ドイツ就職日記第三回となる本稿では、インターン終了後の本採用時のビザの更新や、試用期間中の扱いについて経験を元に記載します。
学生ビザから就労ビザへ
インターン終了後、ドイツの企業から本採用の通知を貰いました。本採用後、仕事開始の時期は多少融通をきかせてくれるので、大学側で卒論を提出、卒業するタイミングで正式に働き始めることとしました。
ドイツの大学で卒論を提出し、教授から成績を貰えるまでの期間が大体2ヶ月程度です。成績を貰い、学生課で最終的な退学届け(Exmatrikulation)をおこなって初めて学業から解放されます(※退学をおこなわないと学費が発生し続けるので注意)。
さて、大学卒業から業務開始までの期間で注意しなくてはいけないのが「ビザの変更」です。今まで「学生ビザ」でドイツへの居住を許されていたわけですが、当然学生ビザのまま働き始めることはできず、「就労ビザ」に切り替えることとなります。さて、この就労ビザへの切り替えですが、当然自動でおこなわれるわけではなく、自身の住所の紐づく外人局でおこなうこととなります。
私の場合、卒業した大学と就職した土地が遠く、最終的に引っ越す決断を下すのですが、この際に外人局の担当が変わってしまい、大幅な時間ロスとなりました。もっとも、始業までに就労ビザが間に合わなくても、学生ビザの延長や、仮ビザで当初の業務はカバーされることが多いため、そのあたりの判断は会社の人事部や担当の外人局に確認しましょう。
試用期間の開始
マストではないのですが企業側の特権として、新入社員には「試用期間」を設けることができます。この試用期間内であれば、企業側は比較的容易にクビ切りをおこなうことができるため、企業有利なシステムとして全体的にまかり通っています。
一応、この試用期間とは就労者側が会社の質を確かめる時期としても機能するようで、キャリアに傷がつかないという理由で、入社後2週間程度で退社した学生もいました。雇用側、就労側、お互いにこの試用期間を利用するような形です。
あくまで試用期間を用いるかどうかは雇用契約書に基づくこととなり、インターンを挟んでいる場合不要なようにも思えますが、旧態依然としたドイツの企業の中ではまだ伝統的なしきたりとして残されているです。
企業によっては「試用期間」であることを理由に安い賃金をオファーすることもあるようですが、私の会社では(インターンを挟んでいたこともあり)、ごくごく普通の賃金水準からのスタートとなりました。
インターン中に企業の概要などは既に把握していましたが、改めて本採用となった段階で改めて同僚への挨拶のようなことがおこなわれます。同時に、今まで制限の多かった社内データへのアクセスや入れなかった部屋への入室が許可されることとなりました。
インターン中 | 本採用(試用期間) | 本採用 | |
期間 | 3ヶ月~半年 | 半年 | 有期・無期 |
解雇の容易さ | かなり容易 | やや容易 | 解雇しづらくなる |
給料 | 最低賃金 | 本採用を見据えての業界水準 | 同左 |
デバイスの貸与 | 制限付き | パソコン、携帯等 | 同左 |
データなどへのアクセス | 制限付き | あり | 同左 |
決定権 | 制限多い | 自己裁量が増える | 同左 |
試用期間と言えども、基本的には通常の労働契約書に準じた扱いとなります。企業としてもせっかくインターンを生き残った人材を手放すのは無駄が多いので、基本的には「試用期間後」の採用も見据えた期間となり、この期間内でクビ切りにあうのは15%程度と言われています。ただ、企業としては試用期間が終わった後よりも「少し解雇しやすい」ので、あまりにパフォーマンスが悪かったり、遅刻や嘘などの態度の悪さが目立つ場合はクビ切りにあるので注意しましょう。
ドイツの企業・・給料はいくら貰える?
ドイツ企業の給与形態は、企業の大きさ、業界、経験年数などの要因で大きく異なります。一般的に給与が高いことで知られる業界が激務で知られる金融、コンサルで、私の就職したメーカー業界の給与は規模に応じて異なり、月のBruttoでの額面が3,000~4,000EURと言われています。
大学院卒、インターンでそこそこの成績だったことを踏まえて私は額面約3,800EUR(年45,000EUR)からのスタートとなりました。これに、年の目標値などが定められて、それをクリアすると追加のボーナスが貰える形です。ちなみに、額面月額3,800EURですと手取りは2,500EUR程度となります。
独身者(Klass1)の額面・手取早見表
額面(月) | 手取(月) |
2900EUR | 2000EUR |
3200EUR | 2170EUR |
3500EUR | 2230EUR |
3800EUR | 2500EUR |
4100EUR | 2660EUR |
4400EUR | 2820EUR |
(2024年NRWで計算。数字は参考値です)
ドイツ企業の慣習としてボーナスは無く(一応「夏休み・冬休みボーナス」のようなお小遣いが発生するが、微量)、基本的には上記の給与値がそのまま年収となります。ただし、私の場合出張を伴う業務内容であったため、ドイツの出張規定に則って出張の度に出張手当を支給され、多い月では+1000EURくらいの収入増となりました。
福利面では社有車を使うことができ、保険料、ガソリン代は会社全負担の代わりに、新車代金の1%を払う義務が生じます(1%ルール)。インターン中と異なり、会社携帯、社有車、名刺など総務部と打ち合わせて決めるべき内容が多く、ドイツの新入社員として右も左も分からない私にとっては業務以上に負担が大きかったことを覚えています。