ドイツのスーパーでよく見る“Nutri-Score”と“Haltungsform”について解説

ドイツのスーパーマーケットやオンラインショップで食料品を選んでいると、“Nutri-Score”と“Haltungsform”というラベルを頻繁に目にします。どちらも数字やアルファベットでランク付けされていて何かの評価基準のようですが、意味と違いを明確に知らない人も多いのではないでしょうか?そこで今回は、この2つのラベルの意味と目的を解説します。

Nutri-Scoreとは?

Nutri-Score(ニュートリスコア:栄養スコア)は食品の栄養価を5段階でスコアリングした指標およびそれを示すラベルです。2020年10月に食品レベル表示に関する改正法案が可決され、11月から適用が開始されました。現在ドイツで約640の企業がニュートリスコアを取り入れ、対象は約1000ブランドに及んでいます(2022年12月時点、ドイツ食料・農業省 ※1)。この施策はEUで取り組んでいる栄養表示における統一基準策定の一環で、同スコアは発案国のフランスをはじめベルギー、スイス、スペイン、オランダで導入されています。

意味・目的

Nutri-Scoreラベルは、消費者が健康的な食品を選別しやすくすることを目的として作られました。表示されるのは加工食品全般で、野菜や果物などの未加工品・お茶・アルコールなどは対象外となります。表示は義務でなく生産者側の任意ですが、評価が高い商品にだけ表示するなどの選択表示は偏った情報提供となるため不可とされています。生産者側の立場に立つと、消費者の健康に配慮する企業姿勢をアピールできること、同スコアの付与された商品をフランスやベルギーなど他国でも販売できることがメリットと言えます。

指標と評価基準

A(緑)、B(黄緑)、C(黄色)、D(オレンジ)、E(赤)の5段階評価で、Aが栄養学的に最も優れている商品とされます。スコアが示すのは食品の栄養価で、含有カロリー/飽和脂肪酸/塩分/糖分などのマイナス要素、食物繊維/プロテイン/果物・野菜・ナッツ類の含有量などのプラス要素で総合的に計算・評価されます。

Haltungsformとは?

Haltungsform(ハルトゥングスフォーム:動物福祉ラベル)は、食品に関わる動物の飼育環境の良し悪しを示す評価基準およびそれを示すラベルです。2019年から導入されたこの取り組みは、動物愛護に敏感なドイツらしいものと言えます。ドイツの大手スーパーマーケットやディスカウントスーパーも軒並み自社で取り扱う精肉や牛乳にこのラベルを取り入れており、例えばディスカウント大手のアルディ(Aldi)は、2030年以降、法定基準よりも飼育面積や屋内環境が大幅に良いHaltungsformの基準3か4を満たす精肉および牛乳のみを取り扱うことを発表しています。

日本が1930年から加盟している国際獣疫事務局(OIE)も活動目的のひとつに「動物由来の食品の安全性確保と科学に基づいたアニマルウェルフェア(※2)の向上」を掲げ、農林水産省も畜養管理体制の見直しを進めていることも相まって、日本国内でも徐々に注目されてきている動きでもあります。

※2:「アニマルウェルフェアとは、動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」のこと(OIE勧告より)

意味・目的

Haltungsformラベルは、消費者に動物福祉の基準を分かりやすく表示することを目的としています。同様の飼育条件を示すラベルはさまざまな団体から出されていましたが、林立状態を改善、基準を統一することで消費者の混乱を解消する狙いがあります。

誕生の背景として、食品として消費される動物であってもできるだけ快適な環境で過ごさせる、屠殺は苦しみの少ない方法で行う、卵を産まない鶏の雄を処分しない、など、動物の生存権と福祉を重視し、それを消費行動に反映させる消費者が増加していることがあげられます。また、快適な環境で幸せに育った動物の方が栄養価の高い卵や乳を生産し、食肉としてもストレスが少ないと病気のリスクが低く健康的であるという見方もあります。

