
ドイツは勿論、EU内においても最大の人口380万人を抱える大都市、ベルリン。ドイツの首都であり、経済、政治の中心地であるドイツには多くの多国籍企業、研究機関、大学などが軒を連ねています。
もっとも、後述の通り「分断された」過去を持つベルリンの経済・産業機構は複雑で、様々な理由からドイツの大企業や外資企業の進出先としては選ばれずらい背景を持ちました。本稿では、歴史と現状、そして経済や就職先としての魅力について紹介していきます。
ベルリンの歴史
デュッセルドルフが河川を中心にその文化と経済を発展させたのと同様、ベルリンの歴史の中心にあったのもシュプレー川という河川の役割でした。人の居住の跡が既に数万年前から確認されており、氷河期の終わりとともに定住が開始されています。
スラブ人が当面の数世紀にわたって定住をおこなっていましたが、中世以降ドイツ人の東方入植がおこなわれるようになります。東ヨーロッパと西ヨーロッパの境目とも呼べるこの土地は、交易の中継点として栄えるようになり、ハンザ同盟の主要都市として経済的発展を享受することとなります。
ブランデンブルク辺境伯領の主都として長期的な繁栄を享受したベルリンは、17世紀の三十年戦争によって人口が激減するものの、18世紀初頭にはフリードリヒ 1 世の治世においてプロイセン王国の首都に定められ、以後プロイセンがドイツを統一するまで中心的な役割を負うこととなりました。
第二次世界大戦中はドイツとソ連の激しい地上戦が繰り広げられたため、都市の大部分が壊滅的な打撃をこうむり、また戦後は東西に分断されることとなりました。西ドイツは東ベルリンと東ドイツによって囲まれた完全な陸の孤島であったため、経済的な発展は他の西ドイツに比べ遅れをとることとなりました。

(C)Pixabay_jan saudek
冷戦中、ドイツに進出した多国籍企業もこうした地理的不便さからベルリンを選択することはなく、フランクフルトやデュッセルドルフに企業が集中する形となります。

(C)Flicker_daves_archive _inactive at current tim
1990年、東西ドイツが統一されるとようやくベルリンの止まった時計が動き始めます。首都機能がベルリンに戻され、大量の雇用が創出されたことで一気に人口が増加、経済も活性化されることとなりました。
ベルリンの経済
第二次世界大戦後約45年間分断されたベルリンの経済構造は特殊です。西ベルリンに直接国境を接する東ベルリンでは、その繁栄をショーケースのように見せびらかすために、国策として多くの製造業に投資が行われ、工場が建てられました。
東西統一後、こうした東ドイツ時代の製造業は国際競争力についていけなかったため、ベルリンの産業はサービス業へとシフトしていくこととなります。
こうした経緯もあってか、ベルリンはスタートアップやIT、クリエイティブと言った比較的新しい産業でドイツを牽引する役割を果たしており、若い労働者や起業家を惹きつける理由にもなっています。
ベルリンの文化
世界三大映画祭の一つ、ベルリン国際映画祭の舞台であることが知られている通り、ベルリンはドイツの中でも映画文化の集積地として認められています。このことに関連し、アートや音楽などクリエイティブ関連の産業が発達し、芸術学校への留学生が多いのもベルリンの特徴です。
建築、美術館、博物館、動物園など、ドイツを代表する建造物や文化的施設がベルリンには集中しており、観光先としても人気の目的地の一つに数えらえています。
ベルリンの平均年齢はドイツの全体と比べると2歳ほど若く、ナイトライフが充実した若者向けの都市として知られています。クラブ、バー、レストランなど、ドイツの中でも特に洗練された場所が多く、学生や転職者の中にもこうしたベルリンの魅力に惹かれて居を定める人が少なくありません。

ベルリン国際映画祭 (C)Flicker_Siebbi
ベルリンの交通
また、ブランデンブルグ辺境伯の時代より西欧と東欧の交差点として知られるベルリンは、鉄道、飛行機、そしてバスなどを利用した交通網が各国に広がっています。その大きな都市のサイズから、中央駅、バスターミナル、空港等へのそれぞれのアクセスが悪いことが問題でしたが、2020年に新空港がオープンしてから緩和されました。
意外なことにドイツの中では日本人の居住者数は第三位で、ヨーロッパの首都にしては珍しく日本からの直行便が存在しないことでも知られています。

ベルリン中央駅(C)Pixabay_Morgengry
ベルリンと日本
ベルリン在住の日本人の数は約4000人と、ドイツの中ではデュッセルドルフ、フランクフルトに次いで第三位です。首都にも関わらず日本人の在住者数が少ない原因として、上述の通り東西ドイツに分裂していた時代、日系企業がアクセスの悪いベルリンへの進出を嫌ったことが影響しています。
現在も、ドイツに点在する日系企業の大半はデュッセルドルフ近辺とミュンヘンに集中しており、ベルリン周辺の日系企業数は全体の5%程度とされています。にも関わらず、近年では若い留学生などを中心に日本人の数は増え始めており、またスタートアップ企業が多く設立されていることから、新たなビジネスチャンスを狙って今後日系企業の進出も増えてくることが予想されています。
現地の日系企業の求人に関しては、MixBのような就職掲示板や、Career Managementのような就職エージェントを活用して確認することがおススメです。
世界のQOLの高い都市でも度々上位にランクインされることの多いベルリンは、若者の就職のチャンスが高いことで知られており、英語だけで採用可能な企業も少なくありません。