ドイツで拡大を続けるオーガニック商品、そのラベルの意味と人気の理由を解説

ドイツでは、日本以上にオーガニック商品の人気が高く、気軽に手に取れる価格で売られています。オーガニック商品はドイツで「ビオ(Bio)」や「エコ(Öko)」商品と呼ばれ、一般的なスーパーやディスカウントスーパー、ドラッグストアなどあらゆるお店で目にしますが、その表示にはいくつも何種類もあることを知っていますか?
今回は、ドイツのオーガニック商品(以下ビオ商品)を表すラベルの種類と意味、ビオ商品の歴史や意義を、ドイツ人の環境意識を交えて解説します。

1. 「ビオ商品」の歴史

「有機栽培」を表すオーガニック商品。日本では日本農林規格(JAS)によって2000年より「有機JASマーク」が導入されており、「有機JAS」に適合した、農薬や化学肥料に頼らないほ場で栽培・収穫された農畜産物、化学合成添加物や遺伝子組み換え原料を使用しない加工食品に対して使用が認められています。

ドイツで有機環境で栽培された商品に「ビオ」の表示が使われ始めたのは、1991年と言われています。「EU有機法(EU-Bio-Recht)」に裏付けられたビオ商品のラインナップは当初農作物が中心で、1993年に野生植物、1999年に動物製品、2008年に海藻類、2009年に水産養殖品と対象範囲が拡大されていきました。

2. ドイツ国内で使われているビオラベル

ドイツにはたくさんのビオ商品認定ラベルが存在しますが、その理由は管理機関によって異なる規格とラベルが運用されているからです。ラベルの発行・管理元は、公的機関(EU・国)、栽培協会、店舗・小売店の3つに大分できます。

3. EU版とドイツ版ラベルの違い

公的機関が主導するものに、EUビオラベル(EU-Bio-Siegel)とドイツビオラベル(Deutsches Bio-Siegel)があります。

EUビオラベルは、「有機農業に関するEU法(EU-Rechtsvorschriften für den ökologischen Landbau)」に基づき、EU圏内で生産されたビオ商品に対し貼付されるロゴで、2010年7月1日から表示が義務化されました(包装されていない商品、EU外で生産・輸入された商品は義務の対象外だが、ルールに基づき自主的な表示が可能)。

一方ドイツビオラベルは、国内のビオラベル乱立状態への対策として、消費者がより分かりやすく認識できるよう、ドイツ連邦食糧・農業省(BMEL)が2001年に導入した統一規格・表示です。表示義務はなく、EUビオラベルと並べて商品に表示することができます。

ドイツビオラベルの表示条件として規定されているのは、以下の3点です。

(1)基本的にすべての原材料が有機品質であること
(非有機品質の原材料は、同材料が有機品質で入手困難な場合に限り厳格なルールのもと最大5%までの含有が認められる)

(2)生産者・加工業者・輸入業者が「有機農業に関するEU法」の要件を満たし、所定の検査を受けていること

(3)ラベルに認定機関のコード番号を表示していること
(ドイツの認定機関のコードは “DE-ÖKO-000” で、000は機関によって異なる)

ドイツビオラベルも「有機農業に関するEU法」に基づいており、EUビオラベルと認定基準に大きな違いはありませんが、合成添加物や抗生物質の使用に対してより厳しいルールを定めています。しかし両者とも「ビオとしての必要最低限の基準」を保つという立ち位置であり、さらに独自の基準を課して運用している栽培協会や小売店のラベルの方がビオとしての厳格性は高いと言えるでしょう。

4. ビオラベルの目的と意義

ドイツ・EUのビオラベルで重視されているのは、

(1)ökologische Nachhaltigkeit(環境的・生態学的に持続可能であること)
(2)umweltverträglich(環境にやさしいこと)
(3)mehr Tierwohl(より良い動物福祉)

の3点です。世界的に見ると、健康志向の高まりや食の安全性への懸念からオーガニック商品を求める声が増えている傾向が強いようですが、環境保全や動物福祉を最重視している点がドイツ・欧州に特徴的と言えます。ドイツ連邦食糧・農業省が2021年に行った消費者アンケート(※1)によると、 ビオ商品を購入するときに重視する視点として選んだ人がもっとも多かった回答が「環境・気候保全と動物福祉」(78票)でした(次点は「健康に良い」(49票)、「フェアトレード」(32票)、「味」(27票))。
※1:BMEL “ Öko-Barometer 2021”. p17.

