ドイツでトリマーとして修行後に現地で活躍して10年以上、今までトリミングしてきた犬種は115種以上のベテランのトリマーMika Tanaka Baumgartnerさん。NIPPONip本誌73号のインタビューには掲載しきれなかったお話をご紹介いたします。
ドイツの犬事情と文化について
セラピー犬のトリミングに、小学校(Klenze小学校!)のハンディキャップ生徒の教室に招待されて公開トリミングをしたり、トリマーになるなら(体力も必要なので)筋肉を鍛えるためにジムに通う方がいいといわれ、今も続けています。というドイツのベテラントリマーとして活躍するMikaさん。ドイツの犬事情や、トリミングやグルーミングといった基本的な犬事情についてもお話しいただきました。
そもそもグルーミングとは?
グルーミングとは、動物の体のお手入れの事です。犬や猿がお互いの毛づくろいをすることから発祥されました。猫の毛づくろいはみていて微笑ましいですよね。
犬は生まれたときに母犬から初めてグルーミングをされます。母犬が生まれたばかりの胎児を包む胎膜を舌で舐めとって、呼吸ができるようにします。そして子犬を舐めて皮膚を刺激し、肺呼吸を促します。また、毎日何回も行われる母犬のグルーミングで排出も促されます。グルーミングは単に体の外側を清潔するためだけのものではなく、信頼を築きあって精神的に結び合うためにも欠かせません。(愛犬と)オーナーさんとの信頼関係も日々のグルーミングを通して確立されていきます。
現在の犬の被毛や顔や耳の構造などは、人間の都合が優先してつくられたもので、犬種の中には犬自身ではどうにも対処できない毛質があり、人が手を貸して快適に過ごせるようにすることは人類の責任です。
それぞれの生活スタイルに合わせてペット(愛犬)の被毛をトリム(形を整える)するのがトリミングサロンです。
ペット事情で解決されたら良い、注意した方が良い、と感じる問題はありますか?
その犬種を飼うにあたって発生するメリット、デメリットをブリーダーが飼い主にきちんと話すことが大切です。例えば、大型犬は初心者や体力に自信がない人には難しいことを事前に知るべき。など。
また、トリミング動画が大量にネット上に流出しているが、とても初心者には勧められません。
クリッパーのような専門道具の扱い方は見た目よりずっと大変。人間用のものよりも重いし、扱いを誤ると危険です。
製品メーカーが発信する専用の使い方動画を見て、使い方を確認してください。また、愛犬の毛に毛玉や絡まりのない完全な状態になるようにブラッシングしてから始めてください。
しっかり準備していても、ワンちゃんはご主人さまのいつもと違った、ただならぬ雰囲気を察して嫌がる子もいるかもしれません。嫌がったら絶対にストップしてください。お互いにエスカレートして思わぬ事故につながります。それがきっかけで「トリミング=トラウマ」になってしまう可能性もあるので。
ドイツで人気のあるオーダーはありますか?
SNSの影響で、「桃尻カット」が流行っているようですが、正否の意見が分かれます。どんな犬でもできるわけではないのですが、コーギーやスピッツ系のワンちゃんはお尻の毛のボリュームがあるのでオーナー様とご相談してからカットが可能です。
「テディベア―カット」はプードル系やドゥードル系に人気があります。ドイツのカットは、日本のカットスタイルとちょっと違う点もありますが、日本でのプードルカットはドイツのカットから大きな影響を受けているので誇らしく思います。
ドイツで人気のある犬種は?
どの犬も飼い主にとってはうちの子が一番ですが、シベリアンハスキーはリピートするオーナーさんが多いです。スタンダードプードルは意外とオフロードな方に好まれます。プードルやプードルハイブリッドの良さは、いろいろなスタイルを楽しめることです。
ゴールデンレトリバーはドイツで最も愛される犬種ベスト3位内にいます。
パグは、ドイツではモップスと呼ばれます。最近ではこのモップスやフレンチブルドッグなどの短頭種が多く見
何日くらいの旅行から飼い犬をペットホテルに預けたり、ペットシッターに頼まないといけないのでしょうか?
