ドイツで働き始めて給与明細を見たとき、「税金が思ったより引かれている」「Steuerklasse(税クラス)って何?」「自分は確定申告をしなければいけないの?」と戸惑う日本人は少なくありません。ドイツの給与からは所得税だけでなく、年金保険や健康保険などの社会保険料も差し引かれます。また、結婚や子どもの有無、副業、ドイツ国外の所得などによって、必要な手続きが変わることもあります。
最初から細かい制度をすべて覚えようとする必要はありません。まずは、自分に関係する部分から確認していきましょう。
なお、今回の記事は会社員(給与所得者)の所得税(Lohnsteuer)についてのみ、自営業・フリーランスの方(Einkommensteuer)については後日別記事にてまとめる予定です。
ドイツで働く日本人が、まず確認したいのは次の5点です。
この記事では、この5つを順番に確認しながら、ドイツの所得税の仕組みを解説します。
ドイツで働き始めたら、最初に確認したいのが給与明細です。
日本でも給与から税金や社会保険料が差し引かれますが、ドイツでは項目名がドイツ語で表示されるため、何が引かれているのか分かりにくいことがあります。代表的な項目は以下の通りです。
まず理解しておきたいのは、給与から引かれている金額のすべてが所得税ではないということです。基本的には、
額面給与(Brutto)- 税金 - 社会保険料(Sozialversicherung)= 手取り給与(Netto)
という仕組みです。特にドイツに来たばかりの人は、「税金が高い」と感じたときに、まずLohnsteuerとSozialversicherungを分けて確認すると、自分の給与の仕組みが分かりやすくなります。
*社会保険料(Sozialversicherung)は、主にこれらの保険:健康保険(Krankenversicherung)年金保険( Rentenversicherung)雇用保険(Arbeitslosenversicherung)介護保険(Pflegeversicherung)労災保険(Unfallversicherung)
現在、Solidaritätszuschlag(SolZ)はすべての会社員に一律で課されているわけではありません。2026年は、年間の所得税額が20,350ユーロ(夫婦合算の場合は40,700ユーロ)を超えない限り、SolZは課されない仕組みになっています。
所得税額に応じて免除・軽減される仕組みがあるため、給与明細に表示されない人も少なくありません。「ドイツでは全員が所得税に加えてSolZを払う」という理解は、現在の制度では正確ではありません。
教会税(Kirchensteuer)は、一定の宗教団体や教会に構成員として登録されている人に関係する税金です。洗礼や結婚式を教会で行いたい場合、構成員でないとできないなどの制約が生じることがあります。日本から移住してきた人が自動的に支払うものではありません。
ただし、住民登録(Anmeldung)の際に宗教に関する情報を記入する項目があります。日本ではなじみのない制度なので、内容が分からないまま記入しないよう注意しましょう。
次に確認したいのが、給与明細に記載されているSteuerklasse(税クラス)です。主に毎月の給与からLohnsteuerを計算するための区分で、主な税クラスは以下の6種類です。
主に独身者などが対象です。日本から単身でドイツへ移住して就職した場合は、この区分になるケースが一般的です。
一定の条件を満たすひとり親が対象です。
既婚者や登録パートナーに関係する税クラスの組み合わせで、夫婦の所得に差がある場合などに選択されることがあります。
ただし、毎月の給与から引かれるLohnsteuerが少なくなる場合があっても、年間の最終的な税額がその分だけ減るとは限りません。条件によっては確定申告(Steuererklärung)の結果、追加納税になることもあります。
夫婦・登録パートナーの双方が給与を得ている場合などに利用されます。収入が近い夫婦では、この税クラスが選ばれることがあります。
IV mit Faktor(ファクター方式)では、夫婦の所得状況を考慮して毎月の給与税を年間の見込み税額に近づける仕組みがあります。
複数の雇用主から同時に給与を受け取る場合、メインの勤務先以外に適用されることがあります。副業の給与明細を見て「なぜこんなに税金が引かれているのか」と感じた場合は、Steuerklasse VIが関係している可能性があります。
Steuerklasseは、主に毎月の給与からどの程度Lohnsteuerを天引きするかに関係します。
年間の最終的な所得税は、所得や控除などを総合して計算されます。そのため、「税クラスを変えれば年間の税金が必ず安くなる」とは言えません。
夫婦の場合は特に、毎月の手取りだけで判断せず、Steuererklärungを含めた年間の税負担で考えることが大切です。
ここまで給与明細とSteuerklasseを確認したら、次に所得税そのものの仕組みを見てみましょう。
ドイツの所得税は累進課税です。ただし、税率表を見るときに注意したいのは、基準となるのが単純な年収ではなく、原則としてzu versteuerndes Einkommen(ツー・フェアシュトイアーエンデス・アインコメン/課税所得)だということです。
求人票や雇用契約書に書かれているのは通常、額面給与(Bruttogehalt)ですが、所得税を計算する際には、一定の控除などを考慮した後の課税所得が基準になります。
