ドイツの十二夜 – 古代ゲルマンの時代から伝わるドイツの十二夜の風習

12月はクリスマスの月! クリスマスを知らない人はいませんが、ではそのクリスマスが終わったあとから、翌年の1月6日までを「十二夜」と呼ぶのはご存じでしょうか? 年末年始は過去を振り返り、新年を予兆するマインドフルな日々です。 古代ゲルマンの時代から伝わるドイツの十二夜の風習をご案内します。

十二夜(RaunächteまたはRauhnächte)の由来

©️pixabay_Mariya

11月の末にアドヴェント(待降節)が始まると、人々は浮足立ち、心はクリスマス一色に塗りつぶされます。

クリスマスは、誰でも知っているように、キリストの降誕の日です。ベツレヘム(現在のパレスチナ、ベツレヘム県)に生まれたキリストの生誕を祝う風習の多くは、その昔のゲルマン民族の風習であった冬至祭がそのベースとなっていると言われています。

クリスマスと新年6日のエピファニー(公現祭)の間の12日間も、英語では「十二夜 Twelfth Night」、ドイツ語では、「ラウネヒテ Rauhnächte」と呼ばれ、クリスマスに引き続き神聖なる時間とみなされてきました。そして、古いゲルマンの伝統と見られるいくつかの風習があります。

1885年著者不明:https://zidanio.livejournal.com/16525.html

ドイツ語で、„Rauhnächte“というのは、11世紀から14世紀にかけての古いドイツ語で、「毛深い、毛皮のような」を意味する形容詞 rûch (ルフ)に「夜」を意味する名詞Nacht(ナハト)の複数形 Nächte(ネヒテ)が組み合わせられたものです。

毛皮が出てくるのは、けだものの姿をした悪魔がこの時期に出現するからというゲルマンとケルトの伝統にそのルーツがあるからです。

語源のまた別の説としては、後述するように、英語のフランキンセンス(乳香)を意味するドイツ語Weihrauch(ヴァイラウフ)から来ているというのもあります。

いずれにしろ、年末年始のこの12日間は、ローマ帝国が太陽歴であるユリウス暦(365日)を、東方諸国で使われていた太陰暦(354日)と調整しようとしたときの管理上の問題を解決するために、年末に「死んだ日々tote Tage」として扱われた日々だということです。

欧州の十二夜

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フランスでは、1月6日のエピファニー(公現祭)の日に、Galette des rois ガレット・デ・ロワと呼ばれるお菓子を食べる風習がありますね。

このガレット・デ・ロワに似たお菓子は、英国にもあるそうです。 Twelfth night cake トゥエルフス・ナイト・ケーキ(または King Cake)と呼ばれ、ドライフルーツがぎっしりと詰まったどっしりとしたケーキです。

また、一部の英語圏の国々での迷信は、十二夜の後までクリスマスの飾りをぶら下げたままにしておくのは不運を呼ぶ、と言われているそうです。

英国の劇作家ウィリアム・シェイクスピアの『十二夜』は、まさにこの年末年始の時期のための娯楽として演じられるようになったものです。

©️1859 / Malvolio and the Countess

十二夜はマインドフルネスに最適な時間

©️pixabay_laurajuarez

ドイツでも、十二夜を祝うために、古くからいろいろな儀式が行われてきました。

古いものもあれば、最近のものもありますが、それらにはすべて共通点があります。いずれもマインドフルネスにフォーカスされている点です。

„Rauhnacht“という言葉の別の由来は、司祭が農家の厩舎を、乳香の聖なる煙で燻煙した伝統的行事に基づくというもので、ここから、燻煙の儀式とともにベルをならし祈りをささげる時、という二義的な解釈もされています。

祈りを捧げる、すなわち熟考をする機会になります。 そんな時期にぴったりのふたつの風習をご案内します。

十二夜のオラクル「ブライギーセン(Bleigießen)」

©️Attribution: Micha L. Rieser

  • ブライギーセン・セット(Bleigießen-Set)
  • 鉛を溶かす(Vorgang des Schmelzens)
  • 冷えてできた鉛の形(Das erstarrte Stück Blei)

オラクルとは、預言や神託、神の言葉などを意味しますが、ドイツでは大晦日の夜に、Bleigießen(ブライギーセン)と言って、鉛の小さな塊を、スプーンに入れ、ろうそくの火で溶かしたものを水に落としてできあがった形で新年の命運を占う遊びがあります。

「ちょっと待って、鉛の形を見てもその意味がわかりません!」

という方、ご安心を。スーパーなどで売っているブライギーセン・セットには、ちゃんとどんな形がどんな意味を持つのかが書いてありますので、それを見てください。

十二夜のオラクル「13の願い ―ドライツェン・ヴンシェ(13 Wünsche)」

私たちに、自分の人生について今一度考えさせ、将来を前向きに見させてくれる、もう一つの心温まる習慣があります。

ドライツェン・ヴンシェ(13の願い)」と呼ばれるこの風習は、普段忙しく、自分が本当に何を望んでいるのか考える暇がない人にも、その機会を与えてくれます。

ドライツェン・ヴンシェに必要なもの

  • 13枚の紙*
  • お好みの容器(ボウル、紙の箱、ガラス瓶など)
  • キャンドル(十二夜の儀式にのみ使うもの)
  • お好みの香

*お子さんの学校用のノートの切れ端でも大丈夫ですが、できれば少し厚地の天然紙、または素敵なクラフト紙などを使うと気分が上がります*

ドライツェン・ヴンシェのやり方

1.12月24日までに、13枚の紙にそれぞれ願いを一つずつ書きます。

その時に注意してほしいことは、「あなた自身の願いを書く」ということです。 あなたのお子さんやご両親、お友達や飼い犬のための願いは書かないようにしてください。

また、願い事は肯定的な表現を使い、いくつかのルールがあります。

  • 「嫌なことが起こらない」というのはダメですので、「いいことが起こる」と書くようにしましょう。
  • 「~になりますように」という表現はしないで、「~になる」と言い切り型で書きましょう。
  • それぞれの願いは、ちょっとがんばれば、1年以内に実現可能なものであることも大切です。

2.13枚の願いが書けたら、これらを中身が見えないように折りたたみ、お好みの容器に入れます。

3.12月25日から、毎晩一枚ずつ願いを書いた紙を取り出し、折りたたんだ状態のまま(つまり、中身は確認しない)、蠟燭の火で燃やします。

こうすることで、あなたの願いをこの世界の固体オブジェクトから、純粋なエネルギーに変換し、宇宙に渡すことができます。

火を扱いますので、火事にならないように十分気を付け、安全な場所で行ってください。 また、容器から紙を取り出す前に、お好みの香を焚いて瞑想するなどして、気持ちを落ち着けるのは、とてもよい効果があります。

4.1月5日まで毎晩これを続けてください。

毎晩やるのが難しい場合は、一晩に最大3つまで同時に燃やしてもOKです。

5.最後に残った1枚がかなえられるべき望み

そうすると、1月6日には13番目の願いが残っています。これは燃やさないで、紙を拡げ、中身を読んでください。それがあなたの新年の願いですので、これが実現するように全力を尽くしてください。

いかがでしたか? 一年でも寒く、暗いこの時期ですが、希望をもって過ごしたいですね。

みなさま、楽しいクリスマスと新年をお迎えください。

 




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