ドイツの大学や大学院に留学している人の関心ごとの一つとして、「卒業したらいくらくらいの給料を貰えるのか」というテーマがあることでしょう。実際にドイツの学位を得た後にドイツで就職し貰える給与は、会社の規模、過去のインターンや職歴、勤務地など様々な要因に影響を受けることとなります。
給与水準に大きな影響を与えるファクターの一つに、「卒業した学部」といったものが挙げられます。今回の記事では、ドイツのどの学部を卒業したらどれくらいの給与を貰えるのかについて解説をおこないます。
ドイツ学部別初任給事情
大手企業が4月の入社時期に合わせ新卒一括採用をおこなう日本とは異なり、ドイツの場合個々の卒業生によって就活スケジュールが異なるため、画一化された求人条件というものが少ない形です。
日本では度々メディアの的となる「初任給」という用語に関しても、日本であれば「大卒25万円」といった形で新入社員向けの給与テーブルが用意されているわけですが、ドイツの場合応募者の実力、経歴、評価によって幅を持たせてある形です。同じ大学、同じ専攻で同じ会社に就職したとしても、個人の実力や交渉次第で初任給が違うというのがあり得る世界と言えるでしょう。
そうした中でも、ある程度「学部ごと」の給与相場というのはドイツで決まっており、この学部を卒業していればいくらくらい貰える、という情報はStepstone等様々な媒体を元に調査することが可能です。
初任給上位学部(50.000EUR~)
ドイツの大学院の専攻の中で、初任給平均が50.000EURを上回る学部はどれも理系学部という結果になっています。
数ある専攻の中で最も入学難易度・卒業難易度が高く、かつ卒業後の給料が高いのは「医学部」です。大卒初任給で既に60.000EUR近い(1000万円相当)代わりに、限りなく満点近い成績で高校を卒業しないと門戸の開かれないという狭き門として有名です。
エンジニアリングは元々ドイツの中でも由緒ある学部で、大手メーカーの開発部門などへの就職がメインストリームです。情報学部、そしてビジネスと数学やITを組み合わせ、保険、銀行、証券などで活用される金融工学、経営情報学など比較的新しい学部も人気を博しつつあります。
- 医学部 Medizin (und Zahnmedizin) 59.486
- 金融工学Wirtschaftsingenieurwesen 52.832
- 情報学部 IT (informatik) 50.978
- エンジニアリング Ingenieurwissenschaften 50.774
- 経営情報学 Wirtschaftsinformatik 50.905
初任給中位学部(40.000EUR ~ 50.000EUR)
ドイツの学生数のマジョリティを誇るいわゆる「中堅どころ」とされる学部には、経営学、法学、自然科学といったドイツの伝統的な学部が含まれています。法学部を除けば基本的にドイツの高給取りの学部は理系学部という傾向が強く、理系人材の育成に力を入れていることが分かります。
経営経済学、法学などはビジネス関連の専攻でも実践的な学部であるとされており、大手メーカーやコンサルなどへの就職が多いとされます。
- 経営経済学 Wirtschaftswissenschaften 46.931
- 法学Rechtswissenschaften 46.931
- 心理学者 Psychologie 46.357
- 自然科学 Naturwissenschaften (Biologie, Chemie, Pharmazie) 43.745
- 教育 Erziehungswissenschaften, Sozialpädagogik 41.934
- デザイン学 Design 40.470
- 政治・社会学 Politik- und Sozialwissenschaften 40.652
初任給下位学部(~40.000EUR )
決して学問的に劣るという意味ではなく、相対的に他学部に比べて初任給が少なくなりがちな学部群が以下の通りです。建築は収入の高い層と低い層の差が大きい職種で、特に新卒で経験の少ないうちは給与が低く見積もられることが原因です。
歴史、哲学、文学といった文系学部は、ビジネスに直結しづらい専門であることが響いていますが、翻訳、ジャーナリスト、批評家、研究家、といった独自のキャリアを形成できれば非常にユニークで高給の職種となります。
- 地学 Geowissenschaften 39.816
- 建築学部 Architektur 39.580
- 歴史 Geschichts- und Kulturwissenschaften 36.946
- 哲学・文学 Philosophie und Geisteswissenschaften 36.581
何歳までが「初任給」?
さて、初任給はあくまで初任給であり、この給料が会社生活においてずっと続くわけではありません。会社やチームの業績、個人のパフォーマンスなどに応じて基本的にはその後昇給していく形となります。
ドイツの昇給テーブルは会社ごと、個人ごとであることが多く、年功序列の給与テーブルの残るJTC(旧態依然とした日系企業を揶揄したJapanese Traditional Companyの略称)などと比較すると、統一的な昇給モデルの計算が難しい傾向にあります。
もっとも、ドイツにおける個人の給与モデルは基本的に「同一職種における勤続年数」と一般的には比例関係にあり、キャリアを詰むにつれて上積みされていくような形です。もっともプレイヤーとしての給料には限界があり、年収100.000EUR、200.000EURといった給与を勝ち取るためには、管理職につき、個人としてのパフォーマンスではなくチームや部門としての成果を残していく必要があります。
参考文献:
- Absolventa Durchschnittsgehalt in Deutschland
- StepStone Gehaltsreport für Absolventen