ドイツの3月も、まだまだ寒さが続きます。20度近い温かい気温の日があったかと思うと、翌日にはまたマイナスの気温に逆戻りしたりすることもまれではありません。それでも雪の合間にクロッカスが咲きだしているのを見ると、春の訪れを感じます。
3月をテーマにした農家の言葉
1年の3番目の月である3月は、ドイツ語では「メアツ(März)」と呼ばれます。これは、ローマ神話の戦神マース(Mars)にちなんで名づけられました。
また、3月は古いドイツ語では、「レンツ(Lenz)」または「レンツィング(Lenzing)」「レンツモント(Lenzmont)」と呼ばれていたということですが、いずれも単語の最初の部分は「長い」を意味します。
つまり「日が長くなる月」であり、春の始まりの月にふさわしい名前ですね。
1928年から35年にかけて、ドイツで人気を博したベルリン発の6人組の男性ボーカルアンサンブルの「コメディアン・ハーモニスツ(Comedy Harmonists)」のヒット曲の中にも、「ヴェロニカ、デア・レンツ・イスト・ダー Veronika, der Lenz ist da(ヴェロニカ、3月が来たよ)」という軽快なフォックストロットのリズムの曲があります。
ドイツの3月の一日の平均日照時間は3.6時間となり、空気を暖めます。 しかし、それは3月に穏やかな春の天気になるという意味ではありません。
それどころか、雪と霜による冬の再発も珍しいことではありません。高気圧の位置によっては北風が発生し、冷たい極地の空気がドイツまで流れてくる可能性があります。
その結果、平野部まで雪が降ることもあり得ます。それでも高気圧が来ていれば、日中の天気は晴れて気持ちよく、本当に春のように感じられます。
そんな3月の農家の言葉を見てみましょう。
Märzenstaub und Mäerzenwind, guten Sommers Vorboten sind.
カタカナ発音: メアツェンシュタウプ・ウント・メアツェンウインド、グーテン・ゾマース・フォアボーテン・ジント。
直訳: 3月の埃と3月の風、良い夏の前触れ。
説明: 3月に埃が舞うほど風が強く吹く年は、良い夏が来るということを意味しています。
「風」という意味のドイツ語「ウィンド(Wind)」と、英語のBe動詞にあたるドイツ語の動詞「ザイン(sein)」の一人称複数形「ジント(sind)」が韻を踏んでいます。
An Vierzigritter kalter Wind, noch vierzig Tage windig sind.
カタカナ発音: アン・フィアツィヒリッター・カルタ―・ウィンド、ノッホ・フィアツィヒ・ターゲ・ウィンディッヒ・ジント。
直訳: 40人の騎士に冷たい風が吹くと、さらに40日は風が強い。
説明:3月10日はセバステの40人の殉教者の日です。
伝説によると今から1800年ほど前のこの日、小アルメニアのセバステで、トルコのリシニウス皇帝によるキリスト教徒の迫害の過程で、40人の兵士が凍死させられたということです。
「風」という意味のドイツ語「ウィンド(Wind)」と、英語のBe動詞にあたるドイツ語の動詞「ザイン(sein)」の一人称複数形「ジント(sind)」が韻を踏んでいます。
Sieht Sankt Gertrud Eis, wird das ganze Jahr nicht heiß.
カタカナ発音: ジート・ザンクト・ゲアトルート・アイス、ヴィルド・ダス・ガンツェ・ヤー・ニヒト・ハイス。
直訳: 聖ゲアトルートが氷を見ると、一年中暑くならない。
説明:3月17日は、ニヴェレスのゲルトルート(626年~664年)の日です。
初代神聖ローマ皇帝のカール大帝とも親戚関係にあったゲアトルートは、14歳のときに母親によって設立されたニヴェレスの修道院に入り、貧しい人々や病気の人々に貢献しました。
自らも深い学問を修め、女子も聖典を読むべきであると提唱した彼女は、旅の途上にある人々、ことにアイルランドからの巡礼僧のために病院を建てたりしたことから、「街道の聖女」として知られるようになったということです。
「氷」という意味のドイツ語の名詞「アイス(Eis)」と、「暑い」という意味のドイツ語の形容詞「ハイス(heiß)」が韻を踏んでいます。