ドイツは、日本の有効なパスポートを持っていれば90日以内の短期滞在についてはビザ(査証)が不要な国です。この日本・ドイツ間の査証免除取極により、留学・就労・ワーキングホリデーなど長期滞在を目的とした渡航であっても、ドイツ入国後にビザを申請・取得すればそのまま住み続けることができるようになっています。
ビザ取得にあたって、ドイツ入国後まずやらなければならないのが住民登録(Anmeldung)。今回はこの住民登録をはじめ、ドイツに住み始める時、また、滞在を終了して日本に本帰国する時や他国に引っ越す時に必要な諸手続きについて解説します。
ビザ申請だけでなく、銀行口座の開設や健康保険・インターネット・携帯電話などの各種契約には住民登録証明証(Meldebescheinigung)が必要になります。住民登録は住所が定まっていないとできないので、ドイツ到着後、まずクリアすべき課題は家探しです。
日本のパスポートでの滞在期限90日以内に住所を定めて役場での手続きを済ませなければなりませんが、物件供給が不足気味のドイツでは、家探しにとても時間がかかるのが実情です。渡航後の家探しに不安がある場合は、日本出国前にインターネットであらかじめ物件探しや内見予約を行ったり、一時滞在先を見つけておくと安心です。コロナ禍により、オンライン内覧会など遠隔で物件を見られるサービスを提供する貸主も増えています。
住所が定まったら、居住地の管轄役場で住民登録を申請します。役場での手続きには電話やオンラインでの事前予約が必要で、直接出向いても取り合ってもらえないので注意しましょう。登録の期限は、住民登録法第17条(Bundesmeldegesetz-BMG §17)で2週間以内と規定されています。
【登録期限】入居後2週間以内
【登録先】住民登録局(Einwohnermeldeamt / Meldebehörde)、市民局(Bürgeramt)、市町村役場(Rathaus)のいずれか(居住地域によって異なる)
【必要書類】
住民登録証明証が発行されたら、銀行口座の開設を行います。ドイツ国内の登録住所がなくても開設できる口座(Basiskonto)も存在しますが、サービス内容は魅力的ではなく、普通口座が開設できない場合に止むを得ず選ぶ位置付けのものになります。
ドイツの銀行には店舗型(Filialbank)とネット銀行(Direktbank)がありますが、サービス内容はもちろん銀行によって異なるので、口座維持手数料やATMのある場所、アプリの使い勝手など、自分のライフスタイルに合っているかを比較検討することをオススメします。
【店舗型の大手銀行(一例)】
【ネット銀行(一例)】
【必要書類】
学生ビザ、ワーキングホリデービザが必要な場合、ドイツ入国時点で有効な健康保険・医療保険へ加入していることが必須条件になります。就労・研修・研究滞在ビザ、配偶者ビザ、家族帯同ビザの場合は、ドイツ入国後に加入申請が可能です。ドイツは日本と同じく国民皆保険制度を持っており、被雇用者は原則的に公的健康保険への加入が義務付けられています(年収64,350ユーロ以上になると公的健康保険への加入義務が解かれ、民間健康保険加入資格が与えられる:2022年現在)。各社のウェブサイトからダウンロードした加入申込書(Mitgliedschaftsantrag)に記入し申請します。
【保険加入が必須条件のビザ】
90日を超える滞在にはビザ=長期滞在許可(Aufenthaltserlaubnis)が必要です。ビザを持たずにドイツに住み続けると不法滞在になります。また、ドイツには身分証明義務(Ausweispflicht)があるので、長期滞在許可証(Aufenthaltzettel)は常に携帯するようにしましょう。
【申請先】居住地管轄の外国人局(Ausländerbehörde)
【必要書類】
※ドイツでは2010年11月から、ID・パスポート・免許証・滞在許可証など正式な証明証に生体認証の条件に合致した写真(Biometorisches Passbild)を使用することが義務化されている
ドイツでは、EU加盟国/欧州経済領域(Europäischen Wirtschaftsraumes (EWR) )/スイス、いずれかの国籍保持者、また難民認定されている人は労働許可不要で仕事ができます。日本を含むそれ以外の国は「第三国」として、労働許可(Arbeitserlaubnis)が付与された滞在許可証が必要です。労働許可は、ビザ申請の際に外国人局で一緒に申請できます。
3ヶ月以上海外に滞在する日本人には、居住地管轄の在外公館(在ドイツ日本国大使館・領事館)に在留届を提出する義務があります。在留届が出されていないと、災害・事件・事故の時に安否確認や日本の家族への連絡ができないなどの不都合が生じるので必ず行いましょう。
日本に本帰国などでドイツ国外に引っ越すことが決まったら、必ず転出を届け出ます(Abmeldung)。これを怠るとドイツ国内での納税義務が続く他、届出期間を過ぎると罰金が課される場合もありますので注意しましょう。転出手続きができる期間は、住民登録法第17条により、転出の1週間前〜転出後2週間以内と定められています。
届出先は住民登録時と同様ですが、自治体によっては役場に出向かずとも郵便・メール・ファックス・オンラインで手続き可能です。また、同居の家族やパートナーは1枚の転出届で申請できます。手続き完了までは1ヶ月程度かかる場合もあります。
【届出先】住民登録時と同様
【必要書類】
また同時に、在外公館への帰国・引っ越し連絡も忘れず行うようにしてください。
・労働組合(Gewerkschaft)に住所変更を申請
今後ドイツに再居住する可能性がある場合は会員で居続けることも可能。
・税務署(Finanzamt)に住所変更を申請
今後ドイツに再居住予定がない場合は、税金番号(Steueridentifikationsnummer)を停止する。必要な場合は確定申告を行う。
・健康保険(Krankenkasse)を解約
重要な書類は請求しておくことを忘れずに。
・賃貸契約を解約
契約終了希望日の3ヶ月前までに書面で解約を申告する。
・銀行口座を閉鎖
忘れると口座維持手数料が取られ続けるので注意。
・携帯・インターネット契約を解約
・(子供がいる場合)家族手当(Familiengeld)や児童手当(Kindergeld)の停止手続き
青年局(Jugendamt)に申請する。
・(子供がいる場合)保育施設(Kita)や学校への通知
引っ越し先の保育施設や学校で必要となる書類の受け取りを忘れずに。
【参考資料】