応をおこなうことがあるため、貿易や物流の知識が求められます。もっとも、人によっては就業を通じてこうした知識を学んでいくことも少なくなく、求人段階で必ずしも求められるとは限りません。
給与レベルは多職種と比べると多少見劣りしますが、受け皿が多く比較的安定したポジションであるため、日本人女性を中心に人気を博す職種となっています。
就職成功のコツ
上述の通り、純粋なドイツ企業における対ドイツ顧客では日本人である利点を活かしづらいため、日本との関係のある企業への応募が就職しやすいといえます。例えば、就職ポータルなどの検索ワードに「Japanese」「Japanisch」などの日本語要素を盛り込むことで、ドイツ企業の中で日本市場の対応を必要とする企業や、在独企業の中で本社との対応を求めるような案件が見つかりやすい事でしょう。
(参照:「ドイツにおける日本人セールスアシスタント職の特徴・給与」)
求人の例:
求人名 | 語学要件 | 業務内容 | 初年収 |
独中小メーカー、営業アシスタント | ドイツ語、日本語 | 日本向け顧客管理
カスタマーサポート 貿易実務 |
35.000 EUR |
在独日系メーカー、営業アシスタント | 英語、日本語 | 欧州顧客対応
本社との折衝 貿易実務 |
35.000 EUR |
営業
日本人女性にとって一番人気の高い職種が営業アシスタントだとしたら、日本人男性にとって一番人気の高い職種は営業であると言えるでしょう。営業アシスタント同様、必ずしも特定分野の専攻やスキルが求められるわけではありませんが、ドイツにおける営業ポジションは分析、マーケティング、貿易、財務などを幅広く扱う業務になるため、商学知識(BWL学部)があると重宝されがちです。
顧客との折衝に応じてドイツ語・英語が用いられることから、やはり高い言語能力を必要とする職種です。また、必要に応じて他都市や海外出張、展示会への訪問など様々な地域を飛び回りネットワークを広げるコミュニケーション能力とバイタリティが重要です。
就職成功のコツ
営業アシスタント同様に、日本人であれば日本市場や日本との関係の深い企業を探すことで就職成功の確率が高まります(「Japanese」「Japanisch」「Vertrieb」などの用語での検索)。
加えて、日本人採用・外国人採用を得意とする、ドイツの就職エージェントを活用することで、ドイツの就職マーケットの知見が無くとも日本人人材を求めている会社にリーチしやすいと言えるでしょう。
(参照:「英語話者におススメの人材紹介会社ベスト10」)
求人の例:
求人名 | 語学要件 | 業務内容 | 初年収 |
独物流会社、営業 | ドイツ語、英語 | 新規顧客開拓
既存顧客へのコンサル |
55.000 EUR |
独メーカー、日本デスク | ドイツ語、日本語、英語 | 日本市場への営業
貿易実務 |
40.000 EUR |
在独日系メーカー、欧州営業 | 英語、日本語 | 欧州顧客対応
貿易管理 独社員のマネジメント |
42.000 EUR |
在独大手日系メーカー、DACH地域営業 | ドイツ語、英語、日本語 | 市場調査
新規開拓 |
45.000 EUR |
エンジニア
営業系に次いで人気の高い職種がエンジニアという結果になりました。国ごとの文化や言語差がパフォーマンスに影響を与える文系の職種と異なり、工学や化学など、エンジニア系の知識やスキルは国をまたいでも比較的活用でき易いと考えられています。
また、代替のきかない専門職であることから転職後の給与水準がドイツ国内基準でみても高い傾向にあります。特にドイツ経済の根幹をなす自動車産業、電子産業、プラント産業などのエンジニア需要は非常に強く、少数の優秀なエンジニアを多くの企業が奪い合う、売り手市場と化しています。
就職成功のコツ
新卒であれば、語学力に加え大学・大学院での研究や論文、実務経験が重要な評価項目に数えられます。社会人の転職であれば、前職での(同業界であればなお良し)経験や実績が大きな影響を与えるため、就職ポータルなどで求人を探すときは特定の業界に絞り込みをおこなうと良いでしょう。
ドイツ社会においては、3割は前職の繋がりや紹介など、「人づて」におこなわれると数えられており、既に自身の持っている人脈を探ってみるのも有効手段の一つと言えます。
マーケティング
ドイツの職種の中で相対的に給与水準が低いと見なされている部署の一つですが、高度な専門知識の求められる業界(製薬や自動車、金融)によっては60.000~80.000EURという高い給与水準を享受できることで知られています。
マーケティング職につく人材は経営・商学系の出身であることが多いですが、それ以外にもデザイン、社会学、文化学分野での専攻出身者が就職することもあり、間口は多種多様と言えるでしょう。また、企業によっては特定の国(日本、北米、インド、等々)をターゲットとしたマーケティングに力を入れており、求められる言語や法知識が異なります。
