(1)ドイツの大学院卒業資格はドイツ就職時に有利か?

ヨーロッパの中ではイギリスに次いで有名大学ラインキングに名を連ねるドイツの教育システム、グローバルな活躍を目指す日本人の人気留学先の一つとして人気です。さて、その教育システムの評価の高いドイツの大学院ですが、果たして日本人が留学する価値はどの程度あるのでしょうか?
今回は、ドイツへの大学院留学とドイツ就職、という切り口から解説をおこなっていきます。

ドイツの大学院入学のメリット・デメリット

大学院に行くルートとしてはいくつかのパターンがありますが、「学士を持っているけど修士を持っていない」状態で行くことがオーソドックスだと言えます。私の場合は日本で学士を得たのち、ドイツの類似学部で修士を得ました。

さて、ここで一つポイントとなるのが「そもそもドイツで大学院に行く意味はあるのか」という点です。個人的には、「卒業後ドイツ(ドイツ語圏)で就職するつもりがあるのなら」持っておくと3つの点でプラスであるという感想を持ちました。

ドイツの大学院入学のメリット

  1. ドイツ企業から内定が少し出やすくなる
  2. ドイツにおける永住権取得条件が少し緩和される
  3. 初任給や昇給に少し影響がある

恐らくこの中で一番インパクトが大きいのは「1」ではないかと思います。ドイツ企業の中には「修士持ち」を足切り要件に課している企業も少なくなく、学生インターンとして入り込み、そのまま正社員のポジションを得るという「ドイツ人の就職王道パターン」に乗りやすいと言えます。

「2」の永住権取得に関しては、大学院へ通っている年数が要件(5年の労働と納税)から差し引かれるというポイントがあるのですが、そもそも大学院などいかず初めから働けば最終的に永住権を得るまでの年数は変わらないので、実はそんなに大きなインパクトを持ちません。

「3」に関しても、修士を持っていると初任給が上がるのは事実ですが、その分2~3年キャリア開始が遅れるわけで、その2~3年分の昇給の遅れを取り戻せるレベルなのかというと微妙なところです。

ドイツの大学院入学のデメリット

さて、メリットと比較してデメリットはどのようなものでしょうか?

  1. 入学~卒業まで時間がかかる
  2. 卒業まで費用がかかる(主に生活費)
  3. 卒業できるとは限らない

私の中で特にデメリットだと感じたのは「1」の部分です。学部にもよりますが、ドイツ語要件を科している大学が多く、語学の認定資格の準備や書類準備などで、なんだかんだでを私の場合1年以上費やしました。

加えて、卒業までにプラス2~3年かかります。ストレートにいけば2年ですが、インターンや留学(エラスムス)などを挟むと卒業が遅れることもあり、2年+アルファは覚悟しておいたほうが良いかも知れません。そうすると、入学手続きから卒業まで全部で合計3~4年程度のロスとなり、働き盛りの20代~30代でのこの時間のロスは結構大きいものと感じられます。

「2」に関して、国立大学の学費はほぼ無料(図書館利用料やセメスターチケット代など別途多少はかかるが)ですが、単純にドイツで生きていくための生活費は当然のことながら用意しなくてはいけません。ドイツの物価水準を考えると、月15~20万円くらいは最低でも見ておいた方がよく、そうすると卒業までに200~500万円は必要でしょう。

「3」学部によって異なりますが、ドイツの大学院のドロップアウト率は2~3割程度と言われており、特に母国語をドイツ語としない外国人にとっての卒業のハードルは高いです。そのため、時間とお金を費やして入学しても、必ずしも卒業できる保証がないというリスクを抱えます。

結局大学院留学はアリ?無し?

さて、結局のところドイツ就職を目指すうえで、ドイツ大学院留学は理にかなった方法なのでしょうか?

大学院を卒業して現地就職した私の個人的感想ですが、感覚的に「しなくてもどうにかなったんじゃないか」という感は後からひしひしと感じました。もっとも、この辺りは学部や将来やりたいことなどで左右されるので、あくまで一個人の意見として捉えていただければと思います。

ドイツでの就職を念頭に置いた「留学無し」「ドイツ大学院留学」の比較

ドイツ留学無し ドイツ大学院留学アリ
初任給 +10~15%
卒業にかかる年数 なし 2~3年
卒業までにかかる学費 なし ほぼゼロ(国立なら)
卒業までにかかる生活費 なし 計200~500万円程度
卒業できないリスク なし 2~3割
永住ビザ取得までの労働年数 5年 3年(※在学年数が差し引かれる)
ドイツ企業からの内定の出やすさ スキルや実績のみでの勝負 少しプラス要素となる

例えば、ドイツの有名人材紹介会社Career Management社の調査では、ドイツで就職した日本人のうちほぼ9割以上が「日本の大学卒」で、ドイツを含む海外の大学や大学院を卒業した割合は1割以下という調査結果となっています。

ドイツで就職した日本人の出身大学

割合
日本の大学・大学院卒業 77.5%
ドイツの大学・大学院卒業 12.5%
その他の国の大学・大学院卒業 10%

(出典:Career Management ドイツ就職市場レポート 有効回答数=40)

そのため、学術的な目的ではなく、単に「ドイツでの就職」という目的達成のための手段として大学院入学を目指すのであれば、必ずしも時間とお金を投じてまで得るべきものではないかも知れません。




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