大学院を卒業し約3年間ドイツの企業に就職、その後ドイツの日系企業への転職を決めました。就労ビザや住所変更手続きなど、日本国内とは異なる手順で困惑を覚えるような転職者の方も多いかと思います。私の体験を元に、ドイツの企業を退職する流れを紹介していきます。
会社への通達
さて、内定が確定した時点で就業開始までのカウントダウンが始まります。私の場合、3か月後の1日からの始業を確約し、労働契約書にも書いてしまったため、それまでに現企業側での退職をつつがなくおこなわなくてはいけませんでした。
言った言わないを回避するため、原則的にドイツ企業における退職関連のやり取りはメールではなく「手紙」で行う必要があります。ただ、手紙でいきなり「退職通知」を送りつけても後味が悪いので、とりあえず上司に辞める旨を報告し、どのようにしたらよいかを確認することにし、メールを送りました。
自分「会社を辞めることにしました。既に転職先は決めてあります」
その3分後くらいに、以下のメールが私をCCにして返ってきました。
直属の上司から部長へのメール「〇〇からこのようなメールが着ているので、とりあえる明日ミーティングを開きましょう」
その10秒後くらいに、上司からの電話がかかってきました。
上司「何が原因だ?金か?」
自分「いや、仕事のやり方とか・・」
上司「こっちが折れれば思い直すのか?」
自分「いや、もう転職先に内定貰ってサインしちゃったので」
上司「ならしゃあない、今後のプロセスは明日話そう」ガチャ
このように、割とさっぱりと、しかし要点を得た(理由の確認→引き留められるのかの確認→無理だと分かり諦める。会話終了)会話となりました。ちなみに、ドイツにおける転職事由で一番多いのは給料面の問題のようで、やはりここの交渉などが引き留める側の念頭に一番上がりやすいようです。
退職ミーティング
というわけで、退職を切り出した翌日、早くも上司とその上長との退職ミーティングが開催されました。特に詰められたりというわけではなく、以下の内容を事務的に話し合うこととなりました。
- Aufhebungsvertrag(契約解除契約書)の作成
- 退職日の打ち合わせ
- 退職日までにしなくてはいけないことの打ち合わせ
- 退職日までに返さなくてはいけないもののリストアップ
特に、退職までに「必ず」有給休暇を使い切らなくてはいけないというので、残りの3ヶ月のうち事実上半分くらいは休暇となりました。その隙に引っ越し、新しい家探し、引っ越しに伴う事務手続きなどを行う必要があります。
家探しに関しては注意が必要で、基本的には契約書が試用期間の間は借りる側の権利は非常に弱い立場にあることを理解しなくてはいけません。労働契約書を持っていればある程度家を借りられるハードルは下がりますが、それでも最終的な家の確約まで1ヶ月を要しました。
退職に関する事務手続き
私の場合、退職日の翌日=新しい会社での出社日となっていたので、年金や健康保険などの移行手続きは発生せずに済みましたが、例えば退職日から新しい仕事の開始日までに日数が空いたり、一時的に失業手当を受け取る場合、などは、自分で手続きをする必要があるので注意が必要です。
その他、仕事以外にも日常生活関連では以下のようなところで住所変更作業が発生しますので注意が必要です。
- 滞在許可証の住所欄の変更(市役所)
- 在留届の住所の変更(オンライン等)
- 郵便物の転送届(オンライン)
- 銀行やクレカの住所変更(銀行・オンライン)
- インターネットや携帯電話の住所変更(店舗・オンライン)
私の場合無期限就労ビザを保持していたので転職に伴う就労ビザの書き換え作業は発生しませんでしたが、仮に有期就労ビザの保有者だった場合、上記の事務手続きの中に「外人局での書き換え作業」が追加されるので注意が必要です。
外人局での書き換え作業は、常に自身の居住する住所区の管轄でおこなわれるため、仮に書き換え作業中に引っ越しなどを行ってしまうとまた手続きがやり直しになる恐れがあります。
退職日
さて最終出社日ですが、同僚により最後の食事会と小さなプレゼントの受け渡しがおこなわれました。儀式的に上司とその上職と30分程度最後のミーティングのようなものがおこなわれ、また社交辞令的に「いつでも帰っておいて」の声がかけられます(本気かどうかは分からない)。
ドイツ社会において転職は一般的ではあるものの、それでも別れの挨拶にはそれなりに礼儀を尽くす印象です。周りを見渡すと、一度辞めたけれどもまた会社に戻った「出戻り組」もちらほら散見しており、良くも悪くもそこらへんの気恥ずかしさは無いのだな、といった印象です。
最後にパソコンと携帯を総務部に返却し、会社における作業は完了となります。あとは、会社側から退職通知やRecommendation Letterを貰える予定だったのですが、どうやら間に合わなかったようで、後日郵送で送られてきました。