
夏の訪れとともに、ミュンヘンの街角のカフェには路上にテーブルが並び、ビヤガルテンにも人々の声と笑い声が響き渡ります。そんな中でもフローマルクト、つまり蚤の市は、ミュンヘンの夏の風物詩のひとつ。今回は夏のフローマルクト攻略法:ミュンヘン編をお届けします。
ミュンヘンの夏は、フローマルクトで始まる。
ドイツ語で「Flohmarkt(フローマルクト)」とは、直訳すると「ノミの市場」ですが、もちろん虫を売っているわけではありません(笑)。いわゆる蚤の市やフリーマーケットのこと。古着やアンティーク雑貨、日用品、家具など、さまざまな品物が個人や小さな業者によって並べられる、地域密着型の青空マーケットです。
日本でも「フリマ」や「蚤の市」という言葉で親しまれていますが、ドイツでは都市ごとに特色があり、週末ごとに大小さまざまなフローマルクトが開かれています。
筆者の住むミュンヘンでも、市内のいたるところで週末ごとに開催され、古着やアンティーク、レコード、子どものおもちゃからヴィンテージの食器まで、あらゆるモノが売り買いされる光景は、まるで宝探しの迷宮のようです。
「ただの古いガラクタでしょ?」と思うなかれ。
そこには、時間をかけて大切にされてきた品物と、それを手放す人・受け取る人のストーリーが詰まっています。
さらに、最近はサステナブルな暮らしを志向する若い世代や、物価高でお得な買い物を楽しみたいファミリー層もフローマルクトに注目。いま改めて、蚤の市の価値が見直されています。
今回は、ミュンヘン在住30年の筆者が、夏のフローマルクトを120%楽しむための「攻略法」をお伝えします。
そのほかのドイツ・フローマルクト情報記事もまとめています。
ミュンヘンで行くべき蚤の市5選
オリンピアパークのフローマルクト(Parkharfe)
オリンピアパーク内「Parkharfe」で開催されるフローマルクトは、毎週金・土の7時~16時に無料で楽しめる盛大な蚤の市です。早朝7時からのスタートが狙い目。午後になると混雑するため午前中がベスト
約450のブースがずらりと並ぶ、ミュンヘン最大級の常設蚤の市です。出店者はプロも多く、家具やレコード、工具まで品揃えが幅広いのが特徴。思わぬ名品がひょっこり見つかることも。
約450店が古本や家具、工具、自転車など幅広く出店し、屋台で軽食も楽しめます。特に早朝7時開始直後が掘り出し物狙いに最適で、午後は混み合うため午前中の訪問をおすすめします。駐車場も整備されており、週末のゆったりしたフローマルクト巡りが楽しめます。
内容 | |
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場所 | オリンピアパーク内「Parkharfe」 Ernst‑Curtius‑Weg 1付近 オリンピアパークHP |
開催日時 | 毎週金曜・土曜 7:00〜16:00 (大きなイベントや祝日中止の場合あり) |
入場料 | 無料 |
アクセス | 地下鉄 U1「Westfriedhof」U3「Olympiazentrum」 路面電車20・21「Olympiapark West」下車後徒歩5〜10分 |
ポイント | 大きな駐車場あり(1日約5€) |
リーゼンフローマルクト(Riesenflohmarkt)
テレージエンヴィーゼ(あのオクトーバーフェスト会場!)で毎年春に一度だけ開催される巨大蚤の市(ミュンヘン最大規模)。
規模はなんと1600店以上。目が回るような品数ですが、早朝に行けばまだ地面が乾いておらず、スニーカーが泥だらけになるのもご愛嬌。古着・アンティーク・雑貨などジャンル多彩。広大な会場を歩き回る“散策力”が試されます。
Bayerisches Rotes Kreuzが主催し、収益は社会貢献に寄付されます。お部屋の片付けもできて、出店料は社会貢献にもなります。
内容 | |
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場所 | テレージエンヴィーゼ(Theresienwiese) オクトーバーフェスト会場 Riesenflohmarkt HP |
開催日時 | 毎年春(4月末〜5月初旬)に1回開催 |
入場料 | 無料 |
