転職文化の色濃いドイツでは、求人ポータルを介した転職活動が活発です。国籍を問わないものであればIndeedやXingなどが、在独日本人向けでは在独日本商工会、mixbやe-recruitingなどがドイツで有名な求人ポータルと呼べるのではないでしょうか。
もっとも、ドイツで就職したい日本人にとって、現地で有名な企業への応募や就職経路が必ずしも自身に適した方法とは限りません。ドイツ語ネイティブでない日本人は、日本人であることの強みを生かした求人を探し当てる必要が多くの場合求められるのです。
今回の記事では、ドイツで日本人が採用されやすい求人を探したい人のために、ドイツに居住する日本人の職種と就職先の内訳、求められる企業の形態などについて詳しく解説をおこないます。
ドイツ在留の日本人事情
外務省調べによると、令和3年の時点でドイツに居住する日本人の数は42,135人と登録されており、うち6割が駐在員や駐在員の家族、留学生と言った長期滞在者、4割が配偶者ビザや無期限就労ビザを取得した永住滞在者という割合になっています(出典:外務省「海外在留邦人数調査統計」)。
特筆すべきは、このドイツに居住する日本人の多くは、デュッセルドルフやミュンヘン、フランクフルトといった大都市に「日本人コミュニティ」を形成して便利な生活を営んでいるところです。調査年度によって異なりますが、上記ドイツ三大都市における日本人の数で、在独日本人の3分の1超をカバーしている状況です。
在留日本人 | 日系企業(現地法人数) | |
デュッセルドルフ | 約7,000人 | 345社 |
ミュンヘン | 約5,000人 | 245社 |
フランクフルト | 約3,000人 | 165社 |
その他地域 | 約27,000人 | 73社 |
こうした、在独日本人の就職状況に目を向けてみましょう。デュッセルドルフにおける日本人現地採用者の中で、在独日系企業で就労する人間の割合は72.3%と群を抜いて多く、ドイツ企業で就労する日本人の数は16.9%、起業などを含むその他が10.7%というデータがあり、在独日本人の中で日系企業への就職が最も人気であることが見て取れます。
- 日系企業 47 3%
- ドイツ企業 11 9%
- その他 7 7%
(出典: 埼玉大学論文「変容する海外で働く日本人―現地採用者に着目して―」)
日本企業、ドイツ企業ともに日本人採用者の受け皿としては日本人向けの飲食業(寿司レストラン、和食レストラン等)、サービス業(ホテル、観光業等)が大半を占める他、日系企業の場合では「ヨーロッパ全体の統括マネージャー」のような責務の高い求人であったり、ドイツ企業の場合「オーケストラ奏者」「プロスポーツプレーヤー」といった高度な技能を必要とする求人もおこなわれている点が見受けられます。
以下、ドイツ企業、在独日系企業別に、それぞれ日本人の就職しやすい求人案件を紹介していきます。
ドイツ企業における日本人向け求人の種類
まず、ドイツ企業の出している求人の中で日本人の内定しやすい職種に目を向けてみましょう。
残念ながら、ドイツ企業が日本人を採用するメリットは多いとは言えません。そもそもドイツ語がネイティブでないことに加え、就労ビザの問題や、文化の壁など、わざわざ日本人を雇う必要がない、と判断されるケースが必然的に多くなってしまいます。
ドイツ企業が採用の手間やリスクを鑑みて、あえて日本人を採用するメリットが生じるのは、以下の3つの求人職種いずれかである傾向を持ちます。
ドイツ企業で求められる日本人の特徴
- 代替の難しい高度な特殊・専門スキルを持つ
- 企業が日本人向けのサービスを展開しており、日本人との折衝が可能な人材
- ドイツ社会で育ち、ドイツ人と同等の教育水準、文化的背景を持つ
代替の難しい高度な特殊・専門スキルとは、俗に「専門職」と呼ばれるもので、特にドイツで活躍する音楽家、画家、サッカープレイヤーなどがこれに該当します。バーバルコミュニケーションよりもスキルそれ自体が重宝されるため、必ずしもドイツ語ネイティブである必要が少ないという特徴を持ちます。このほか、建築・デザイン関連、エンジニア、技師、IT関連の特殊技能もこの専門職に分類されることが少なくありません。
企業の中で、日本人でないとできない、あるいは日本語が求められる仕事である場合も、ドイツ企業が日本人を雇うメリットが生じます。デュッセルドルフで多数展開されている日本人向け飲食業、サービス業などに加え、日本市場をターゲットとする製造業やIT関連の業種もこの範疇に納まるでしょう。この場合、採用された日本人は「日本市場向け」人員として期待されることとなります。
加えて、ドイツで高等教育、大学教育を終えた日本人人材もドイツ人人事にとっては採用が比較的しやすいと言ってよいでしょう。就職活動のための就労ビザが支給されるほか、コミュニケーションや知識水準の点でも人事から見てどのようなレベルに達しているのかが分かりやすい傾向にあります。
ドイツ企業に就職する日本人の特性
専門職人材 | ドイツで教育課程を終えた日本人 | 日本市場向け人材 | |
ドイツ語能力 | △ | ◎ | △ |
高度な専門スキル | ◎ | 〇 | △ |
具体例 | サッカー選手、音楽家、画家、エンジニア等 | 一般ドイツ企業への就職 | 日本人向け接客業等への就職 |
全体に占める日本人の割合 | 極めて少ない | 極めて少ない | 多い |
◎・・重要
〇・・やや重要
△・・重要度は低い
日系企業における求人の種類
ドイツ企業と比較すると、日本人にとって自身の能力を活かしやすい土壌が整っているのが在独日系企業と言えます。専門職人材、日本人向けサービス業人材が重宝されるのはドイツ企業におけるアサインと似ていますが、ドイツにおける日系企業の特徴は、求人として強く「欧州の顧客や市場を相手に戦える日本人人材」を求めているところにあります。
在独日系企業で求められる日本人の特徴
- 代替の難しい高度な特殊・専門スキルを持つ
- 日本のビジネスを理解し、日本本社などと対等に交渉できる人材
- 欧州の顧客や市場を相手に戦える人材
在独日系企業において働く日本人のうち、サービス業(日本人との折衝が必要な飲食、宿泊業等)、専門人材(教員、芸術家等)の比重が高いのはドイツ企業と同じですが、その他に日本人の「事務職(セールス・アシスタント)」や「販売職」といったポジションのチャンスが現地採用者に与えられていることも見て取れます。
企業形態によって異なりますが、ドイツに進出している日系企業の存在意義は、やはり「ドイツの市場開拓」「欧州の統括拠点」といった立ち位置であることが多く、日本の本社とのやり取りが多くなるこうした現地法人の運営においては、日本のビジネスを網羅しかつ英語に堪能な日本人の現地採用が絶対的に不可欠となるわけです。