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なぜ家電のEUエネルギー効率ラベルからA+++は消え「A~G」になったのか?ドイツとEUの最新省エネ事情

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ドイツの家電量販店に行くと、緑から赤まで色分けされた「A~G」のラベルが付いているのを目にします。これは「EUエネルギーラベル(EU-Energielabel)」と呼ばれ、家電がどれくらい効率よくエネルギーを使うのかを、消費者が比較できるようにするための表示です。

一見すると「Aなら省エネ、Gなら電気をたくさん使う」という単純な仕組みに見えます。しかし、よく見ると消費電力量や水の使用量、騒音、QRコードなど、さまざまな情報が記載されています。

しかも、以前の家電には「A+」「A++」「A+++」という表示もありました。それが、なぜ現在はA~Gに戻ったのでしょうか。2026年現在の最新の移行状況と、ドイツの家電売り場で目にするエネルギーラベルを入口に、EUとドイツの「省エネ」の仕組みをご説明します。

ドイツの家電売り場で必ず目にする「A~G」の表示

© European Union, 2023 |Energy Labelling, Stockshots, Reference, https://audiovisual.ec.europa.eu/en/video/I-201387 Duration : 00:03:01

EUエネルギーラベルは、消費者が製品のエネルギー効率を比較しやすくするための共通表示です。

現在、多くの対象製品では、

A=エネルギー効率が高い
G=エネルギー効率が低い

という7段階で表示されています。

たとえば冷蔵庫や冷凍庫、洗濯機では、2021年3月から、照明も2021年9月から、衣類乾燥機は2025年7月から、それまでのA+++~DからA~Gの新しい表示が使われています。

そして2025年6月からは、スマートフォンやタブレットにもエネルギーラベルが導入されました。

スマホとタブレットのエネルギーラベル

スマートフォン・タブレットのエネルギーラベル

新しく導入されたスマートフォンのエネルギーラベル画像:出典・画像提供: Bundesministerium für Wirtschaft und Energie (BMWE)

スマートフォンとタブレットのラベルは少しユニークです。エネルギー効率だけでなく、

  • 1回の充電でバッテリーがどのくらい持つか
  • バッテリーの耐久性
  • 落下への耐久性
  • 修理のしやすさ
  • 防塵・防水性能

なども表示されています。

つまりEUのラベルは、単に「電気をたくさん使うか、使わないか」を示すものから、製品をどのくらい長く使えるのかまで考える仕組みへと広がりつつあります。

「Aだから省エネ」だけじゃない エネルギーラベルの読み方

エネルギーラベルを見ると、どうしても大きく表示された「A」「B」「C」といった文字に目が行きます。しかし、本当に注目したいのは、その下にある数字です。

たとえば洗濯機のラベルには、

  • 100回運転した場合の消費電力量(kWh)
  • 1回あたりの水使用量
  • 洗濯容量
  • プログラムの所要時間
  • 脱水時の騒音

などが表示されています。

ここで大事なのが消費電力量(kWh)の表示で、一定条件でどれだけ電気を使うかを表しており、実際の電気代を考える際にも役立ちます。

たとえば、同じAクラスの製品でも、容量やサイズ、使い方によって実際の消費電力量は異なります。

そのため、「Aだから省エネ」と単純に判断するのではなく、

「この製品を、自分の家庭で使ったらどのくらい電気を使うのか?」

を見ることが大切です。

QRコードを読み取ると、さらに詳しい情報が

現在のエネルギーラベルにはQRコードも付いています。

スマートフォンで読み取ると、EUが運営する製品データベースEPREL(European Product Registry for Energy Labelling)にアクセスできます。

ここでは、製品のエネルギー効率や消費電力量、水使用量など、ラベルだけでは分からない詳しい情報を確認できます。

つまり家電を購入するとき、

「AかBかを見る」→「消費電力量を見る」→「QRコードから詳細を調べる」

というところまでできるようになっているのです。

なぜ「A+++」が消えた? エネルギーラベルの変化

ドイツの家電に表示されていたもともとのエネルギーラベルはA~Gでした。

ところが家電の省エネ性能が向上すると、多くの商品がAクラスに入るようになります。

そこで、より効率の高い製品を区別するため、

A+ → A++ → A+++

というクラスが追加されていきました。

しかし、ここで別の問題が起きます。店頭に並ぶ商品の多くがA以上になってしまい、消費者にとって違いが分かりにくくなってしまったのです。

そこでEUはラベルを再び、

A・B・C・D・E・F・G

というシンプルな7段階へ戻すことにしました。

2021年3月、まず冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機、食器洗い機、テレビなどで新しいラベルが導入され、その後ほかの製品にも順次広がっています。(*衣類乾燥機(A〜Gへの移行は2025年〜2026年末にかけて段階的に進行中)、オーブン および レンジフード、暖房器具、給湯器、および エアコン(ルームエアコン)は2026年現在もプラスクラスを継続使用中)

