ドイツ在住の日本人が新鮮なお魚を求めて、こぞって集うイタリア食品スーパー、ヴェノス。そこでお魚をさばく一方、音楽家の顔を併せ持つ東浦 啓さんにインタビューしました。NIPPONip本誌78号にて、本誌では掲載しきれなかった東浦さんのドイツでの働き方、ヴェノスのお得情報などのお話をお届けします。

職場の東浦さん
東浦 啓
奈良県橿原市出身。幼少の頃から歌うことが得意で、宮崎大学でブルースカイ合唱団に入団したことで本格的に音楽の道へ。ニュージーランド、オーストラリアで師事し、渡独後は、音楽院「Dr.Hoch’s Konservatorium」で8年間学修、声楽教師、クラシック歌手として活躍。その後、補習授業校勤務などを経て、現在は、VENOSの鮮魚売り場で勤務、Die junge operette Frankfurtに所属し歌手活動を行う。
経歴: 英語教員、声楽教師、クラシック歌手、合唱指揮者、 補習授業校教師兼事務員、魚屋
高校2年生の冬からニュージーランドに留学した際、めちゃくちゃ頑張って英語を身につけたので、外国語習得には少し自信がありました。大学では、教養科目でドイツ語を選択。勤勉に勉強しましたし、渡独のきっかけとなったドイツ人カップルとも簡単なドイツ語で会話していました。渡独後は、語学学校に入学。元英語の教師ということもあり、勉強の仕方も知っていたので、話せるようになるまでのスピードは早かったと思います。

セリフ×音楽×踊りをミックスした音楽劇、オペレッタに出演(画面中央)
勉強家というとおこがましいですが、勉強するのは好きな方です。ドイツの音楽院で書いた論文のテーマが発声法についてでした。大学時代、すでに発声法に関する本を読んで、自分なりに要点をまとめていたのですが、論文を書くにあたり、さらに紙に書き出し、全部で200枚分くらいはあったんじゃないかな。今でも集大成のような資料は大事にとってあります。
はい。歌にしても魚にしても、そのくらい情熱を燃やしていたものが、今どちらも仕事になっているというのは、ありがたいことです。

お店の外観
ぼくがヴェノスに来て、本当に日本人のお客さんが増えたんですよ。同僚が間違えて大量発注したサバ50kgを日本人に呼びかけて、全て売り切ったり、存在感は示せていると思います。

取材時に捌いてもらい購入した中トロとヘダイ。
自分自身、ドイツに来たばかりの頃、こちらの魚事情にがっかりしていたので、日本人の方が好きそうなお魚を仕入れたり、希少な部位をおすすめしたりしていますね。クリーミーでおいしい鯛の白子や、ハマチフィレの部分売り、サバの三枚おろしはぼくが来てから提供し始めたんですよ。日本食材の取り扱いも続々増やしていますし、日本人に対する愛で動いていると言っても過言ではありません。

お刺身クォリティのマグロや鮭
遠方から数家族分まとめて鮮魚などを購入された方、インスタグラムのストーリーズにヴェノス関連のことを掲載された方に1割引券を進呈しています。また、YouTubeでヴェノスを紹介してくれた方には、1割引券を5枚プレゼントしています。

大充実の日本食材コーナー
ドイツ人にはあまり知られていないけれど、日本人が好きそうな食材を試食で紹介していきたいと思っています。これまでは、ポン酢とゆずレモナードと台湾産の米の試食販売、おむすび専門店”Omusuby”とのコラボで、ヴェノスの魚を具材にしたおむすびの販売などをしています。
こういった企画とともに、魚の捌き方を教えたり、魚の試食会のようなものも開いてみたいですね。
魚屋で働いてクタクタになった後、歌の練習をするのが難しいので、本番までに仕上げるための時間が限られていること。どちらも身体が資本なので体調管理にとても気を使います。
良い点はクラシック音楽に対する需要が高いことです。あまり嬉しくない点はサマータイム制です。体調が崩れやすくなります。
よく響く堂々とした声ではっきり話すことを心がけています。楽しいのが、ぼくが相手の国の言葉を覚えて、それを言ったときの相手の反応を見ること。逆に同僚も「こんにちは」「ありがとう」「さようなら」といった簡単な日本語は覚えてますね。また、辛口のジョークを言う同僚が少なからずいるので、そういう人達にはできるだけ同等以上の切れ味のあるジョークを言うようにしています。
ヴェノスのスタッフは、多国籍でそれぞれの個性がとても強いです。なので、それに負けない気風を常に身にまとう意識で働いています。それと、日本人としての誠実さを大切にしています。あの日本人に頼めば良い魚が食べられるという安心感を持たせることが目標です。
補習授業校の教師時代、受け持った児童に対して「なんて素直な子たちなんだろう。この子たちのためにもっと頑張りたい。こうしてあげたい」という熱い気持ちが沸いたという東浦さん。
自分は人のために働いた方が元気になれると気付いたのだそう。今現在は、ヴェノスで、日本人のお客さんの喜ぶ顔を見るのが嬉しい瞬間なのだとか。インタビューの端々から、東浦さんの誠実なお人柄を垣間見ることができました。
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