昨今ITエンジニアの不足が取りざたされていますが、ドイツでも状況は同様、特に優秀なITエンジニアは就職市場で引く手あまたの現状です。2024年の時点でドイツのIT人材は約15万人ほど不足している状態と言われており、今後もこの傾向は継続して続くことが予想されています。
本稿では、欧州各国のIT人材が集うドイツにおけるITエンジニアとしての就職チャンスと条件などについて解説をおこないます。
ドイツのITエンジニアの給料
数あるドイツの職種の中でも上位クラスの給与水準を誇るITエンジニア。ドイツ国内だけでなく中国や東欧、南米などからもエンジニアが集まるほどで、平均年収では約50,000€(800万円程度)、10年プレイヤーともなると60,000~70,000€の水準になってきます。
職歴によるITエンジニアの年収
職歴 | 年収 (EUR) |
---|---|
25年以上 | 73,000 |
11~25年 | 69,360 |
6~10年 | 68,000 |
3~5年 | 62,800 |
1~2年 | 43,000 |
学生/1年以下 | 33,600 |
(出典:Stepstoneを元に著者作成)
給与水準だけでなく、就職市場で高いプレゼンスを誇っており、特定技能者に支給されるブルーカード(※ITエンジニアの場合、通常の職より求められる給与の下限が下がる)や就労ビザが支給されやすい特徴を持っています。
ITエンジニアの仕事
一概にITエンジニアと言っても、その業務内容は多岐に及びます。アプリやソフトウェアの開発、維持に不可欠なソフトウェアエンジニアをはじめ、金融や通信業界で特に重宝されるサイバーセキュリティエンジニア、システムの中の特にUI/UX部分に特化したフロントエンドエンジニアなど、その特性や職能によって仕事は異なります。
- ソフトウェアエンジニア – Softwareingenieur
- システムエンジニア – Systemingenieur
- ネットワークエンジニア – Netzwerkingenieur
- データベース管理者 – Datenbankadministrator
- DevOpsエンジニア – DevOps-Ingenieur
- サイバーセキュリティスペシャリスト – Cyber-Sicherheitsspezialist
- フロントエンド開発者 – Frontend-Entwickler
- バックエンド開発者 – Backend-Entwickler
自身で一から設計を手掛ける現場よりの仕事もあれば、システム開発をプログラマーに依頼し、ダイレクションを手掛けるよりマネジメント寄りの業務も存在しており、規模が大きい開発案件になれば「インフラ」「データベース」「フロントエンド」「デザイナー」など複数のエンジニアが組み合わさってチームとして仕事をすることが多くなります。
そのため、個人的な能力は勿論のこと、プロジェクトで動く際のクラウドを用いた実務経験や、英語やドイツ語で会話をおこなえる語学力、コミュニケーション能力・チームワークなども求められることとなり、特にこのことは日本人のエンジニアがドイツで職を見つけることを困難にすることの理由の一つとされています。日系の在独企業がIT人材やポジションを募集していることも多く、その場合日本人であることの強みが活かせるでしょう。以下のような求人ページから探索することが可能です。
IT知識を活かせる求人が紹介されています。公開されていない場合もあるため、一度問い合わせをお勧めします。
ドイツでどのようにITエンジニアになれる?
ドイツの就職市場は原則的に「ジョブ型」採用であるため、大学・大学院での専攻内容がIT、情報分野であることは大きなアドバンテージとなります。最も、必ずしもIT系の勉強を大学で修めていなくても、最近では日本やその他の国でITエンジニアとして実績を3~5年以上身に着けていれば転職のチャンスは十分にあると言えるでしょう。
マストではないですが、その際に資格などがあるとアドバンテージになります。具体的にはAWS認定、Cisco資格、CompTIAなどで、サーバー構築やセキュリティ関連の需要が特に高いと言えます。
実績としては1)個人としての開発能力(データベースやインフラ、特定のプログラミング言語やフレームワーク等々)に加え2)チームとしての開発経験、が必要になることが多く、特に日本からドイツに転職を考える場合「ヨーロッパの会社やチームと仕事をした経験」はプラスに評価されることがあります。
未経験からもドイツでITエンジニアとして働ける?
ジョブ型社会のドイツは、「実務経験」がものをいう世界です。もっとも、未経験からでもドイツでITエンジニアとしてのキャリアをスタートする方法が無いわけではありません。
1)未経験かつCSの知識が無い場合
UdemyやCourseraなど、最近ではオンラインで受講できるIT関連のコースも増えているため、まずはこういった分野から知識を習得し、実際にプロジェクトに関わってみると良いでしょう。最初のポートフォリオは、無償でおこなったり、自身のプロトタイプとして作成することが多く、徐々に実績と自信を高めていくことになります。
また、ドイツの職業訓練でもIT系の講習は多く実施されており、再就職のきっかけになりやすいと言えます。そのため、前職を辞めたタイミングでこうした有給の職業訓練に応募してみるのもドイツならではの方法と言えるでしょう(※ただし、職業訓練受講には一定の条件を満たす必要がある)。
職業訓練に参加できない場合、有償で卒業後に進路サポートをしてくれる現地のIT学校などに通う方法もあります。ただ、そこそこの費用が掛かるうえ、在学中はあまりお金が稼げないので、まとまった時間と予算がある場合この方法を取ると良いでしょう。
2)実務未経験だがCSの知識がある場合
この場合、足りないのは実務経験となります。最初から大企業の正規雇用ポジションではなく、中小企業やインターン、スタートアップ等のポジションを狙ってキャリアアップすることが必要とされます。
また、ドイツ企業ではどうしてもドイツ語の話せるネイティブエンジニアと比較した時、日本人エンジニアは不利に働いてしまいます。自身の強みを活かすため、求人のたまは少ないものの、在独の日系企業などのITエンジニアポジションに応募することも一つの作戦と言えるでしょう。