モーツアルトの生誕地としても有名なザルツブルクから、車で1時間半ほどのバート・ガシュタイン。ここは世界で初めてラドン線の効果が発見され、王侯貴族や文化人の保養地として有名になりました。アルプスの麓にある高級温泉リゾートの魅力を探ります。
オーストリア ガシュタイン渓谷
西はフランスに始まり、スイス、リヒテンシュタイン、イタリア、ドイツ、オーストリア、そしてスロベニアにまたがるヨーロッパ・アルプス。
その東方、モーツアルトの生誕地としても有名なザルツブルクからもほど近いところに、3千メートル級の山並みがつらなるホーエタウエルン (Hohe Tauern)という高山地域があります。
長さ約120キロメートル、海抜は一番高いところで3798メートル。
この地域の中心にはホーエタウエルン国立公園があり、1836km²の広さは、オーストリアの6つの国立公園の中で最大であり、アルプスでも最大です。
このガシュタイン渓谷はさらに、壮大な山々を背景に豪華な高級ホテルが並ぶバート・ガシュタイン (Bad Gastein)、ラドン浴ができる洞窟ハイルシュトレン(Heilstollen)があるベックシュタイン (Böckstein)、そして、落ち着いた保養地バート・ホーフガシュタイン (Bad Hofgastein)に分けられます。
「ガシュタイン Gastein」という名前は、2つのインド-ヨーロッパ語のルーツに由来し、「灰色の川」または「噴霧する川」を意味するようです。
バート・ガシュタイン (Bad Gastein)
このタウエルン・アルプスの奥深くに、高級温泉リゾートであるバート・ガシュタインがあります。
ここは、世界で初めてラドン線の効果が発見された場所で、古くからたくさんの王侯貴族や文化人が保養に訪れています。
今から3000年以上前に、タウエルン・アルプスの地中深くにしみこんだ雨水が、ガシュタインの温泉水として地表に湧き出し、四肢の痛み、呼吸器系疾患、リューマチなどの病気を癒すとともに活力を与えてくれるといわれています。
バート・ガシュタインの人口は、2019年1月1日現在で3千990人。いまでは温泉だけでなく、スパとスポーツも楽しめるリゾート地です。
豊かな自然のもとで、冬はスキーやスノーボードなどのウインタースポーツが楽しめ、夏にはハイキング、サイクリング、ゴルフ、テニスができるスポーツ・パラダイスとなります。
スポーツで汗を流したら、温泉でリラックスできる、最高のロケーションですね。
ベックシュタイン(Böckstein)
ベックシュタインは、バート・ガシュタインの後方にあり、ラドハウスベルク(Radhausberg)山塊の麓に位置します。ここで渓谷が、スポートガシュタインSportgastein(旧地名: ナスフェルトNaßfeld)方面のナスフェルダ―渓谷(Naßfelder Tal)と、アンラウフタール渓谷(Anlauftal)に分かれています。
学際的な研究プロジェクトにより、古代のローマ人がすでに、この谷を通るローマ街道を築いていたことがわかり、遺跡もみつかっているそうです。
ベックシュタインからは、ハイルシュトレン・シュトラーセという道が出ており、これはナスフェルド渓谷から、後述のガスタイナー・ハイルシュトレンへと続く道です。
この旧鉱山の町は、鉱山博物館と、ヒエロニムス坑道を伴った海抜1900mにあるラドハウスベルク鉱山(Rammelsberg Mine)もよく知られています。
バート・ホーフガシュタイン(Bad Hofgastein)
バート・ホーフガシュタインは、人口6888人(2019年1月1日現在)で、中世13世紀のころから定期的な市場を開催する権利を持つ自治体で、その歴史はローマ時代にさかのぼります。なぜなら、この地には、銀と金の採掘場があったからです。
バート・ホーフガシュタインは渓谷の最も幅の広い部分にあり、そのため、集落もガシュタインの中の主要な町になりました。 ここには、谷の最初の教区と、ガシュタイン地方の法廷(ドイツ語でGerichtshofゲリヒツホーフ)もありました。このことから、村の名前がホーフ・イン・デア・ガシュタイン(Hof in der Gasstein)となり、後にホーフガシュタイン(Hofgastein)となったそうです。
中世の時代では、ホーフガシュタインは、イタリアとドイツの間の交易の中心地でした。 ローマ人によって開発された道を利用して、南方のフルーツやワイン、その他の製品がこの山の谷の村に運ばれて来て、金と銀と交換されました。
現在ではこの地も、スパとスポーツが楽しめる土地です。
バート・ホーフガスタインはずっと以前から町を挙げて「環境保護」を実施してきました。交通騒音を減らすにため、バート・ホーフガスタインは今では多くの観光地にとって模範となるような市内交通のコンセプトを達成しています。自家用車の通行は市の中心から 完全に閉め出され、環境にやさしい専用バスが市内の主要な交通手段となっています。鉄道でこの町に到着する場合は、宿からの迎えのバスがきます。
市の中心部は歩行者ゾーンとなっており、ショッピングや喫茶店のテラスでの談笑が楽しめます。そして、歩行者天国では古い伝統を誇る市のオーケストラによる演奏会をはじめ、数々の魅力的な文化行事が行われます。
ラドン温泉の効用
ラドン温泉とは、身近な気体で放射性の元素であるラドンを多く含む温泉であり、日本でも古今東西・老若男女に健康長寿の湯などとして親しまれています。
新陳代謝が活発になり、カラダの酸化を防いでくれるため、老化予防の効果があるというラドン温泉。肌などの老化も防いでくれるということで、アンチエイジング効果、美肌効果などが期待されます。
ガスタイナー・ハイルシュトレン(Gasteiner Heilstollen)