面白いのは、変更当初、最高ランクのAを簡単には与えないように設計されたことです。

これは、今ある製品を単純に「A」に並べるのではなく、今後さらに省エネ性能が向上するための余地を残すという考え方によるもの。

つまりA+++がなくなったのは、省エネが後退したからではありません。むしろ、

家電の省エネ性能が向上した結果、評価する「ものさし」のほうを作り直す必要が生じた

というわけです。

家電だけじゃない ドイツの「省エネ」は暮らし全体にある

ドイツでエネルギー効率が重視されているのは、家電だけではありません。とくに重要なのが住宅です。

ドイツで住宅を売買したり貸したりするときに目にするのが、Energieausweis(エネルギー証明書)です。

建物がどの程度エネルギーを必要とするのかを示すもので、住宅のエネルギー性能を判断する材料になります。

住宅では、

  • 壁や屋根の断熱
  • 窓
  • 暖房
  • 給湯
  • 太陽光発電などの再生可能エネルギー

といった要素が、エネルギー消費に大きく影響します。

EUの家庭で使用されるエネルギーのおよそ80%は、暖房・冷房・給湯によるものとされています。

つまり家庭のエネルギー消費を減らそうと思えば、冷蔵庫を省エネ型に買い替えるだけでは十分ではありません。

「どんな家電を使うか」と「どんな家に住むか」の両方を見る必要があるのです。

ドイツでは住宅の断熱改修や暖房設備の更新などに対する支援制度も設けられており、2026年7月には建物向けの連邦支援制度(BEG)も改定されました。

家電から住宅まで、エネルギー効率を暮らし全体で考える仕組みが作られているのです。

省エネ家電を選べば、本当にお得?

エネルギー効率の高い家電には、環境に優しいというイメージがあります。しかし消費者にとって気になるのは、「結局、どちらがお得なの?」ということではないでしょうか。

たとえば、同じ大きさの冷蔵庫が2台あるとします。

  • Aクラスの製品は価格が高いけれど、年間の消費電力量が少ない
  • Dクラスの製品は安いけれど、毎年使う電気は多い

この場合、本体価格だけを見ればDクラスのほうが安くても、10年間使えば電気代の差によって結果が変わる可能性があります。

たとえば、年間消費電力量に100kWhの差があり、電気料金を1kWhあたり0.35ユーロと仮定すると、

100kWh × 0.35ユーロ=年間35ユーロ

10年間なら、単純計算で350ユーロの差になります。

(実際の電気料金は契約や時期によって変わりますし、実際の消費電力量も使い方によって異なります。)

また、効率クラスが高ければ必ず「総額で一番安い」とも限りません。

大切なのは、

購入価格 + 使っている間のエネルギーコスト

で考えることです。

そして、まだ問題なく使える家電を「省エネだから」という理由だけですぐに買い替えるのが、環境面で最善とは限りません。

製品を製造するためにも資源やエネルギーが必要だからです。

その意味でも、EUが最近重視している「修理しやすさ」や「長く使えること」は、省エネと切り離せないテーマになっています。

「省エネ」は環境対策だけじゃない ドイツとEUが目指すもの

では、なぜEUやドイツはここまでエネルギー効率を重視しているのでしょうか。

もちろん理由の一つは気候変動対策です。エネルギー消費を減らせば、温室効果ガスの排出削減につながります。

しかし、それだけではありません。

EUは現在、2030年までに最終エネルギー消費を、2020年に想定されていた2030年の水準と比べて少なくとも11.7%削減する目標を掲げています。

その背景には、

  • エネルギー価格を抑えること
  • 化石燃料の輸入への依存を減らすこと
  • エネルギー供給を安定させること
  • 企業の競争力を高めること

といった目的もあります。

特にロシアによるウクライナ侵攻以降、EUではロシア産化石燃料への依存を減らすことが重要な政策課題となりました。

そこで重視されている考え方が、「Energy Efficiency First(エネルギー効率第一)」です。

必要なエネルギーをどう供給するかだけではなく、

そもそも、使うエネルギーそのものを減らせないか?

と第一に考えるという意味です。

さらに近年、EUの政策は「使う電気を減らす」だけではなくなっています。

2024年に発効した「持続可能な製品のためのエコデザイン規則」では、

  • エネルギー消費が少ない
  • 長く使える
  • 修理しやすい
  • 部品を再利用しやすい
  • リサイクルしやすい
  • 製品のライフサイクル全体で環境負荷が小さい

といった考え方が重視されています。

「A~G」のラベルが持つ本当の意味は

つまり、ドイツの家電売り場で見かける小さな「A~G」のラベルは、単なる省エネ家電のランキングではありません。

どれだけエネルギーを使うのか?
どれだけ長く使えるのか?
そして、その製品を選ぶことが将来のエネルギー消費にどうつながるのか?

消費者がそうしたことを考えて商品を選べるようにする「ものさし」の一つなのです。

ドイツの家電売り場でA~Gのラベルを見かけたら、大きなアルファベットだけでなく、その下に並んでいる数字やQRコードにも目を向けてみてください。

そこから、EUとドイツが進める「省エネ」の考え方が少し見えてくるかもしれません。


出典・参考になるリンク

Umwelt Bundesamt “ Energieverbrauchskennzeichnung[↗]”
Verbraucherzentrale – Energielabels[↗︎]  今と以前のエネルギーラベルの違いを説明する動画あり(ドイツ語)
Europäsche Kommision “ Klima- und energiepolitischer Rahmen bis 2030[↗]”
Distatis “ Europäischer Green Deal: Klimaneutralität bis 2050[↗]”

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