指標と評価基準

基準1(赤)、2(水色)、3(オレンジ)、4(黄緑)の4段階制で評価されます。基準1〜4まですベて小屋飼いで、1が法律で定められた条件を最低限満たすレベルとなります。基準2は1より広い面積での飼育、3は定期的な外気浴、4は1/3の時間は草地での外飼いで有機家畜(オーガニック)に相当する環境、が条件とされています。鶏の肥育条件を例に取ると、以下の表のように小屋の密度から生育速度まで非常に細かく定められていることが分かります。

【例】鶏の肥育条件

基準1
(小屋飼い)
基準2
(小屋飼い+)
基準3
(外気浴)
基準4
(プレミアム)
密度(最大) 39kg/㎡ 35kg/㎡ 25kg/㎡

(冷蔵室のある小屋の場合29kg/㎡)

21kg/㎡
環境 つついたり藁浴びするのに適した乾燥素材 干し草や石などの有機素材

(150㎡に最低1つ)

干し草や石などの有機素材

(150㎡に最低2つ、または2000頭あたり3つの藁玉+1000頭あたり1つのつつき具)

肥育小屋の最低1/3の面積に藁、木屑、砂、ピートなどの敷料
生育速度と屠殺条件 丈夫で健康な個体 丈夫で健康な個体 丈夫で健康な個体

(発育が遅い種:体重増加は最大45g/日、走行力テストを伴う場合は51kg/日)

(発育が早い種:最低81日経過後の屠殺)

丈夫で健康な個体

 

健康状態チェック ①食肉処理場での検査

②抗生物質量の確認

(QSデータバンクへの情報入力を含む)

①食肉処理場での検査

②抗生物質量の確認

(QSデータバンクへの情報入力を含む)

①食肉処理場での検査

②抗生物質量の確認

(中央データバンクへの情報入力を含む)

①食肉処理場での検査

②抗生物質量の確認

(中央データバンクへの情報入力を含む)

チェック体制 QSテストシステムに則った中立認定機関による一括管理 ITWテストシステムに則った中立認定機関による一括管理 中立認定機関による一括管理、最低年1回のチェック 中立認定機関による一括管理、最低年1回のチェック
参加が必要なプログラム QSあるいは相当する認定プログラム “Initiative Tierwohl”あるいは相当する認定プログラム “Haltungsform”に登録済みのプログラム “Haltungsform”に登録済みのプログラム

出典:Haltungsform.de “Kriterien und Mindestanforderungen für Tierwohlprogramme” 

まとめ

Nutri-ScoreとHaltungsformは、ターゲットは人か動物かで異なるものの、最終的には食品の品質を担保し、人の健康に利益をもたらす指標であるという点では共通しています。

両者のラベルは非常に分かりやすいように表示され、日々の買い物の中で消費者が参考にしやすいように工夫されています。より健康的な食生活・動物への配慮がしやすいように国がお膳立てしてくれているので、消費者側も上手く利用したいものです。

とはいえ健康的な食事にはお金がかかるのも事実で、例えばHaltungsform基準4の肉は基準1の肉の倍の値段であることも珍しくありません。

ハンブルクの消費者センターの調査(2020年)によると、スーパーマーケットやディスカウントスーパーに並ぶ食肉(おもに牛豚)の半数以上にあたる51.5%がHaltungsformの最低ラインである基準1であり、基準4を満たすのはわずか10%であると報告されています(※3)。店の品揃えが消費者の行動を反映していると考えると、意識的に基準の高い食材を買う人・買える人がそれだけ少数派だと言えるでしょう。

今後アニマルウェルフェアがより浸透していけば、食肉や動物が生み出すものを食べることは今よりずっと高級な消費行動になっていくのかもしれません。

【出典・参考】

※1:Bundesministerium für Ernährung und Landwirtschaft “ Hilfestellung für Unternehmen – Einführung des Nutri-Score

※3:Verbraucherzentrale Hamburg “ Wo ist das Fleisch aus besserer Tierhaltung?

・日本貿易振興機構(ジェトロ)「 食品への5段階の栄養スコア表示制度を導入(ドイツ)」、「 スーパーマーケットで動物福祉ラベルの活用広まる(ドイツ)

・Haltungsform “ Die Siegel in der Haltungsform

・農林水産省「 アニマルウェルフェアについて

Featured Image:(C) pixabay_stevepb



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