ドイツで日本人に人気の仕事と求人形態

よりよいキャリアや生活水準を求め、ドイツに移住する日本人の数は増加しています。もっとも、根本的なバックグラウンドも母語も違う我々日本人がドイツで就職することは簡単ではなく、特にはじめのうちは日本人である強みを活かせる職種に落ち着くことが一般的と言えるでしょう。ドイツに移住した日本人に人気職種の上位と、それぞれの求人形式について解説をおこないます。

日本企業vsドイツ企業 どちらで仕事する日本人が多い?

在独日本人の職種を扱った資料の中で客観性の高い埼玉大学の論文「変容する海外で働く日本人―現地採用者に着目して―」を参照にすると、ドイツにおける現地採用日本人のうち、ドイツの日系企業で働く日本人と、ドイツのドイツ企業で働く日本人の数の比率は、おおよそ8:2であることが伺えます。

うち、日系企業で働く日本人の業種の割合はサービス業が最も多く、続いて飲食業、製造業、卸売業と続きます。対してドイツ企業に関しては、事務所サービス業が最も多く、次いで飲食業、通常のサービス業と続きます。

また、職種に目を向けてみると、専門職の割合で関して言えば日系企業は15.5%であるのに対し、ドイツ企業に勤める日本人のうち45.5%がそれに該当し、ドイツ企業で勤める日本人の実に半数近くが何らかの特殊技能を持っていると言えるでしょう。

ドイツの日系企業に就職した日本人の業種内訳

  • 飲食業 14人
  • サービス業 16人
  • 製造業 9人
  • 教育業 3人
  • 運輸業 2人
  • 情報通信 3人
  • 卸売業 8人
  • 事務所サービス業 6人
  • 小売業 2人

(全45人)

ドイツのドイツ企業に就職した日本人の業種内訳

  • 飲食業  3人
  • サービス業  2人
  • 事務所サービス業 4人
  • 娯楽業 1人
  • 情報通信業 1人

(全11人)

同論文の言を借りると、ドイツ(デュッセルドルフ)における日本人の現地採用者の属性は「日本での就労経験を有していない比較的低熟練の若者であっても就労ビザを獲得できデュッセルドルフで生活ができるのに対し,一方では場所を問わず世界中で就労できる高技能の若者もデュッセルドルフでチャンスをつかんでいる」と言われており、手軽なヨーロッパ就職を目指す若者のライトな層から、永住地を目指してドイツに行きついた層まで、様々な目標と価値観の入り乱れた様相を呈していることが見受けられます。

日・独企業の対日本人向けサービス

ドイツに居住する日本人は約45,000人、日系企業の数は約2,000社と、欧州随一の「日本コミュニティ」を形成しているため、そこで生活する日本人や日系企業へのサービス自体が一つの巨大なマーケットと化しています。

接客業

デュッセルドルフのイマーマン通りのように、通りを見渡すと日本書店、日本カフェなど日本文化で覆いつくされた地域が存在するように、ドイツには在独日本人や日本文化をターゲットにした日本サービスが大きな雇用創出の受け皿として機能しています。もっとも、日本人だけでなく日本好きのドイツ人や他欧州からの旅行者も頻繁に訪れるため、こうした接客業で働くためには日本語だけでなく、英語やドイツ語の素養も昨今では求められるようになりつつあります。

正社員としてではなく、語学学校の傍ら、あるいは大学に通う傍らなどでこうした日本サービスの接客業に身を置く日本人も少なくなく、採用のための語学ハードルも後述の職業より低いことが多いため、特にワーホリで渡独した若者や留学生に人気の仕事先です。

大都市にいけば多くのお店が求人をおこなっており、MixBのような就職系ポータルサイトや、フリーペーパーの求人広告を元に応募する方法が一般的です。

飲食業

上記の接客業と似たカテゴリにあたるのが飲食業で、デュッセルドルフやフランクフルトに軒を連ねる日本食レストランでの接客・調理のニーズは数多く存在します。ワーホリビザなどで渡独し、全くの未経験から飲食関連の仕事をはじめる人もいれば、日本で調理学校などに通った経歴をもってドイツに渡り飲食関連の仕事をはじめる人も少なくありません。

接客業同様、MixBのような就職系ポータルサイトや、フリーペーパーの求人広告を活用して応募することができます。

日系企業の現地採用

日本でいうサラリーマン、キャリアウーマン的なオフィスワークの求人もドイツ在住日本人には用意されています。その場合、一般的なのはドイツに進出している日系企業でのポジションで、以下にその中でも特に人気の高い職種を紹介していきます。

セールスアシスタント(日系企業)

ドイツに進出している日系企業の多くは製造業で、ドイツや欧州の市場を相手に日本の製品を販売する仕事をおこなっています。日本の企業で言うところの「エリア職」に近い職能ですが、地域柄貿易を伴う業務が多く、ドイツの顧客から受けた注文などを入力・手配する役割を果たします。

ドイツだけでなくヨーロッパ、場合によってはアフリカや中東区域への対応も含まれるため、広範な貿易実務知識、出荷管理能力、語学力などが要されるポジションです。

優良な日系企業のセールスアシスタント系の求人は隠されていることが多く、日系専門の転職エージェントなどを介して応募する形式がとられます。

営業(日系企業)

上述のセールスアシスタント同様、日系製造業における営業業務も広く貿易・越境的な要素を含みます。拠点であるドイツから他のヨーロッパ諸国に飛んだりすることも少なくなく、場合によっては現地市場調査やビジネスデベロップメント、現地パートナー企業との折衝業務を含みます。

日本国内での営業と比べると、異文化コミュニケーション寄りの業務比率が高い一方で、日本の本社との折衝もおこなわれるため、日本人であることが活かしやすい職種となります。

セールスアシスタント同様、営業系の求人も就職ポータルなどには出回っていないことが多く、日系専門の転職エージェントなどを介して応募する形式がとられます。

その他専門職系の仕事

上記の職種は「日本人であること」や「日本語を話せること」を武器にすることができますが、日本人であるというバックグラウンドを投げ捨てて、その道の専門人材として勝負する日本人も多数存在しています。

スポーツ系職種

代表的なところで言うと、サッカー選手です。ドイツには約1000人以上の職業サッカー選手がひしめくサッカー大国で、プロ・学生を問わず多くの日本人が活躍しています。当然言葉の壁はあるものの、スポーツの実力がそれ以上に物をいう世界であるため、「日本人」というバックグラウンド無しに実力勝負できる市場であると言えるでしょう。

芸術系専門職

音楽系(ピアノやバイオリン)や絵画系、ダンス系などの専門技術を元に活躍する日本人も少なくありません。スポーツ系同様、日本人であるというバックグラウンドより、その道でいかに実力を示せるかがポイントであると言えるでしょう。

その他モノづくり専門職

上記以外にも、日本人の中には、ドイツで職業訓練を積んで特殊なモノづくりの世界(大工、技師、工芸、リハビリ器具)で活躍しているケースがあります。日本とドイツとで製造方法や認証方法が異なることがあるため、実際にはドイツに渡航後に勉強し直すケースが多いと言えるでしょう。




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