人間の生活を維持するためだけに消費し続ける時代はすでに終わりを迎えています。多くの国が自然や生態系の保護を最重要課題として動いている中、日々の買い物でビオ商品を選ぶことは、いち消費者の立場でできるもっとも手軽な貢献でもあるのです。

5. ドイツのビオ市場

ドイツ連邦食糧・農業省の報告によると、現在102,170商品(※2)にドイツビオラベルが貼付され、6,768企業(※2)が同認証を受けています。
※2:ökolandbau.de調べ、2022年12月31日現在

2001年の共通ラベル導入以来ドイツ国内のビオ市場は成長を続けており、2001年に約27億ユーロだったビオ食料品の市場規模は、2021年には約160億ユーロにまで拡大。20年間で約6倍と大幅な成長率を記録しています。市場調査レポートプロバイダーのREPORT OCEANは世界のオーガニック食品・飲料市場規模が2030年まで年平均成長率(CAGR)14.8%で成長すると予測しており、ドイツだけでなく世界的にもこの拡大傾向は続くものと見られます。

ドイツ連邦共和国環境省(Umwelt Bundesamt) “ Biolebensmittel: stetiges, aber langsames Wachstum aus der Nische” をもとに作成

6. 人気の理由とドイツ人の意識

ドイツでビオ商品が浸透している理由は、ビオを選ぶ・選ばないの選択肢が常に用意されているからではないでしょうか。ビオ専門店以外はどのスーパーでもビオ商品とビオでない一般的な商品が並び、消費者に選択権が委ねられています。

例えばスーパーに並ぶ卵ひとつ取っても、もっとも安価な平飼い(Bodenhaltung)から、放し飼い(Freilandhaltung)、放し飼いでビオ(Ökologische Erzeugung)まで3種類があり、自分の主義や考え方、経済状況によって何を選ぶかを決めることができます。できる人が、できる範囲で協力すればいい。この考え方が、ビオを身近にしている最大の理由なのではないかと思います。加えて、以下の3点もドイツのビオ人気を支えている要因と考えられます。

(1)環境意識が高いこと

前出のように、環境と動物福祉を考えてビオを選ぶという姿勢の人は多いです。もちろん、例えばアニマルウェルフェアに配慮した食肉や卵であれば動物のストレスが少なく、結果的にそれを口にする人間にとっても健康的であると考える人も少なくありません。

(2)普通のスーパーで買えること

AlnaturaやVollcornerなどビオ商品専門のスーパーもありますが、EDEKAやREWEなどのいわゆる普通のスーパーや、ALDIやLidlなどのディスカウントスーパーでもビオ商品は販売されており、ほぼどの食料品店でも購入することができます。わざわざ専門店に出向く必要がないという点も、選ばれやすい理由のひとつだと感じます。

(3)普通の商品との価格差が少ないこと

ビオ商品とビオでない商品の価格差は数十セント〜1ユーロ程度であることが多く、消費者が大きな負担なく環境保護・動物福祉に貢献できる価格に設定されています。例えば、スーパー大手REWEのオンラインショップを見てみると、リンゴ1キロの値段はビオで3.49ユーロ、非ビオで2.49ユーロと、価格差は1ユーロ。低脂肪牛乳1リットル(脂肪分1.5%)はビオで1.89ユーロ、非ビオで1.69ユーロと、価格差は20セントです。

もちろん常にビオスーパーで買い物をしたり、口に入れるものすべてをビオ商品にすれば出費がかさみますが、数点だけ、あるいはたまに選ぶといったことができるのドイツの仕組みの優れたところだと思います。

【出典・参考】
・Umwelt Bundesamt. “Marktdaten: Ernährung ”. 2022年5月30日更新.
・BMEL.de. “Bio-Siegel ”. 2022年10月27日掲載記事.
ökolandbau.de
・Bundesministerium für Ernährung und Landwirtschaft “Die EU-Rechtsvorschriften für den ökologischen Landbau ”. (2023年4月参照)
・Bundesministerium der Justiz. “Gesetz zur Einführung und Verwendung eines Kennzeichens für Erzeugnisse des ökologischen Landbaus (Öko-Kennzeichengesetz – ÖkoKennzG) ”. (2023年4月参照).
・Europäsche Kommission. “ Biologische Erzeugung und Bio-Produkte”. (2023年4月参照).




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