ドイツで暮らす・旅する日本人のための情報誌 NIPPONip 公式ブログ

ドイツでフリーランス・個人事業主として働く日本人のための税金ガイド【2026】

当ブログでは、ドイツの様々な商品やサービス、イベントを客観的にご紹介しています。一部の記事にはAmazonアソシエイトなどのアフィリエイトやPR商品が含まれており、リンク先での購入により運営元に報酬が発生する場合があります。 [↗︎]=外部サイトに飛びます。

「Freiberuflerって何?」「Kleinunternehmerって聞いたことがあるけど自分にも関係する?」「予定納税って急に請求が来るもの?」独立したばかりの日本人が最初につまずきやすいのは、だいたいこのあたりです。この記事では、今現在、そして、これからドイツで個人事業主・フリーランスとして働く日本人、が、まず押さえておきたい税金の仕組みを整理しました。

注意事項:2026年時点の情報です。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・ビザ相談ではありません。フリーランスビザ・自営業ビザの詳細な要件は、税務ではなく入管手続きの範囲になります。税理士または外国人局へのご相談をおすすめします。

最初に確認するべき5つのこと

ドイツでフリーランスや個人事業主として働き始めると、「会社員のときとは何が違うの?」と戸惑う場面が一気に増えます。給与から自動的に税金が天引きされる会社員と違い、自分で申告し、自分で納める場面が多くなるためです。

最初に確認するべき5つの項目に分けてご説明します。

  1. 自分が自由業(Freiberufler)か事業者(Gewerbetreibende)か確認する
  2. 税務署(Finanzamt)への登録を済ませる
  3. 予定納税(Einkommensteuer-Vorauszahlung)のスケジュールを把握する 
  4. 消費税(Umsatzsteuer)と小規模事業者規定(Kleinunternehmerregelung)の関係を整理する
  5. 帳簿(EÜR)・確定申告(Steuererklärung)に必要な準備を進める

自由業または事業者、どちらになる?

ドイツで独立して働く人は、税法上大きく2種類に分かれます。ドイツのFinanzamtは、「実際に行っている活動の実態」を見て自由業か事業者かを判断します。自分ではFreiberuflerだと思っていても、そうならない場合もあるので注意が必要です。

自由業(Freiberufler)

ドイツ所得税法(EStG)第18条に定められた職業カテゴリー(Katalogberuf)に該当する人です。コンサルティング、IT・エンジニア、通訳・翻訳、ジャーナリスト、デザイナー、教師、医療関連の専門職などが代表例です。

事業者・商工業者(Gewerbetreibende)

物品の販売や、Freiberuflerに該当しない事業活動を行う人です。ネットショップ運営、飲食店、製造業などが典型例です。

この区分は、単なる呼び方の違いではなく、実務上の負担に直結します。

自分の職業がFreiberuflerに該当するかどうかは、最終的には税務署(Finanzamt)が判断します。特に「コンサルタント」「クリエイター」のように線引きが曖昧になりやすい職種の場合、登録前に自分の業務内容を整理しておくと安心です。判断に迷う場合は、税理士(Steuerberater)に相談することもできます。

項目 自由業
Freiberufler
事業者・商工業者
Gewerbetreibende
職業 IT・エンジニア、通訳・翻訳、ジャーナリスト、デザイナー、教師、医療関連の専門職など 物品の販売、ネットショップ運営、飲食店、製造業など
登録先 Finanzamt(税務署)のみ Gewerbeamt(営業許可局)+Finanzamt
営業許可証
Gewerbeschein
不要 必要
営業税
Gewerbesteuer
かからない かかる
(個人事業主は年間利益24,500ユーロまで非課税)
IHK・手工業会議所への
加入義務
原則なし 原則あり
帳簿方式 原則EÜR
(簡易的な収支計算)
EÜRまたは複式簿記
モノの販売 自身の「作品」
少数販売*1
可能

*1本業(サービス提供)に直接関係があるもののみ、作品を商業印刷で大量に制作販売や繰り返し、大量に、または注文に応じて日常的に」販売や商品を仕入れて販売は不可。

例)通訳として登録しているが、通訳・翻訳業のほかに自身が訳した本を商業印刷して販売、継続して多数販売する場合はGewerbeに分類される。トラブルを避けるためには、事前に税理士や税務署に相談を!

