ドイツ在住日本人の「税金クラス」と「節税」諸事情について

ドイツで働いて一定以上の収入を得ると、納税義務が生じます。中でも大きな割合を占めるのが個人所得課税ですが、そこに付いて回るのが税金クラス(Steuerklasse)です。正式名称は給与所得税クラス(Lohnsteuerklasse)で、個人の属性や働き方によってどのクラスに属するかが決められており、税率や控除枠が変わるシステムです。
ドイツで会社員として働いていると所得税について意識しない人が多いかもしれませんが、選択の余地があればクラスの最適化が大きな節税につながる場合も。一方、ドイツに来たばかりの日本人にとって、このドイツの税関係のテーマは中々頭が痛くなる問題ですよね。
今回は、この税金クラスがどうやって決まるのか、また、適したクラスの選び方を解説すると同時に、所得税を抑えるポイントも紹介します。

1. ドイツの税金の仕組み

ドイツで個人が関わりのある税金としては、個人所得課税(Einkommensteuer、以下所得税)、付加価値税(Mehrwertsteuer:MwSt)、教会税(Kirchensteuer)、自動車税(Kraftfahrzeugsteuer)、相続税・贈与税(Erbschaft- & Schenkungsteuer)などがあります。所得税はドイツに居住して収入を得るすべての人に課せられる税金(非課税枠あり)で、会社員の場合の給与所得税(Lohnsteuer)はその一環になります。

ドイツの税収の3分の1は所得税によるものだと言われており、国の財政を支える要となっています(日本は令和4年度実績で29.7%[※1])。個人所得税率は収入に応じて14〜42%(限界税率45%)の範囲で定められる比例累進課税方式で、日本とほぼ同等となっています。

【最低課税対象年収】

単身者 夫婦世帯
2023年 10,909ユーロ以上 21,817ユーロ以上
2022年 10,348ユーロ以上 20,695ユーロ以上

*2023年は物価上昇に合わせて非課税限度額が引き上げられている

【2023年の個人所得税率(単身者)】

年収 税率
 0〜10,908ユーロ 0%
 10,909〜15,787ユーロ 14%〜24%
 15,787〜62,809ユーロ 24%〜42%
 62,809〜277,825ユーロ 42%
 277,826ユーロ以上 45%

2. 所得税額を決める7つの税金クラス

ドイツの所得税額は、税金クラスによって大きく左右されます。税金クラスは0〜6の7つに分類されており、うち納税義務があるのは1〜6にあたる労働者です。税金クラスの管轄は税務署(Steueramt)で、結婚・離婚・失業・転職などライフステージの変化によって税金クラスの変更が必要な場合は居住地を管轄する税務署に届け出を行います。

税金クラス 対象者 条件/備考
0 海外に住所を持つドイツ国内の被雇用者 ・雇用主による証明が必要
1 独身者(未婚・死別・離婚)かつ子なし ・雇用先が1箇所であること
2 ひとり親 ・控除額など優遇が大きい(非課税枠が年間4,008ユーロで、子どもの数が増えるごとに240ユーロ追加)
3 子持ちの既婚者でパートナーの税金クラスが5 ・夫婦のうち収入の多い方

・基礎控除が倍額になる

・両親手当の受給者

4 既婚者で自分とパートナーの収入が同等 ・結婚後、税金クラスの変更を申請しない場合は自動的に4+4の組み合わせに
4(条件付) 既婚者で自分とパートナーの収入が同等 ・3+5の組み合わせよりも税負担が偏らない
5 既婚者でパートナーの納税クラスが3 ・夫婦のうち収入の少ない方

・基礎控除や子供控除は申請できない(税金クラス3のパートナーに委託)

6 複数の雇用者から給与を受け取る被雇用者 ・どちらの収入も課税対象である場合

・メイン+副業である場合は、メインを1、副業を6にすると確定申告で返還が多くなる

納税クラス1・2・6は自分の属性と労働条件によって自動的に決まるため選択の余地はありませんが、既婚の場合は4+4、4(条件付)+4(条件付)、あるいは3+5の組み合わせのいずれか、税金的に有利な方を選択することができます。結婚して特に届出をしない場合は両パートナーともに税金クラス4に設定されます。

