イエス・キリストの受難の物語を題材とする宗教劇の一種として、世界各地で催されるキリスト受難劇。その開幕直前になり、動物愛護協会からの物言いがつき、キリストがロバの代わりにEスクーターに乗ってエルサレムに入城することになることに!?
ミュンヘン郊外の街オーバーアマガウで、10年に一度開催されているキリスト受難劇(Passionsspiele、パシオンスシュピーレ)。
伝統的に、オーバーアマガウの村人たちがキャストを務める、地元総出のお祭りのような意味合いも持っています。
本来ならば2020年に開催されるはずだった受難劇ですが、コロナ禍のため2022年に延期されました。 5月14日から10月2日の間に、ほぼ毎日2回、2時間半かけて、受難劇専用の劇場パッションテアター(Passionstheater、パシオンステアター)で上演される劇では、おもにイエスのエルサレム入城から裁判、十字架上の死、さらには復活と昇天が描かれます。
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問題になったのは、エルサレム入城のシーン
オーバーアマガウのキリスト受難劇では、これまで数種類の動物が劇中に登場していました。動物保護団体PETAがこれに抗議しました。
特に問題になったのは、イエスがロバに乗ってエルサレムに入城するシーンです。
PETAは、キリストに扮する俳優がロバではなく、電動スクーターでエルサレムに移動することを要求しました。というのも、「ロバは生き物であり、輸送手段ではない」「ロバは俳優ではない」という理由からです。
ロバだけでなくヒツジ、ヤギ、ハト、ウマ、ラクダもダメ?
受難劇には他にも、
- 数匹のヒツジやヤギ
- 数羽のハト
- 2頭のウマ
- 2頭のラクダ
が登場し、PETAはこれらの使用もしないように要請しました。
動物保護団体PETAとは?
動物の倫理的扱いを求める人々の会(People for the Ethical Treatment of Animals、略称PETA)は、アメリカ発祥の動物保護団体です。
1980年3月にバージニア州ノーフォークで創立され、アジア太平洋地域、イギリス、インド、オーストラリア、オランダ、ドイツ、フランスに支部があります。
有名人からの支持も多く、古くはフランス女優ブリジット・バルドー、近年ではポール・マッカートニーやライアン・ゴズリング、ホアキン・フェニックスなどがあげられます。
ドイツではシュトゥットガルトに支部があります。
オーバーアマガウのキリスト受難劇の歴史
オーバーアマガウでの受難劇の歴史は、ほぼ400年前に始まりました。
当時、ヨーロッパの多くの地域で疫病が猛威を振るい、オーバーアマガウでも例外ではありませんでした。
1633年、疫病による悲惨な出来事を終わらせるために、オーバーアマガウの人々は誓いを立てました。もうこれ以上誰もペストで死なないようにするために、10年ごとにキリストの苦しみと死を再現する劇を上演することを誓ったのです。
この誓いは、1634年のペンテコステに初めて果たされました。
爾来 18世紀半ばには、この受難劇の大きなパワーとカリスマ性に魅了されて、ドイツ各地からの観客がオーバーアマガウにやって来るようになりました。
劇にはなんと2000人以上の人々が参加しています。これにはキリストやマリア、ユダやピラトゥスなどを演じる俳優(上演期間が長いため、それぞれダブルキャストで演じられます)以外にも、100人以上のコーラス隊、55名のオーケストラ奏者、そして証明、舞台装置、小道具、チケット販売などの裏方までが含まれています。
オーバーアマガウのキリスト受難劇の情報は
2020 Passionsspiele Oberammergau→2022 | |
日時 | 2022年5月14日~10月2日公演日 火、木、金、土、日公演時間 5月14日~8月14日 第一部:14:30~17:00 第二部:20:00〜22:308月15日~10月2日 第一部:13:30~16:00 第二部:19:00~21:30 |
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場所 | Passionstheater, Oberammergau |
詳細 | 詳しくはウエブサイトをご覧ください。 www.passionsspiele-oberammergau.de(ドイツ語) 公式英語サイト(英語) |