オーストリア、ガシュタイン渓谷には、世界的にも有名なラドン治療温泉を併設する「ガシュタイナー・ハイルシュトレン」という場所があります。
「ガシュタイナー」は、「ガシュタインの」という意味で、「ハイル」は、「治癒する」という意味の動詞「ハイレン(heilen)」から来ており、「シュトレン(stollen)」は「坑道」という意味ですので、「ガシュタインの治癒坑道」といった意味合いになります。日本語では、「治療洞窟」と呼ばれることもあります。
さて、このガシュタイナー・ハイルシュトレンは、ラドン温泉学の一部としてリウマチ性疾患を自然の力でサポートすると言われています。
中世には、ガシュタイン温泉に治癒力があることが遠くまで知れ渡り、当時の原始的な入浴施設と宿泊施設にもかかわらず、各国の君主や君主たちは、温泉まで長い道のりを、困難を乗り越えて旅をしました。
19世紀当初、湯治治療の効果を上げるためには、6週間という長い滞在期間が必要でした。入浴施設は共同バスルームがあり、湯治客は朝食とボードゲームで暇をつぶしながら滞在したそうです。
この世界でも珍しいラドンの力による治療洞窟ハイルシュトレンは、バート・ガシュタインから車で15分ほど山を登ったベックシュタインにあります。
そこは岩盤浴発祥の地と言われており、現地ではオーストリアとドイツの健康保険が適用されるほど、正規の治療行為として信頼されています。
金鉱跡を利用した坑道の内部は、温度37.0度~41.5度、湿度70~100%に保たれ、空気1立方メートルあたり、44キロベクレルのラドンが計測されるそうです。
この温度と湿度、そしてラドンの3つの要素の組み合わせが、ガシュタイナー・ハイルシュトレンを世界で唯一の治療環境として有名にしたということです。
ガシュタイナー・ハイルシュトレンの営業時間
営業時間 | |
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2020年 | 1月7日(火)〜12月15日(火) 月~土曜日(日曜定休) |
2021年 | 1月11日(月)〜11月26日(金) 月~土曜日(日曜定休) |
開館時間 | |
時間 | 月曜〜金曜の午前8時〜午後5時まで 土曜日の午前8時〜正午まで |
そのほかの閉館日 | イースターの祝日、5月1日、ペントコストの祝日 8月15日、10月26日、11月1日 |
コンタクト HP | https://www.gasteiner-heilstollen.com/ja/ |
ガシュタイン渓谷での宿泊
ガシュタイン渓谷には、素朴な山小屋、ゲストハウス、アパートメント、すべてのカテゴリのホテルなど、シンプルでカジュアルなものから、ラグジュアリークラスのものまで、さまざまな宿泊設備を選ぶことができます。以下のサイトでご覧ください。
https://www.gasteinertal.com/hotels/
自分たちだけの高原レストランを満喫することも可能です。
バート・ガシュタインへのアクセス方法
車またはバスでの行き方
ミュンヘンから車の場合、ザルツブルク経由での所要時間はおよそ2時間半。
ザルツブルクから車の場合
所要時間はおよそ1時間。
タウエルン高速道路(Tauernautobahn)を南方にビショッフスホーフェン(Bischofshofen)まで(出口はガシュタイン渓谷Gasteiner Tal)、国道167号線をガスタイン渓谷・ベックシュタイン(Gasteinertal – Böckstein)まで。
インスブルックから車の場合
所要時間はおよそ2時間。
高速道路でヴェルグル(Wörgl)を通り、国道312号線でローファー(Lofer)を通り、国道311号線でレント(Lend)まで、さらに国道167号線でガスタイン(Gastein)まで。
オーストリア南方(ケルンテンKärnten)から車の場合
フィラッハ(Villach)、オーバーフィラッハ(Obervellach)を通りマルニッツ(Mallnitz)へ。 そこからカートレイン(Autoschleuse)を利用して、ガスタイナー渓谷(Gasteiner Tal)へ。
電車での行き方
鉄道:バートガシュタインは20世紀初頭に鉄道に接続されました。雄大なガシュタイン渓谷の景観を楽しみながらの旅になります。
ユーロシティまたはユーロジェットが2時間ごとにガシュタイン渓谷にある3つの駅全てに停車します。
飛行機での行き方
飛行機利用の場合、最寄りの空港は、ザルツブルク(約100km)、ミュンヘン(約230km)、クラーゲンフルト(約125km)となります。
タクシーによるお迎え、および荷物の集配達をご利用ください。
現地での交通機関
地元の交通機関は、ザルツブルク交通協会内のバスによって確保されています。公共バス、スキーバス、市内バスを利用して、年間を通してストレスなく快適にガシュタイン渓谷を旅することができます。
地名の表記について
Gastein
日本国内では、ガスタインとも表記されることがありますが、当サイトでは、現地の発音に一番近い、ガシュタインで表記しています。
Bad Gastein
日本国内では、バドガシュタイン、バドガスタイン、バードガシュタイン、バードガスタイン、バートガシュタイン、バートガスタインなどさまざまな呼称がありますが、当サイトでは、現地の発音に一番近い、バート・ガシュタインで表記しています。
Heilstollen
日本国内では、ハイルシュトレン、ハイルシュトーレンが主な呼称になっておりますが、当サイトでは現地の発音に一番近い、ハイルシュトレンで表記しています。
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