新卒採用、転職活動においてある程度スキームが定まりつつある日本の就活シーンと異なり、ドイツにおいて仕事探しの手段は千差万別と言えます。そもそも、大学を卒業する時期や、キャリアパスの年齢がバラバラなため、特定の年齢群に応じたシステムが作りづらいという事情もあるでしょう。
そうしたドイツにおいて日本人が仕事探しをしようとすると、やはり自身の適正やバックグラウンドに見合った方法を取捨選択しなくてはいけません。ドイツで一般的な仕事探しの方式と合わせ、ドイツで就職を志す日本人がどのような仕事探しをすればよいのか、日独の比較を交えお伝えします。
ドイツにおける仕事探しの経路一般
在独日本人の適正 | メリット | デメリット | |
就職ポータル | 〇 |
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企業採用ページ | △ |
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知り合いの紹介 | 〇 |
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就職斡旋所 | △ |
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就職イベント | △ |
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ヘッドハンター/
リクルーター |
◎ |
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日本人が求人にリーチするための経路
もっとも、このドイツにおける仕事探し事情ですが、こと日本人が応募の主体となると、話は大きく変わります。第一に、ドイツにおける求人募集は基本的に「ドイツですぐに働ける人」「ドイツで職歴のある人」を対象としているため、日本からの応募であったり、ドイツにいても就労ビザの無い状態からの応募であったりすると、自動的に足切りにあってはじかれてしまうのです。
一般的に、リーチできる求人案件の数と足切り設定には相関関係があり、多くの人が応募しやすければしやすいポジションであればあるほど、企業の採用担当者側も全員のCVをチェックするわけにはいかないため、自然と「就労ビザの有無」や「ドイツにおける職歴」、「ドイツ語の習熟度」などをもって足切りをおこなう傾向にあります。
ドイツの大学を卒業していたり、配偶者ビザを持っていたりと、ドイツ人と似たような条件で就労できるのであれば話は別ですが、一般的に日本人がドイツで求人案件に応募をおこなうとなると、現地で一般的なプラットフォームや就職経路ではなく、日本人向けに特化したサービスを使用することが好まれます(商工会議所の日本人求人や、日系専門のリクルーター等)。
就職ポータル
ドイツで有名な就職ポータルとしては、以下のようなサイトが挙げられます。日本人としての優位性を活かすのであれば、例えば検索キーワードに「Japanisch」「Japanese」といった用語を入れ込むことが考えられます。
- Indeed
- StepStone
- Jobs.de
- Kimeta
- Monster Deutschland
当然、日本とはかけ離れた職種や業種を探すことも可能ですが、日本人がドイツで日本語以外を武器に就活するとなると、現地のドイツ人以上に優れた専門能力や、コミュニケーション能力が必要とされ、あまり現実的ではありません(この辺の事情に関しては「XXXX」の記事を参照してください。就労ビザの手間とリスクがある以上、ドイツ人の採用担当者はEU外からの採用を敬遠する傾向にあります)。
もっとも、上述の通り大手の就職ポータルは求人を設けている国での職歴や学歴があり、即座に就労可能であることが前提になっていることが多く、こうした条件を満たさない場合、採用担当者の負担を軽減するため、機械的な足切りの対象になることが多いと言えます。そのため、リーチできる案件数としては潤沢ですが、内定どころか面接に呼ばれもしないような状況が続き、就活疲れを引き起こす原因になりかねません。
ニッチながら上記ポータルに加え、ドイツ在住日本人向けのジョブポータルもいくつか存在します。これらサイトは文字通り、ドイツで働きたい(または既に働いている)日本人をターゲットにしているため、日本人としての強みが活かせる可能性が高いと言えます。
- E-Recruiting(Career Management社の運営する就職ポータル)
- Mixb
- 在独日本商工会
企業採用ページ