会社員向けの所得税の基本的な仕組み(Lohnsteuerとの関係、Steuerklasseなど)は、別記事「ドイツの所得税|給与明細からSteuererklärungまで、日本人向けに仕組みを解説」で解説しています。

 

Finanzamtへの登録

Freiberuflerの場合

FreiberuflerはGewerbeamtへの届け出が不要で、Finanzamtへの登録だけで手続きが完了します。使うのは税務上の登録アンケート(Fragebogen zur steuerlichen Erfassung)という書類で、現在はELSTER(エルスター、ドイツの電子申告システム)を通じてオンラインで提出するのが一般的です。

活動を開始してから1か月以内に提出することが法律で定められています(租税通則法=Abgabenordnung 第138条)。この書類の中で、予想年間収入や事業内容を申告し、これをもとにFinanzamtが次に説明する予定納税額や消費税の扱いを決定します。

Gewerbetreibendeの場合

Gewerbetreibendeは、まず住んでいる自治体の営業許可局(Gewerbeamt)で営業許可証(Gewerbeschein)を取得します。Gewerbeamtが自動的にFinanzamtへ情報を連携するため、その後Finanzamtから記入依頼が届くことが多いですが、届かない場合は自分からFragebogen zur steuerlichen Erfassungを提出する必要があります。

登録が終わると届くもの

登録が完了すると、Finanzamtから税務番号(Steuernummer)が発行されます。このSteuernummerは、請求書(Rechnung)に記載する義務がある番号です。

国境を越えてEU域内の企業と取引する場合は、別途消費税番号(Umsatzsteuer-Identifikationsnummer=USt-IdNr.)の取得も検討した方がよいです。

この番号が届かない間は、仮の請求書を発行して番号が発行されてから差し替えをしてもらうということも行えますが、双方にとって面倒な部分が多い面もあります。もし数ヶ月待っても届かない場合はFinanzamtへ連絡する、もしくは税理士などに頼んで催促してもらうことで発行が早まる可能性もあります。早めの行動、万全の準備が大切です。

予定納税(Einkommensteuer-Vorauszahlung)のスケジュールを把握する

会社員時代との一番大きな違いがここです。フリーランス・個人事業主は、所得税を「後払い一括」ではなく、年4回の予定納税(Vorauszahlung)として前払いする仕組みになっています。

2026年の納付期日は3月10日、 6月10日、9月10日、12月10日の4回です(所得税法=EStG第37条)

Vorauszahlungは、直近の税務申告(初年度はFragebogenで申告した見込み所得)をもとにFinanzamtが算出し、年4回に分けて通知してきます。年間の見込み納税額が400ユーロ未満、または1回あたり100ユーロ未満の場合は、予定納税自体が発生しません。

要注意ポイント:予定納税額はあくまで「見込み」

この予定納税額があくまで「見込み」だということです。実際の所得がFinanzamtの見込みより少なかった場合、予定納税額の引き下げ(Herabsetzungsantrag)を申請できます。逆に見込みより多く稼いだ場合は、確定申告のタイミングで追加納税が発生することがあります。独立したばかりで収入が不安定な時期は、この見込みと実績のズレを意識しておくと、資金繰りで慌てずに済みます。

会社員がGewerbetreibendeとして独立した場合、営業税(Gewerbesteuer)の予定納税も別途発生します。納期はEinkommensteuerとは異なり、2月・5月・8月・11月の中旬(各年で若干前後します)です。

UmsatzsteuerとKleinunternehmerregelungの関係

フリーランス・個人事業主にとって、所得税と並んで重要なのが付加価値税(Umsatzsteuer 日本の消費税に相当)です。

Kleinunternehmerregelungとは

多くの独立初期の日本人に関係するのが、小規模事業者特例(Kleinunternehmerregelung)という制度です。売上高が一定の基準以下であれば、Umsatzsteuerを請求書に上乗せせず、納税も免除される仕組みです。

この基準は2025年の税制改正で大きく引き上げられ、2026年も同じ基準が適用されています。

– 前年(2025年)の売上高:25,000ユーロ以下
– 当年(2026年)の売上高(見込み):100,000ユーロ以下

両方の条件を満たす場合、Kleinunternehmerとして扱われます。開業初年度は、前年の実績がないため、当年の売上見込みが25,000ユーロを超えないかどうかだけが基準になります。

メリット

請求書にUmsatzsteuerを記載する必要がなく、事務作業が簡単になる。個人向けにサービスを提供する場合、価格を安く見せられる。

デメリット

仕入れや経費にかかったUmsatzsteuer(Vorsteuer)を控除できない。パソコンや機材など高額な購入が多い業種では、かえって不利になることもある。

年の途中で売上が100,000ユーロを超えた場合は、超えた時点から即座にUmsatzsteuerの課税対象(Regelbesteuerung)に切り替わります。自分の売上を定期的に確認しておくことが大切です。

