ドイツの就労ビザを持っていると他のEUの国で働けるか?

ドイツへの移住や就職を志す人は、まず現地で「就労ビザ」を取得する必要があります。さて、このドイツで取得した就労ビザはドイツでの就労を許可するものですが、これを持っていると他のEUの国々で働くことは可能なのでしょうか?実際にこうした疑問が起こるケース(転職や国境を越えてのアルバイトなど)も多々生じると思いますが、中々オンラインでは情報が開示されているところが少なく、大使館などに問い合わせるしかありません。
今回の記事では「ドイツの就労ビザで他のEUの国で働けるのか」の疑問に触れてみようかと思います。

EUとは何か?

そもそもEUとはなんでしょうか?

EU(欧州連合)は「多様性の中の統合」という理念に支えられて発足したヨーロッパにおける地域共同体のことで、2024年現在では27ヵ国が加盟、4億5000万人の住人と20兆ドルの経済規模を誇ります。

EUの特徴はモノとヒトの移動の自由に集約されており、原則的にEU加盟国は関税同盟に加入しており非関税で加盟国の物品を貿易できるほか、EU市民は国境を越えての移住(労働や就学)が比較的楽におこなえます。

注意しなくてはいけない点として、EU加盟国だからといって国境を自由に移動できるわけでは無かったり、ユーロ通貨がつかるわけでは無かったりと、一部の例外的国や地域が含まれている点です。

解説 EU非加盟だが主な参加国 EU加盟国だが協定非加盟国
シェンゲン協定国 国境コントロール無しに越境可能 アイスランド、ノルウェー、スイス アイルランド、キプロス
ユーロ通貨圏 ユーロを通貨として使える コソボ、モンテネグロ(ただし通貨協定無し) ポーランド、ハンガリー、デンマーク等

例えば、EU加盟国の中には国境コントロール無しに越境可能となる「シェンゲン協定」に非加盟のアイルランドやキプロスが含まれており、逆にEU非加盟ながらシェンゲン協定加入国にはアイスランドやノルウェーが含まれています。

また、ユーロ通貨も政治的、経済的な理由からポーランド、ハンガリー、チェコなど主に東欧の国々ではいまだに使用されておらず、国境を超える際にはユーロからの両替が必要となります。

就労ビザとは何か?

外国人が特定の国で合法的に働くために必要な許可証で、結婚等の特別な例外を除き、原則的に日本人がEUの特定の国で就労(会社への就職、フリーランス、個人事業主、を問わず)する場合必要となります。

仮にドイツに縁もゆかりもない状態で日本からドイツへ移住し、ドイツでの就職を考える場合、就労ビザを取得することが大前提になります。その場合、基本的にはスポンサーとなる企業を探し、就労ビザのための労働契約書などを締結してもらう必要があり、またその後も当分の間はこのスポンサー企業の就労ビザが紐づく形となり、転職する際にはその都度移民局に申請する必要があります。

ドイツの就労ビザを持っていると他のEUの国で働けるか?

さて、いよいよ本題に入ります。我々日本人は、ドイツの就労ビザを持っていたらEUの他の国で働くことができるのでしょうか?

EU市民は「EU市民の自由な移動と居住の権利」に基づいてEU域内のどこの国でも自由に就労することが可能です。また、EU域内であれば年金の積立期間も積算され(※もっとも、受け取れる額は国によって違う)、条件さえそろえば失業手当をEUの別の国にいながら受け取ることも可能です。

ただし、これはあくまで「EU市民」、つまりEUの国の国籍(パスポート)を持った人間に限る措置で、第三国からヨーロッパに移住し、就労ビザなどを持って現地に滞在している日本人には適用されません。

(注: Erlaubnis zum Daueraufenthalt-EU(EU永住権)を持っている場合、他国での労働要件は緩和されますが、一般的に労働をおこなう国での審査や申請が要されます)

そのため、ドイツの就労ビザを持っているからと言ってEUの他の国で就労ビザを申請しなくても良いわけではなく、別の国で仕事をしたければまた新たに就労ビザや学業ビザを取得しなおす必要があるわけです。

また、ドイツの滞在ビザを持っているからと言ってEUのその他の国に無制限で滞在して良いわけでもなく、原則的には90以内と定められています(ただし、国境でのスタンプを押されることがないので、厳密な意味でこの法律は守られていない可能性も・・)

EU国籍の取得、結婚、ブルーカードの取得、など様々な環境下ではこの条件は異なりますが、基本的には「その国ごとの就労ビザ」が適用される点に注意しましょう。




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