犬は猫やほかの齧歯動物とは違い、人間(ケアする人、コンタクトする人)がいないとストレスを感じます。ある研究では訓練された家庭犬でも、飼い主が留守になって約5時間目くらいからストレスを感じ始めたそうです。
留守番できる年齢は、幼犬は1年以上、保護犬は受け入れて4週間以上必要になります。トレーニングが必要で、様々な状況や命令に対応し、信頼関係が出来上がっていないと難しいです。
例え条件がそろっていても長時間のお留守番は犬を不安にさせます。事故や体調の急な変化が予測できない危険なリスクが伴うことを十分に理解しておいてくださいね。
ペット(犬)を連れて旅行する時に気をつけること
ホテルに行っていきなり預けるのではなく、何度か行き来し、場所を匂いで覚えられるようにすると良いでしょう。犬は嗅覚が一番優れているので、「前来た場所+後で家に帰れる」と記憶します。
また、 大好きなおもちゃやおやつを貰えることも楽しみになります。人間には白い糊のきいたシーツがホテルの定番ですが・・・ペット自身の匂いの染みついたベッドや毛布も大切です。
ベッドはその子の安全地帯なので、犬が休んでいる時は邪魔をしないようにして、「ベッド+嫌なことは起こらない 」というように安心できるツールとしておけば、ホテル宿泊の強みになります。
当然ですが、ホテルは家と異なり大勢の人や犬が出入りするので、公共の社会に普段から馴らしておくことが大事だと思います。ドイツの多くの犬が電車やバスに乗ったり、レストランに連れていくことができるのも、飼い主が犬を特別扱いせず、犬学校に通ったりして、きちんとしつけるからです。
ペット(犬)が快適に過ごすためのおすすめのグッズ
夏の暑い日はお散歩時間を早朝と夜に多くとり、日照時間では短くすることをお勧めします。犬用の日焼け止めオイルや、アスファルト熱で足の肉球をやけどしないための犬用の靴や靴下がありますが、涼しい日陰にあまり動かずにいる時間をタップリとりましょう。犬の足やお腹を濡らして冷やしてあげるのも効果的です。
移動の際に重宝するのが愛犬を入れる丈夫な犬運搬用バッグです。
小型犬は人込みでは見えないところで怪我をする恐れがあるので、犬運搬用バッグを持っていれば電車内やデパートでも慌てません。最近のイタリア製バッグはおしゃれです。
ビヤガーデンやレストランで一休みするのに「携帯マット」がとても便利です。折りたたんでバッグや車に入れておけばいつでもどこでも取り出して、宴の同席を引き立ててくれます。
勤務先のMCGroomerでは、このような運搬バッグのほかにも、厳選されたドイツ国産のフードやおやつを揃えています。ハンディキャップのある人たちが制作した「紐状のフィギュア」は犬の遊び心を誘います。「フェルトの芝生マット」に細かくしたおやつを隠しておけば、探策心を持続し、集中して夢中になっています。
*現在勤務中の店内ではグッズの販売やご相談はアポなしで可能なので、是非お立ち寄りください。お車でのお越しは地下駐車場がありますのでお声をかけてくださいね。
Mika Tanaka Baumgartner
トリマー(ドイツ・グルーマー)。今までトリミングしてきた犬種は115種以上のベテラン。現在の勤務先ではトップ・グルーマーとして活躍しています。現在の勤務先MCGroomerでは、ミュンヘン2号店Schwabing店に伴いスタッフ急募中*です。現スタッフは多国籍出身!
2013 | トリマーとしての修行をHundesalon und Modeで開始 |
2014 | 独立 |
2023 | MCGroomer Haden店でトップグルーマーとして勤務開始 |
勤務先HP – McGroomer / Instagramアカウント |