最近のトレンドとして、著作権や顧客情報収集、AIを用いたコンテンツの可否などがマーケティング業界では耳目を集めることが多く、WEB知識やデザイン知識と関連し、こうした法規制・新技術の知識を持っていると大きな強みになると言えるでしょう。
就職成功のコツ
単に「日本でマーケティングを担当していました」だけでは弱いことがあるので、やはり言語・文化の根本的に異なるドイツ市場で成功するための根拠を提示する必要があります。その意味で、ツール運用や特定のスキル(統計、分析、機械学習など)がある場合、企業によっては大きなメリットとなります。
また、中国や東南アジアといったドイツから見て遠い国のマーケティングはドイツ人人材では手の届かないところが多いため、新興国への進出を狙っている中小企業などに目を向けるて応募すると、就職成功確率が上がる傾向にあります。同様に、在独日系企業におけるドイツマーケットでのマーケティング職、なども日本人である強みが活かしやすいと言えるでしょう。
求人の例:
求人名 | 語学要件 | 業務内容 | 初年収 |
独メーカー、アジアデスク | ドイツ語、英語、アジア言語(中国、日本語等) | アジア向けマーケティング
各国のエージェントとの交渉 |
38.000 EUR |
在独日系メーカー、欧州マーケティング | 英語、ドイツ語 | 日系ブランドの欧州でのマーケティング | 42.000 EUR |
物流・ロジスティック
物流・ロジスティック系の職種は多岐に分類できます。例えば大手企業や海運業の物流インフラに携わるのであればサプライチェーンマネジメント、メーカーであれば海外への出荷や在庫を管理する物流部、その他出荷や管理に携わる効率化の計算など、多種多様です。
いずれの場合であっても、ドイツやEU域内の商法に関する知見が重要で、大学・大学院で物流・ロジスティック関連の知識を身に着けていると有利と言えるでしょう。
就職成功のコツ
日本人としての強みを活かすのであれば、ドイツに在庫や製造拠点を抱える日系メーカーや日系物流会社、またはアジア圏域との貿易に力を入れている海運会社などが採用されやすいと言えます。
求人の例:
求人名 | 語学要件 | 業務内容 | 初年収 |
ドイツ大手メーカー、物流マネージャー | ドイツ語、英語 | 物流工程(生産・輸送・在庫等)の最適化
ERP、SAP管理 |
52.000 EUR |
日系物流会社、地区マネージャー | 英語、日本語 | フォワーダー業務 | 40.000 EUR |
総務・経理・人事
経理や人事といった職種の場合、ドイツ企業であれば実績、または同等の学位が求められます。日本のように総合職採用で、適正に応じて各部署に配置、というわけではなく予めそれらの知識を身に着けた応募者を採用する形なので、そもそもそうした分野への知見がなければ就職は難しいかも知れません。
一方で在独の日系企業であれば、本社との連携が必要になることから、日本での経理・人事の経験は大きなアドバンテージとなります。
就職成功のコツ
学位を必要とするドイツ企業への就職は、ドイツの大学・大学院を卒業していないと就職は難しいかも知れません。在独日系企業であれば日本での経験が活かせますが、求人が出回っていないことが多いため、就職エージェントへのコンタクトをお勧めします。
求人の例:
求人名 | 語学要件 | 業務内容 | 初年収 |
日系中小メーカー、経理 | ドイツ語、日本語 | ドイツ法人における経理業務 | 42.000 EUR |
ドイツ大手メーカー、多国籍人事部 | ドイツ語、英語 | 社内の人事マネジメント
採用・育成などの最適化 |
44.000 EUR |
IT・WEB
エンジニア同様、日本人であることのデメリットが隠しやすい職種と言えます。社内・社外を問わずコミュニケーションを円滑におこなう意味での英語・ドイツ語の習熟は必要になりますが、実務レベルでは日本での職歴が活用しやすく、かつ売り手市場であるため3~5年以上の実務経験のあるプログラマーであれば比較的就職先を探しやすい環境にあります。
特に機械学習、ビッグデータ、AI構築などの経験は日本同様、ドイツでも重宝されやすい技術と言えます。特にデータを扱う企業も多く、ドイツで需要のあるプログラミング言語の一位は「Python」という結果が出ています(次いで「Java」、「C#」)。
ドイツでの高給ランキングを紐解いても、やはり「Javascript」「Java」「Python」「C#」あたりの人気言語が上位を占めています。
就職成功のコツ
国に関係なく、自身の実績が活かしやすい分野と言えるでしょう。上述の通り、3~5年以上の職務経験、作品のレファレンス、及びトレンドの中で自分が得意とする内容、などがあれば、ターゲットを絞って応募が可能です。
もっとも、単にプログラミングができるというだけではなく、実際にそれを用いてどのような実績があるのか、どのようなことができるのか、というポイントを端的に説明できると採用確率向上に直結するでしょう。