『Dinner for One、ディナー・フォー・ワン』という20分弱のスケッチ的なTV番組が、ドイツ国内の大晦日の長寿番組として、すでに50年以上も愛され続けているのをご存じですか?
1963年以来、カルト的な人気を誇るTV番組
1963年にNDR(Norddeutscher Rundfunk、北ドイツ放送局)制作のテレビ番組として、はじめて放映されたこの作品 『Dinner for One、ディナー・フォー・ワン』。 またのタイトル『90歳のバースデー』としても知られています。
爾来ドイツのSilvester -ジルヴェスター (大晦日)には、家族団らんの際に、または友人とのどんちゃん騒ぎのパーティのあいまに、欠かせない番組として、毎年放映されています。
『Dinner for One、ディナー・フォー・ワン』は、イギリスのコメディアン、フレディ・フリントン(Freddie Frinton)制作による約18分のショート・スケッチです。
登場人物も二人だけ
フレディ・フリントンとそのパートナー女優のメイ・ウォーデン(May Warden)によって演じられますが、俳優さんが英国人なので、ドイツで放送されるにもかかわらず、オリジナル原語は英語です。
そのスケッチの内容ですが、まず冒頭、フリントン演じるバトラー(執事)、ジェームスが登場。
彼が仕えるご主人様であるミス・ソフィー(メイ・ウォーデン)の90歳の誕生日を祝うディナーを無事に成功させるべく、はりきっています。
ミス・ソフィーは毎年自身の誕生日を、長年交流のある4人の親しい友人たちである、サー・トービー、フォン・シュナイダー提督、ポメロイ氏、そしてウィンターボトム氏と祝う習わしです。
実はこの4名、すでに亡くなっているにもかかわらず、ミス・ソフィーとバトラー・ジェームスは、合計5人のための席をディナーテーブルに用意し、想像上の楽しい会食を繰り広げます。
ディナーは、スープに始まり、魚のディッシュ、肉のディッシュ、そしてデザートで終わるフルコース。それぞれの料理に合わせて、飲み物もシェリー、白ワイン、シャンパン、ポートワインが選ばれます。
4人のお客様を招いたとしての想像上のディナーですから、お料理はミス・ソフィーの分だけがサーブされるのですが、実は飲み物は他の4人のグラスにもつがれます。
そして、新しいお料理がサーブされるたびにミス・ソフィーが乾杯の音頭を取るのですが、その時には、バトラーのジェームスが、4人のゲストそれぞれの声音やジェスチャーをまねして、ミス・ソフィーといっしょに乾杯し、グラスを飲み干すのです。
さて、ここで勘のいい方はお気づきですね。
・・・
そう!ジェームスはミス・ソフィーの4倍の量のアルコールを飲むことで、食事が進むにつれ、どんどん酔っぱらっていき、最後のデザートが供される頃にはべろんべろんに出来上がっている、というわけです。
ディナーの始まりでは、きちんと威厳を保った、いかにもバトラー然とした態度だったのが、宴が進むにつれ、くだけた様子になっていく様子が愉快です。
ダイニングルームの床に敷いてある虎の頭付きの毛皮の敷物につまずいたり、サーブするお料理が中空を舞うように現われたり、グラスと間違えて花瓶の水を飲み干したり・・・
そんな他愛もないギャグの連続を、頭を空っぽにして楽しむことができるのも、大晦日の雰囲気ならでは、というところではないでしょうか?
世界で最も数多く放映されたTV番組としてギネスブックにも
ドイツでは、この大晦日のスケッチ『Dinner for One、ディナー・フォー・ワン』は、すべての3番目のARD(ドイツ公共放送連盟)および地方公共放送団体の大晦日のプログラムに不可欠な存在となっています。
この番組は、ドイツのテレビで最も頻繁に繰り返され、1988年にはギネスブックにも、「世界中で最も頻繁に繰り返されるテレビ番組」としてリストアップされました。
1963年から2003年末までにドイツ国内で合計231回放送されたそうです。 2003年の一年間だけでも19回といいますから、すごい放映数ですね。
また、このスケッチはドイツ国内だけでなく、欧州各国でも放映されているそうです。1989年以来、スイスのテレビでも年末に放送されています。オーストリアの放送局ORFでも、一年の締めくくりの番組として人気があるそうです。
また、ノルウェーでは、大晦日ではありませんが、12月23日に放映される習わしとのこと。デンマークでは、1980年以来、毎年12月31日に放映され、そのほかにもフィンランド、スウェーデン、フェロー諸島、南アフリカ、グリーンランド、エストニア、ルクセンブルク、さらにはオーストラリアなどの各国で、大晦日のカルトイベントとなっている『Dinner for One、ディナー・フォー・ワン』。
逆にそのもともとの出身地である英国では、ほとんど放映されず、あまり一般的には知られていないそうです。
さて、このカルトなイギリスうまれのスケッチ、『Dinner for One、ディナー・フォー・ワン』をあなたもぜひシャンパンを片手に見てみませんか?
NDRのドイツ語ウエブサイトのリンクで放映時間をご確認くださいね。