結果重視の文化で知られるドイツ企業。ドイツ就職日記第三回となる本稿では、大学院卒業後3年勤めたドイツの企業での実態などについて詳しく解説したいと思います。
キャリアと昇給
前回までのコラムで記載した通り、私はドイツの大学院を卒業後そのままドイツ企業に就職したため、扱いとしても一番下の「Junior Manager」でした。
ドイツの役職には「Junior Manager」「Senior Manager」「Direktor」などが存在しており、私の就職時の役職は日本で言うところの「役職無し」のようなもので、部下などを持ちません。給与や権限などは制限されており、例えば「10,000EURまでの決定であれば自分で下す」「それ以上の額になる場合上職に相談」といった形でした。
「Junior Manager」と「Senior Manager」の違いは働いた年次によって判断され、自力で業務が回ると判断されると「Senior Manager」に昇格しますが、私の会社ではSenior Managerになっても部下は発生せず、あくまで肩書と給与が変わるだけでした。
ドイツ企業における管理職への昇格はスーパーの順番待ちのようなもので、基本的にそのポジションがあくまで待機することが多いと言えます。そのため、企業の中には「部下無し」のポジションとしてキャリアを終える割合が半数ほど存在します。
昇給に関しては、年間の昇給率はおおよそ3~5%程度で、私の会社の場合上職とのJahresgespräch(年次ミーティング)でもって次年度の昇給などを定める仕組みでした。昇給に対しては定量化した部分(仕事の効率や速さ、売上への貢献、)と性格面での評価(チャレンジ、チームワーク、等)の2軸から評価され、双方を満たす必要があります。
日本の会社同様、入社後1~2年は責任の軽いタスクが与えられ、3年目に入るころから次第に責任感が増すような仕事となります。私の場合、年収45.000EURからのスタートで、3年目の退職時点では年収47.000EURくらいでした。
仕事時間と有給
日本と比べ比較的仕事環境の良いことで知られるドイツですが、残業が無いわけではありません。特に入社後の1年は自身のタスクが片付かないことが多く、週10時間程度サビ残を行っていました(日本より少ないことは事実ですが)。
ドイツ人同僚の中にも残業・サビ残をおこなう人は少なくは無いものの、プライベートとのバランスを重視することは忘れない印象です。家庭に影響が出るほど残業、とまではいかない形で遅くとも19時くらいです。
代わりに、日本ほど同僚や顧客との付き合いの時間が少なく、仕事後に飲みに行く、というのは年に1~2回程度のものでした。他に、会社主催の夏パーティ、社員家族パーティ、クリスマスパーティのようなものが開催され、社員は無料でビールや食事を味わえるイベントがありました。
ドイツ企業における1日の流れ
部署によって扱いは異なりますが、私の部署では朝の8時から昼食休憩の1時間を挟み、夕方の17時までが終業時間という形でした。オフィスは私を含め3人のジュニア・マネージャー職で独占状態で、基本的には上司から見張られることはなく、タスクさえこなせばコーヒーを飲もうが外でタバコを吸おうがその辺の時間管理は好きにしてくれ、という環境です。
とある日の一日の流れ:
時間 | イベント |
8:00~9:00 | コーヒーブレイク、メールチェック等 |
9:00~10:00 | 資料準備・シンガポールとのミーティング |
11:00~12:00 | 他部署との新製品開発ミーティング |
12:00~13:00 | 昼食(近くのイタリアン等) |
13:00~15:00 | 市場調査レポートの作成 |
15:00~16:00 | 北米代理店と市場調査向けミーティング |
16:00~17:00 | ミーティング後の資料調整・レポート完成 |
私は変動する北米・東アジア・東南アジア市場の情報をデータ化し、新製品開発などに反映させる仕事をおこなっていたため、一日のうち半分がミーティング、半分が資料・レポート作成、といった形でした。上記のテーブルを見ていただければわかる通り、社内ミーティングの他に社外のミーティングも行うため、ドイツ語+英語のスキルが必須です。
17時前に仕事が終わることもあれば、18時以降まで残業をおこなうこともありますが、私の部署ではあまり厳格な時間管理はおこなわれませんでした。逆に、工場やカスタマーサービス等、シフト制で動くような部署は時間管理が厳粛なイメージです。
社外との折衝よりも、社内のドイツ人との折衝のほうがストレスであることが多く、細かい数字の間違いや論理的な根拠を詰められることが多い職場でした。最終的にはそのことが原因で、ドイツ企業を退職し在独の日系企業に転職することとなります。