(5)ドイツで大手企業から内定を得る大学院生活の送り方

海外就職のために海外の大学院に日本人が留学するケースは多々見受けられ、就労ビザや人事担当者の評価などの面で基本的にはポジティブに働くことが多いですが、海外で学位を得たからと言って100%内定が保証されるわけではないことに注意しなくてはいけません。
今回は、ドイツの大学院を卒業してドイツの某大手メーカーに内定を得た私の実体験を元に、就活で成功しやすい大学院生活のコツを紹介いたします。

単位と成績

大学院生の本分は学業のため、単位の取得、及び成績に対しては真摯に向き合う必要があります。雇用主の4割は雇用時に「成績をかなり重視」すると考えており、ドイツの大手企業の中にはGPA3.0以下、あるいは2.5以下などの指標で足切りをおこなうところも存在します。

また、志望している業種の専門性を在学中に学べたかどうかも重要です。日本では外国語学科の卒業生が物流会社に入ったり、といったことがありますが、ドイツの場合「ロジスティック」は「ロジスティック」、「人事」は「人事」、「経理」は「経理」、とその専門的な知識を身に着けておく必要があります。

一般的なドイツの大学院の場合、自身の「専攻」と呼ばれる科目を在学中に選ぶことができるので、卒業後に自身が興味を持っている職種に関連する専門性を選択しておくと非常に有利です。

横のつながり

ドイツ語圏ではビタミンBと呼ばれる俗語が広まっており、Bは「交友」を表すBeziehungの略称で、要するにキャリア決定に必要な要素として人脈があげられるということです。結果主義的で数字に厳しいイメージのあるドイツですが、やはりビジネスの根幹にあるのは人との繋がりであり、就職活動・転職活動など節目節目において人脈の多い人は有利に働きます。

大学院生活でも、同級生とのつながりは重要な役割を果たします。友人のインターンした会社が別のポジションの応募をかけている、知り合いの会社が新規人材を探している、等、インターネットなどで載せられていない情報を元に求人にたどり着く手段の一つとして機能しています。

ドイツの中でこのような人づてでの就職機会は全体の約3割を占めると言われています。学業だけでなく、このように就職活動、並びに卒業後のキャリアに影響を与えるかもしれない人脈形成は大学院においておこなっておきたい事の一つでしょう。

語学力

大学院入学の要件で英語C1、ドイツ語C1などを課されることがありますが、個人的には試験で得られるC1と、実務で用いられる言語レベルにはまだ乖離があるように思えます。私は大学院入学時点でC1、その後卒業までにドイツ語力を向上させたつもりでしたが、入社後には語学で苦労することが多々ありました(特に南部訛りが難しい・・!)。

入社後の実務はもとより、それに至る面接やインターンなどの期間にも正確に会社の意図を理解し、的確に回答する、というスキルは必須になってきます。特に、英語が通じるとはいえまだまだ旧式な文化の残るドイツ企業に入社したい場合、最低でもC1以上のドイツ語が重要になってくることでしょう。

大学院の講義を通じて学べる語学の素養は多いですが、それと並行して、プライベートでもドイツ語を使用する、映画やテレビ番組を見て新しいボキャブラリーを習得する、などの努力が必要なように感じます。

(※一部の職種や業種ではドイツ語不要なポジションも見受けられ、ドイツ語要件は必須ではないこともあるものの、まだまだ大多数の企業ではドイツ語力が重要視される印象です)

インターンシップ(Praktikum)

学生(特に外国人)がドイツの大手に内定を取るうえで必要なステップと言えるのがインターン(Praktikum)への参加です。日本の短期インターンとは異なり、ドイツのインターンシップの場合3ヶ月~1年くらいの長期の仕事体験を通じ、学生側も企業側もそれぞれの力量を見極めるというフェーズを設けています。特に、ドイツの大手企業はほとんどすべてと言ってよいほどインターンを多く採用しており、ここでのコネクションは大手からの内定を得るための重要な接点となることでしょう。

このインターン期間中、学生は給料をもらいつつ、就職活動には不可欠な「実戦経験」を身に着けることができるので、そのインターン先に就職する、あるいはそれ以外の別の業界に就職する、いずれの場合を想定したとしてもプラスに働く経験になります。

最も、それだけ重要度の高いインターンの応募要件は、正社員の応募同様にハードルの高いものとなっています。10~20社応募して、1社受かるかどうかという厳しい世界であり(特に大手企業の場合)、大学の成績以外にも、面接での受け答えや、高い語学能力が面接通貨に必要になってきます。

生活力

最後に、学生生活を通じて身に着けておかなければいけないこととして「生活力」が挙げられます。

ドイツという異国の地で我々日本人が生き抜くために必要な細かいタスク、「家探し」「郵便の発送(封筒の書き方)」「電車の予約」「レストランの予約」「電話の購入、解約」「Wi-Fiの購入、解約」「車の運転」といったことは、ドイツ社会で生き抜くうえで当然出来て当たり前のことと見なされるため、学生のうちに身に着けておくことが推奨されます。

日本という環境で育って就職する分にはそこまで支障をきたさないような内容でも、少し文化のコンテキストが異なるだけで難易度が大きく変わることもあるため、学業以外の私生活でどれだけ新しいことにチャレンジして大学院生活を送れるかは重要なポイントと言えるでしょう。




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