Kleinunternehmerでない場合|Umsatzsteuervoranmeldung

Kleinunternehmerに該当しない場合は、請求書にUmsatzsteuer(標準税率19%、軽減税率7%など)を上乗せして請求し、定期的に消費税の予納申告(Umsatzsteuervoranmeldung)をELSTER経由で提出します。提出頻度は、前年のUmsatzsteuerの納税額(Zahllast)によって決まります。

  • 前年の納税額が2,000ユーロ以下:原則、定期申告が免除される(年次申告のみ)
  • 前年の納税額が2,000〜9,000ユーロ:四半期ごとの申告
  • 前年の納税額が9,000ユーロ超:毎月の申告

開業から2026年までは、新規開業者に対する特例として、原則として四半期ごとの申告からスタートできる措置が取られています。(見込み納税額が高い場合を除くので、これもまた要注意です)

帳簿・確定申告に必要な準備を進める

日々の帳簿はEÜR(簡易収支計算)

Freiberuflerや、一定規模までのGewerbetreibendeは、複式簿記ではなくEÜR/収入から経費を差し引く簡易的な計算方式(Einnahmenüberschussrechnung)で利益を計算できます。日々の売上と経費を記録しておき、年末にまとめてEÜRを作成し、Einkommensteuererklärungとあわせて提出します。

経費として記録しておきたいもの

パソコン、ソフトウェアライセンス、オフィス家具、専門書、コワーキングスペースの利用料、業務用の交通費、仕事のための研修費用など、事業に関連する支出は経費として計上できる可能性があります。領収書や請求書は必ず保管しておきましょう。

確定申告の期限

フリーランス・個人事業主も、会社員と同じく、自分で申告する場合は原則として翌年の7月31日が申告期限です(2025年分は2026年7月31日)。税理士やLohnsteuerhilfeverein(税務相談協会)に依頼する場合は、さらに期限が延びます。

Gewerbetreibendeの場合は、Einkommensteuererklärungに加えて、Gewerbesteuererklärungとの併せた提出も必要になります。

健康保険(Krankenversicherung)にも要注意

会社員から独立すると、健康保険の扱いも変わります。多くの日本人は、法定健康保険に任意継続で加入する(freiwillige gesetzliche Krankenversicherung)か、民間保険(private Krankenversicherung)を選ぶことになります。

法定健康保険に任意加入する場合、たとえ実際の収入が少なくても、最低算定基準額(Mindestbemessungsgrundlage)という下限が設定されており、これを下回る収入でも一定額以上の保険料がかかる仕組みになっています。

2026年のこの最低算定基準額は月額1,318.33ユーロで、これに基づく最低保険料はおおむね月270〜280ユーロ程度です。独立初期で収入が不安定な時期は、この固定費が思ったより大きな負担になることがあるため、事前に見積もっておくことをおすすめします。

ドイツの健康保険に関しては、別記事「ドイツの健康保険 公的保険と民間保険」で解説しています。

 

在独邦人にとっての重要なポイント ビザとの関係は?

税務上の登録(Freiberufler/Gewerbetreibende)と、滞在許可上の「自営業が認められているかどうか」は別の手続きです。

ビザの種類によっては、フリーランスとして働く前に外国人局(Ausländerbehörde)への確認が必要な場合があります。この点はフリーランスの申請、税金の話とは別に、事前に確認しておきましょう。

日本国内の収入がある場合

日本での副業収入や不動産収入がある場合、ドイツでの申告義務や日独租税条約上の扱いを確認する必要があります。この点は別記事「ドイツの所得税|給与明細からSteuererklärungまで、日本人向けに仕組みを解説」の「日本を含むドイツ国外の収入を整理する」の項目も参考にしてください。

専門家への相談タイミング

独立の初期段階で、一度Steuerberaterに相談しておくと、Freiberufler/Gewerbetreibendeの判定、Kleinunternehmerregelungを使うかどうかの判断など、後から修正しにくい部分を早めに整理できます。


主な引用・参照リンク

連邦財務省(Bundesministerium der Finanzen / BMF) Die wichtigsten steuerlichen Änderungen 2026[↗︎]
ELSTER(ドイツ税務当局の公式電子申告ポータル)Unternehmen gegründet oder selbständig gemacht? [↗︎] 
Hauft Neue Entfernungspauschale ab 2026: Auswirkungen auf die Entgeltabrechnung[↗︎]

ドイツ全土で配布中|無料情報誌「NIPPONip」の公式ブログ。ドイツで暮らす、旅する方に役立つ情報発信中!インスタグラム@nipponip_germany
NIPPONip Editor
NIPPONip Editor
NIPPONipの編集部 ドイツ在住歴15年以上、好きなドイツ食材はシュパーゲル。
error: Content is protected !!