企業の中でも特に従業員数が5,000人を超えるような大企業であると、採用活動を自前の採用ページにおいて完結させることが少なくありません。中には、常時複数のポジションを企業内で募集しているような会社もあり、通年でポジション数が多いため、登録しておけば空いたポジションが出たときに企業側からコンタクトしてくれることもあります。
こうした自前の企業採用ページを持つ会社は、すでに名前が知られた大企業であることが多いため、競争率が高く、上述の就職ポータル同様に様々な足切り条件が厳しい傾向にあります。加えて、自社の社風にあうかの心理テストや、IQテストなどを設けているケースも多々見受けられます。CV、カバーレターに加えて完全に個々の企業の採用ページへの登録を済ませなくてはいけないため、1社あたりにかかる応募時間が長くなるというデメリットが生じます。
もっとも、企業規模が小さければ心理テストやIQテストなどは割愛され、採用担当者への直接のコンタクトフォームなど応募が簡素化されているケースもあり、就職ポータルと違って「穴場案件」と化している可能性もあります。
知り合いの紹介
ドイツ語で「Vitamin B」とは自身の人間関係に基づく就職活動を示します(Bは関係性を表すドイツ語のBeziehungの頭文字)。人間関係とは文字通り、家族、親戚、友人、恋人、またはそれらの繋がりのことで、日本人のイメージからして堅苦しいドイツ社会にあっても、こうした「知り合いづて」での求職割合は3割近くを占めると言われています。
知り合いの程度や企業規模にもよりますが、この知り合いの紹介による就職システムは、採用者側、応募者側ともにメリットをもたらすと言われます。
採用者側の目線で言えば、就職ポータルやヘッドハンターを介して採用活動をおこなうよりもはるかに安上がりで済み、かつ身元のはっきりとした採用者にリーチできる傾向にあります。
応募者の目線で言えば、闇雲に何十、何百と企業に応募し、足切りをうけるリスクを回避し、高い確率で採用担当者にリーチすることが可能です。
もっとも、いずれの立場からしても、知り合い伝手での採用・就職活動のデメリットは「長期戦」になりがちなところで、特にすぐにでも就職したい立場からしたら、そう都合の良いタイミングで親戚や友人の企業が誰かを探している、ということはありません。
また、自分から積極的に企業を探すのではなく、あくまで受け身での就職活動となるため、自身の条件に適った企業から声がかかりづらいというデメリットも挙げられます。特に、零細企業においては半分以上が知り合い伝手での採用であるのに対し、500人以上の企業では知人伝手の採用は10%以下という調査結果もあり、大企業ではメジャーな採用方法ではない点に注意が必要です(参照:NTV「Am häufigsten hilft Vitamin B」)。
そもそも、ドイツに来たばかりの日本人にとって、求人案件を紹介してくれるようなドイツ人との友人関係がまだ希薄で、こうした「Vitamin B」は活用しづらい可能性も高いでしょう。
就職イベント
「Jobmesse」と呼ばれる、日本でいうところの合同企業説明会のようなもので、各町の会場や、大学などを借りて複数の企業がブースを設け、自社のPRなどをおこないます。一般的には就活生が情報収集をする場所として機能しますが、中には採用担当者と直接コンタクトを得たりするチャンスもあります。
傾向として、大企業であれば既存のスキームに則った申し込みを好みますが、比較的小回りの利く中小企業であれば採用担当者の一存で、興味のある就活生がいればミーティングを設けたりといったこともあります。
弱点として、そう何度も開催されるものではないため、タイミングが良くないと参加できないという特徴を持つところです。
ヘッドハンター・転職エージェント
ドイツの就活シーンにおいて、ヘッドハンターは「特殊な技能職」や「高技能案件」などに用いられる傾向にあります。これは、特に就職ポータルや就活メッセなど一般向けに求人の公開されていない、あるいは業務上の理由などで公開しづらいような案件を代わりにヘッドハンターや転職エージェントが仲介し、応募者となりうる人材を探し当てる就職モデルです。
同様に、ドイツにおける日本人向け、あるいは日本語を必要とするポジションもこうした「特殊求人案件」と見なされて就職ポータルなどから秘匿されるケースが多く、こうした案件にリーチするためには、転職エージェントの仲介によって企業と橋渡ししてもらう必要があります。
ドイツのローカル日系ヘッドハンター
- Career Management
- Career Connections
- Adeni
- Fisher、等
自身の特性や専門性を考慮し、適正の高い企業を紹介してくれることが多いため、1社当たりの内定確率でいえば日本人の他の求職ルートよりも高い傾向にあります。一方で、自発的に検索などをおこなうことが難しいため、1つの転職エージェントを利用してリーチできる企業数には限りがある点が欠点です。