ドイツでは4月の声を聞くと、八百屋さんやスーパー、そしてレストランで頻繁にシュパーゲル(白アスパラガス)を見かけるようになります。 6月23日にはシーズンの終わりを迎えるわずか3か月間の間に、ドイツでは毎年一人当たり平均1.5キログラムが食べられています。 こんなにもドイツの人々を夢中にさせるシュパーゲルの魅力をご案内します。
「白い黄金」とも呼ばれるシュパーゲル
ドイツではシュパーゲル(Spargel)のことを、「白い黄金(Weisses Gold ヴァイセス・ゴールド)」と呼んだりするほかに、「スティック状の春の空気(Frühlingsluft in Stangen フリューリングスルフト・イン・シュタンゲン)」「食べられる象牙(essbares Elfenbein エスバーレス・エルフェンバイン)」「王家の野菜(königliches Gemüse ケーニッヒリッヒェス・ゲミューゼ)」などの別名もあります。
古代エジプトでは媚薬として、そしてギリシャでは薬品として使用されたというシュパーゲルですが、その作付面積はドイツで最大だということをご存じでしたか?
作付面積はドイツ最大
2019年連邦統計局(Destatis)のレポートによると、シュパーゲルはドイツの野菜(ジャガイモを含まず)の戸外栽培面積の18%以上にあたる22,974ヘクタールを占めていました。
シュパーゲルに続く作付面積の大きさ第2位は、ニンジンの13,727ヘクタール、3位がタマネギ(12,054ヘクタール)でした。他には、白キャベツ(6,067ヘクタール)、レタス(4,061ヘクタール)などが続きます。ドイツ人のシュパーゲルに対する愛情が、栽培面積の大きさにも表れているようですね。
アスパラガスの作付面積の半分以上は、ニーダーザクセン州、ノルトラインヴェストファーレン州、ブランデンブルク州にあります。
一方、ドイツ国内で消費されるシュパーゲルのうち、その5分の1は国外からの輸入ものです。主な輸入国はスペインとギリシャで、アスパラガスの輸入のそれぞれ約30%と23%を占めています。その他の主な輸入国は、ペルー、イタリア、オランダ、ポーランドとなります。
あなたのお口に入るシュパーゲルも、もしかすると、遠くペルーから運ばれてきたものかもしれませんね。
気を遣うシュパーゲルの栽培
さて、春に人気のシュパーゲルですが、栽培にとても気を遣わなければいけない野菜なのです。 まず、アスパラガスを植える前に、土壌を十分に整備する必要があります。
土壌の状態にもよりますが、シュパーゲルは収穫可能になるまで成長するのに1〜3年かかります。土壌の準備は緑肥で行われ、長期間は肥料と液体肥料で行われます。
シュパーゲルの苗は特別な機械で植えつけられ、品種にもよりますが、1メートルあたり約3〜4本が植えられます。
夏にはアスパラガスに水をやり、除草し、施肥し、冬にはアスパラガスの葉を切り落とします。
植え付けた翌年は、5月中旬から下旬の間にかけての短い収穫が可能になります。 そして、その後の水やり・除草・施肥などは前年と同様に行われます。
3年目には、土が高く盛られた苗床(「ダム(Damm)と呼ばれます」)が回転式フィルムで覆われます。このフィルムは片面が黒、もう片面が白になっており、土壌の温度によって裏と表を使い分け、温度調節をすることができます。
白を表側に出すと、太陽の光を反射するので土壌の温度が上がらず、シュパーゲルの成長が制御されます。逆に黒を表に出すと、太陽光のエネルギーを吸収し土壌はより速く温まり、シュパーゲルの成長が促進されます。
このようにして、収穫量を調整することで、継続的な供給を可能にしているのですね。
この作業は、シュパーゲルの株が老化し、歩留まりが大幅に落ちるまで、7年~10年のあいだ繰り返されます。その後、シュパーゲルの根は特別な機械で除去されます。
丁寧になされるシュパーゲルの収穫
さて、収穫の季節です。
シュパーゲルの頭がダムと呼ばれる苗床のてっぺんから見えるようになると、収穫作業員はその周りの土を丁寧に取り除き、シュパーゲル収穫用の特殊なナイフで約23〜25センチメートル下の茎を切り取ります。
シュパーゲルは籠の中に集められ、切り取ったあとの苗床はまた土をかけ、こてで慣らしてなめらかにします。通常、シュパーゲルの収穫は午前中に行われますが、特に温かい日だと成長も早いので、午後に2回目の収穫を行うこともあります。
収穫されたシュパーゲルは温度に敏感なので、2時間以内に摂氏度まで冷やす必要があります。そうしないと、白アスパラガスがピンクアスパラガスになってしまい、茎の下のほうが木質化してまずくなってしまうからです。
シュパーゲルをおいしくいただく
これほどの手間をかけて食卓まで運ばれてきたシュパーゲル。ぜひおいしくいただきたいものですね。
ドイツでは伝統的に、オランデーズソースでいただくことが多いようですね。この定番のおいしさも、ぜひ味わってみてください。
ドイツで購入できるオランデーズソースをまとめた記事もどうぞ
そのほかには、キッシュに入れたり、ピザの具にしたり、じゃがいもと一緒にクリーム煮にしたりする洋風の食べ方もあります。
ドイツの日本人のご家庭では、茹でてからあっさりと塩でいただく、おひたしにして出汁醤油に柚子胡椒でいただく、天ぷらでいただく、お鍋の具材にする、など様々な楽しみ方のできるシュパーゲル。
あなたのおうちでの食べ方も教えていただけると嬉しいです。