ドイツに移住した日本人を待ち受ける難関、「職探し」。日本人という特殊なバックグラウンドを持つ場合、ドイツで一般的な就職ポータルなどよりも、人材紹介会社を通じたやり方のほうが就職・転職が上手くいきやすいこともあります。
ニッチながらに日本人にとっての重要度が高い、ドイツの人材紹介会社事情について紹介していきます。
ドイツにおける人材紹介会社の立ち位置
日本とドイツの転職者の用いる転職方法を比較すると、構造的に似たようなパターンに近づいてきていることが分かります。日独ともに、候補者の最も人気が高い転職方法は「就職・転職ポータル」の活用で、次いで公共のハローワーク、企業ページを用いた直接のエントリー、友人の紹介や縁故採用、そして民間の人材紹介会社を通じた転職、等がひしめき合っている形です。
就職に用いた媒体(複数回答可) | 日本 | ドイツ |
就職ポータル | 39.4% | 66.4% |
ハローワーク(公的な人材紹介) | 34.3% | 24.5% |
企業ページ | 15.1% | 37.9% |
縁故 | 26.8% | 24.7% |
民間の人材紹介会社 | 14.8% | 18.5% |
ドイツにおいて、人材紹介機関を通じての就職・転職は、就職ポータルに出回りづらいニッチな職業や秘匿性の高い案件であることが多いと言えます。全体的な割合から見ると少なく見えますが、後述するように「ドイツ在住の日本人」というニッチな人材に対して人材紹介会社の持つプレゼンスは極めて高いと言えるでしょう。
人材紹介会社とはなにか?
ドイツの労働市場における人材紹介機構の種類は2パターンあり、国によって運営される公的な人材紹介機構であるBundesagentur für Arbeitと、民間の人材紹介会社であるprivate Arbeitsvermittlung (PAV)です。private Arbeitsvermittlung (PAV)を我々日本人の観点からさらに大別すると、日本人の人材紹介に特化した日系と、それ以外の人材紹介会社に分けることができます。
前者の機関(Bundesagentur für Arbeit)は、ドイツの労働省によって運営されている公的な人材紹介機関で、ドイツにおける失業率の低下を目的に運営されています。働ける人間に対し空いている職をマッチングしましょう、という大義名分のもとで職業紹介をおこなうため、どちらかというと当人のおこないたい職種よりも、仕事が紹介できるかどうかに主要な軸が定められているのが特徴です。場合によっては、応募者に全く興味のないポジションが与えられることも見られます。
対して後者(private Arbeitsvermittlung (PAV))は民間企業のため、「人材紹介」は営利目的でおこわれます。どのようなビジネスモデルによって収益を得ているかは企業によりますが、一般的には、応募者を人材を欲している企業側に紹介し、内定が決まればその対価として企業側から報酬を得る、というパターンです。
民間の人材紹介会社の目的は、企業に応募者を斡旋し、内定を得てもらい、企業側から報酬を得ることです。すなわち、人材紹介会社にとって、応募者が内定してくれれば好ましい事態となるわけで、早く転職先を確保したい応募者との利害が一致する形となっています。そのため人材紹介会社は、応募者の内定確率を少しでも上げるため、サポートを全力でおこなうような市場原理が働いています。
民間(日系)の人材紹介会社
さて、在独日本人に関係の強い「日系の民間人材紹介会社」について深掘りしてみましょう。
日本人にとって、ドイツにおける転職事情は特殊なのと同様、ドイツの企業にとっても日本人という存在は異質です。
そもそもドイツ人が当たり前のようにもっている「就労許可」や「ドイツ語」といったスキルや条件を、持ち合わせていないことが少なくありません。上述の通り、ドイツで応募者にとって人気の応募方法である就職ポータル、あるいは民間の人材紹介会社などは、一般的に「普通のドイツ人」をターゲットとして作られたもので、就労ビザを持たない、ドイツ語を話せない、などの特殊条件を余り考慮したものではなく、日本人が応募をかけても返事がもらえないケースがほとんどです。
日本人 | ドイツ人 | |
ビザなどの就労縛り | ✖ | ◎ |
ドイツ語 | ✖ | ◎ |
特殊なスキル | 人による | 人による |
日本語 | ◎ | ✖ |
(一般的な条件で比較)
日本人がドイツで活かせる武器としては、エンジニア、建築、医療、ITといった理系知識か、サッカー、音楽、芸術などの専門スキルで、こういった武器を保持している場合はドイツ人相手の転職市場でも戦えますが、そうしたスキルの無い場合、日本人としての強みは「日本語」や「日本の仕事文化を知っている」といった日本関連のスキルメインになります。
こうした「日本関連のスキル」は、一般的なドイツ企業では求められません。活かされるとしたら、ごく一部のドイツ企業か、ドイツに展開している日系企業の現地採用であり、こうしたポジションへの斡旋をおこなっているのが日系の人材紹介会社です。
さらにこれら日系の民間人材紹介会社を細分化すると「ドイツに本社を持つ現地密着型」と「日本に本社を持つワールドワイド型」があり、それぞれに特徴があります。以下に紹介する企業名は、それぞれの形態の一例です。
ドイツに本社
→ドイツでの転職に特化した日系人材紹介会社
日本に本社
- リクナビNEXT
- エン転職
- JACリクルートメント
- ビズリーチ
- DODA
→ドイツだけでなく、広く浅く全世界の案件を紹介している日系人材紹介会社
日系人材紹介会社を用いるメリット
- 日本人がドイツで就職する上での適切なアドバイスを受けることができる
- 特に、就労ビザや履歴書などドイツで就職するにあたって必要不可欠な相談ができるのは大きな強み
- 応募者に適した会社のみ紹介してくれるので、無駄うちが少ない
日系人材紹介会社を用いるデメリット
- 一つの人材紹介会社から多くの会社に一気にエントリーすることはできない
- 人材紹介会社の持っている案件によって紹介されるポジションが異なる
- 日系以外の企業群にはリーチしづらい
まとめ
公的人材紹介 | ドイツの人材紹介会社 | 日系人材紹介(独本社) | 日系人材紹介(日本本社) | |
日本人の強みが活かせる | ✖ | ✖ | ◎ | ◎ |
全体の求人の多さ | ◎ | ◎ | △ | 〇 |
日本人向け求人の多さ | ✖ | ✖ | 〇 | 〇 |
ドイツ就職向けサポート体制 | △ | △ | ◎ | △ |