アクセス | U4/5「Theresienwiese」駅下車すぐ、ほか路面電車・バスも充実 |
ホーフフローマルクト(Hofflohmarkt)
ミュンヘンらしい“地元感”を味わいたいなら、これ。各地区ごとに週末ごとに開催される「中庭フロマ」。住宅街の一角やアパートの中庭に、地元住民がテーブルを出して気軽に出店します。売る人も買う人もリラックスしていて、ピクニック気分で楽しめます。
ホーフフローマルクトとは? 〜ミュンヘン発・ご当地フリマ文化〜
「Hofflohmarkt(ホーフフローマルクト)」とは、直訳すると「中庭の蚤の市」。でも実際は、もっと温かみのあるイベントです。これは、決まった一か所で開催される巨大なフローマルクトではなく、ミュンヘン市内の各住宅街で開催される“地域ごとのフリーマーケット祭り”のこと。
もともとは、2003年にグロッケンバッハ地区(Glockenbachviertel)で始まった小さなご近所イベントが発祥です。住民が自宅の中庭や玄関前にテーブルを出して、もう使わなくなった品々を売る――という、まさに“ローカルでエコ”な試みでした。
それが「顔が見える売り買い」「地域とのつながりを感じられる」「車で移動しなくても楽しめる」という理由で評判を呼び、いまではミュンヘン全域の50以上の地区で、春から秋にかけて週末ごとに開催されています。Altstadt、Schwabing、Haidhausen、Sendlingなど、それぞれの街区が「この週はうちがホスト!」とばかりに盛り上がるのが特徴です。
出店するのは地元の一般家庭ばかりなので、売られているのも本や子供服、キッチン用品、古いレコードや祖父母の食器など、家庭の歴史が垣間見えるアイテムばかり。ときどき「この家ってこんな中庭だったんだ!」という発見があったり、ベランダ越しに声をかけ合ったり。市というより、“ご近所の休日ピクニック”のような雰囲気があります。
ちなみに、開催日程やマップは公式サイト(www.hofflohmaerkte.de)で公開されており、PDFの町内地図を片手に「住宅街探検+宝探し」という楽しみ方もできます。
クリムス&クラムス(Krims & Krams)
ミュンヘンのアート&カルチャー拠点 Bahnwärter Thiel(バーンヴェルター・ティール) で開催される、ちょっとエッジの効いた蚤の市です。会場は、クラブや文化イベントが行われる複合空間で、屋外スペースにはカラフルなコンテナが並び、アートや音楽と融合した蚤の市が展開されます 。
- ユニークな掘り出し物:衣類、レコード、小物、コスチュームなど、ちょっと個性的なアイテムあり
- 音楽とコラボ:ライブDJやダンスがあり、買い物しながらフェスのように楽しめるのが魅力
- 食&ドリンクも手軽:会場内にバーや軽食屋台も並び、ゆったり過ごせる空間構成
- フリップなカルチャー空間:クラブやストリートアート等の雰囲気が漂う場所なので、蚤の市以上の刺激を体験!
ヴィンテージ衣料やアート作品、リユース小物なども多く、DJや音楽も流れ、ダンスもOKな“蚤の市フェスティバル”と言えるかもしれませんね。
「普通の蚤の市じゃ物足りない」アートや音楽を楽しみながら、ドイツの若者カルチャーを体験しつつ、ヴィーガンフードやクラフトビールの屋台で味覚も満足したい人におすすめです。
なお、自分でスタンドを出す場合はオンラインで「Stand buchen(出店登録)」が可能です。
内容 | |
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場所 | Bahnwärter Thiel Tumblingerstraße 45, 80337 München(シュラハトホーフ地区) 公式HP |
開催日時 | 毎月1回程度 主に夏と秋の日曜日の午後(14:00〜19:00) |
入場料 | €3.50(大人) 14歳以下は入場無料 |
アクセス | U3/6「Implerstrasse」「Poccistrasse」駅から徒歩10分、 バス62「Tumblingerstraße」駅から徒歩4分 |
ポイント | ファー類の持ち込みや販売は禁止されています |
Auer Dult(アウアー・ドゥルト)