税金クラス3+5の組み合わせが有利になるのは、一方の収入がもう一方より50%以上低い場合です。収入の高い方の所得税負担を軽く、低い方を重くすることで、世帯としての負担を軽減することを目的としています。税金クラス3の所得税課税ラインは年収(Jahresbruttolohn)30,000ユーロからとなっており、他の税金クラスよりも高く設定されています。

3+5を選んだ場合の注意点としては、両者とも確定申告が必須となる点です。ドイツで被雇用者として労働している場合の確定申告は義務ではないので、その手間が増える点はクラス変更の申請前に知っておく必要があります。さらに、毎月の課税額が最小に抑えられる(=手取り[Netto]が最高額になる)反面、確定申告時に追徴課税されるリスクも少なくない点に注意しましょう。

また、パートナー間の収入差はあるものの、税負担をより公平にしたい場合に選べるのが4(条件付)+4(条件付)の組み合わせです。給与額に応じて課税されるので毎月の課税額は3+5の組み合わせより多くなるものの、収入が低い方の手取り額が増えるのでパートナー間の平等感が増すことと、3+5でよくある確定申告で追徴課税されることが少ないことがメリットと言えます。4(条件付)+4(条件付)の組み合わせの場合も、確定申告が義務付けられます。

3. 合法的に税金を抑える方法

食品や日用品の物価上昇、エネルギー価格の高騰など、ただでさえ出て行くお金が増えている昨今、払わなくてもいい出費はできるだけ避けたいですよね。それは税金にも当てはまること。既婚者の場合はライフスタイルに合った税金クラスを選ぶこと、既婚・未婚に関わらず義務がなくても確定申告を行うこと、この2つが合法的に税金を抑える方法です。

3.1. 税金クラスを変更する

納税クラスの変更は2019年までは年1回と限定されていましたが(パートナーと死別・離婚、パートナーが失業・再就職した場合は例外)、2020年以降は何度でも変更可能になりました。自分とパートナーの税金クラスが適しているかを知るにも計算が面倒という方がいるかもしれませんが、ドイツ財務省をはじめさまざまなサイトが所得税の計算サービスを無料で提供していますので、一度検索してみてください。

変更の届出は、税務署に出向いてももちろん行えますが、オンライン税務署( Elster)に登録すると自宅で手続きが完了できて便利です。

【Elster登録の流れ】
https://www.elster.de/ で新規アカウント(Benutzerkonto)申請

郵送で届くコード(Aktivierungs-Code)を入力して電子証明(Elektronische Zertifikat)を作成

電子証明をダウンロードしてローカルに保存

電子証明とパスワードを使用してログイン

3.2. 確定申告する

確定申告と聞くと面倒、大変、時間がかかる…異国に外国人として暮らしていると、より ネガティブなイメージが先立ってしまうかもしれません。ドイツ人でさえ分かりづらくてやりたがらない人が多い手続きの筆頭ですが、確定申告は払いすぎた税金を取り戻すチャンスです。確定申告が必要でない税金クラスの場合も、特に課税額が大きい独身者(クラス1)や4+4の既婚世帯、複数の仕事を持つ人(クラス6)は大きな還付を受けられる可能性が高いです。結婚後、税金クラスを変更せずに4+4のまま納税していたカップルが確定申告したところ、数千ユーロ単位の還付があって驚いたという話も聞きます。

高いお金を払って税理士に依頼しなくても、自分で簡単に申請を行うことができるオンラインサービスも増えています。申告時に迷うであろう箇所に注記やヘルプを加えてくれているので、Elsterで自力で行うよりもずっと簡単で間違いなく申請をすることができます。

【出典・参考】
※1:財務省「 所得税など(個人所得課税)に関する資料
・ジェトロ「 ドイツの税制
・Bundesministerium der Finanzen “ Lohnsteuer




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