年3回、マリエンキルヒェ広場で開催されます。テーブルウェア中心の蚤の市と、移動遊園地・屋台が融合した“伝統市”。約290店が並び、陶器やアンティーク雑貨、骨董家具が豊富。陶器や食器の掘り出し物を狙ってみては?クラシックなフローマルクトは、現地の人にはもちろん、観光客にも人気。
子ども向けの移動遊園地や屋台も並び、家族連れにもおすすめです。9日間と長丁場なので、日替わりで訪れても◎
内容 | |
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場所 | Mariahilfplatz (アウ地区/Au‑Haidhausen) |
開催日時 | 年3回 Maidult:4/26–5/4 Jakobidult:7/26–8/3 Kirchweihdult:10/18–10/26)各9日間 |
入場料 | 入場無料 |
アクセス | 路面電車18号線「Mariahilfplatz」 バス52/62「Mariahilfplatz」下車すぐ 駐車場は近くに少ないので公共交通がおすすめ |
ポイント | ファー類の持ち込みや販売は禁止されています |
アウアードゥルトのなかでもキルヒヴァイードゥルトについて、詳しく書いた記事はこちら
準備がすべて!朝から楽しむ“蚤の市モード”

(c)pixabay-fleamarket
フローマルクトを満喫するために、出発前にやっておきたい準備があります。
✔ 現金を用意する
現金しか使えないお店がほとんどです。特に、1ユーロ・2ユーロ硬貨や5ユーロ札など、小額紙幣が重宝されます。ATMは混雑するので、前日に多めに準備しておきましょう。
✔ 歩きやすい靴&両手の空くバッグ
舗装されていない場所や芝生の上を歩くことも。リュックやショルダーバッグで両手を空けて、試着や交渉に備えます。
✔ 出発は早朝がベスト
特に人気エリアのフロマは、朝9時には混雑が始まります。掘り出し物を狙うなら、開始直後の7時〜8時台が勝負。
交渉こそ醍醐味!“値切り”を楽しもう
フローマルクトでは、値札はあってないようなもの。交渉の余地が大いにあります。
- 「まとめて◯ユーロになりませんか?」:2〜3点を一緒に買うときに効果的。
- 「あとで来ます」は通用しない:人気アイテムは5分後には他の人の袋の中。即決が吉。
- 「もうすぐ帰るんですけど…」と終盤に話しかける:15時以降は在庫処分モードの出店者も多く、驚きの値下げに出会えることも。
値段交渉が苦手でも、「これはどこから来たの?」「何年くらい使ってたの?」と声をかけることで、品物の背景を知ったり、店主との会話が弾んだり。買い物以上の楽しみがそこにあります。
出店側としても、こんなに楽しい!
筆者は毎年夏、街中に住む友人の近所で開催されるホフフローマルクトに“便乗出店”しています。家に眠っていた本やCD、着なくなった服、雑貨類をトランクに詰めて、友人のテラスで一緒に販売。
「これ、おしゃれ!でもサイズが…」と悩む人、「子どものおもちゃ、ちょうど探してたのよ!」と目を輝かせる親子。値段交渉の合間には、友人とのおしゃべり。手作りのレモネードを分け合ったり、通りすがりのワンちゃんとじゃれたり…。売上はそれほどでもなくても、心が満たされる午後です。
モノを手放すことでスペースも心も軽くなるし、誰かにとっての“ちょっといい出会い”に立ち会えることも、蚤の市の醍醐味のひとつです。
夏の蚤の市+αの楽しみ方
フローマルクト巡りのあとは、近くの公園やカフェで戦利品を広げて眺めてみましょう。
- オリンピアパークなら芝生に寝転んでブランチ
- ホッフローマルクトの後は、友人宅のベランダでのんびりティータイム
- アウアー・ドゥルトの後は、教会の前でアイスクリーム片手に一休み
「どんな人がこれを持っていたんだろう」
「これを手に取った瞬間のワクワクが忘れられない」
そんな気持ちで、ものと向き合う時間もまた、かけがえのない夏のひとときです。
買う・売る・話す、全部が楽しい“市の魔法”
蚤の市は、単なる買い物以上の体験です。モノと向き合い、人と会話し、街の空気を感じる。観光でも日常でも、「今この瞬間」がちょっと豊かになる――それがフローマルクトの魅力です。
この夏、あなたもミュンヘンのどこかの通りで、素敵な出会いに巡り合えますように。