2026年の所得税は、単身者の場合、概ね次の区分で計算されます。
| 課税所得 (zu versteuerndes Einkommen) |
2026年の税率区分 |
| 12,348ユーロまで | 所得税0% |
| 12,349~17,799ユーロ | 累進税率 |
| 17,800~69,878ユーロ | 累進税率 |
| 69,879~277,825ユーロ | 原則42%の税率帯 |
| 277,826ユーロ以上 | 45%の税率帯 |
※夫婦で合算申告(Zusammenveranlagung)する場合、基礎控除は24,696ユーロ、42%の税率帯は139,758ユーロからとなるなど、金額はそれぞれ2倍になります。
2026年の基礎控除に相当する課税最低限(Grundfreibetrag)は12,348ユーロです。前年の12,096ユーロから引き上げられました。
また、所得が高い税率区分に入ったからといって、収入全体に42%や45%が一律にかかるわけではありません。所得が増えるにつれて、該当する部分だけにより高い税率が適用される仕組み(超過累進課税)です。
ドイツ連邦財務省(BMF)所得税計算シミュレーター[↗︎]で、自分の支払うべき所得税はいくら位になるかをシミュレーションすることも可能です。(*目安、参考に)
毎年Steuererklärungをするかまだ決めていない人でも、通勤日や在宅勤務日は記録しておくと便利です。仕事に関連する支出や勤務形態によっては、税務上考慮される可能性があるためです。
自宅と第一勤務先(erste Tätigkeitsstätte)の間を通勤している場合、通勤距離に関する定額控除(Entfernungspauschale)が関係する可能性があります。
2026年1月1日からは制度が変わり、自宅と第一勤務先の間について、片道1kmあたり0.38ユーロを、これまでのような距離による段階(20kmまでは0.30ユーロ、21km目から0.38ユーロ)を設けず、1km目から一律で適用する仕組みになりました。
ここで間違えないでおきたいのは、交通費の実費をそのまま申告する制度ではないという点です。基本的には、
などをもとに計算します。公共交通機関、車、自転車、徒歩のいずれでも同じ単価が適用されますが、実際に申告する際は自分の条件を確認しましょう。
自宅で仕事をする日がある場合は、ホームオフィス控除(Homeoffice-Pauschale)も確認しましょう。2026年も、条件を満たす在宅勤務日について、1日6ユーロ、年間最大1,260ユーロの日額定額控除(Tagespauschale)が認められる仕組みが続いています。
同じ日に通勤定額控除とホームオフィス定額控除を両方使うことはできません。出勤日、在宅勤務日、出張日をカレンダーや勤務記録に残しておくと、後から確認しやすくなります。
会社員には、仕事に関連する支出を考慮する必要経費(Werbungskosten)という考え方があります。2026年の会社員向けの一律経費控除(Arbeitnehmer-Pauschbetrag)は1,230ユーロです。
仕事のために自分で購入したパソコン、モニター、専門書、その他の仕事用備品などがある場合は、領収書などを保管しておくとよいでしょう。ただし、すべての購入品がそのまま控除対象になるわけではなく、仕事での使用割合など、個別に条件を確認する必要があります。
日本からドイツへ移住した人が特に注意したいのが、ドイツ以外にある収入です。例えば、日本の不動産収入、日本企業から受け取る給与、副業収入、日本の年金、金融商品の収益、投資の収益などがある場合です。
ここで注意したいのは、「日本で税金を払っているから、ドイツでは何もしなくてよい」とは限らないことです。税務上どちらの国の居住者と扱われるか、所得の種類は何か、日本とドイツの租税条約ではどのような扱いになるかによって、申告の必要性が変わります。また、ドイツで課税されない所得であっても、税率の計算に影響する場合があります(累進留保)。
日本に収入源が残っている人は、Steuererklärungを始める直前ではなく、ドイツ移住後できるだけ早い段階で収入の種類を整理しておくことをおすすめします。
最後に、自分にSteuererklärungの義務があるかどうかです。会社員だからといって全員が必ず提出するわけではありませんが、条件によって申告義務が発生します。
代表的なケースとしては、
などがあります。日本やその他の国に所得がある人も、ここで確認が必要です。
Steuererklärungの提出義務があり、税理士などに依頼せず自分で申告する場合、2025年分の申告期限は2026年7月31日です。翌年分以降も、基本的には翌年の7月末が期限となります。コロナ禍のように、例外的に期限が延長されることもあるため、その年の最新情報を確認しましょう。
税理士や税務相談協会(Lohnsteuerhilfeverein)などの専門家に依頼する場合は、期限が異なります(2025年分は2027年3月1日が目安)。また、申告義務がある人と、任意で還付申告をする人でも期限の扱いが異なります。
申告が必要になった場合、または任意で申告する場合は、次のような資料を準備します。
会社員の場合、年間の給与と給与から天引きされた税額などが記載された書類
通勤距離や出勤日数、在宅勤務日など
仕事のために自分で購入したものがある場合
日本を含め、給与以外の収入がある場合は、その内容と金額
ドイツの公的な電子申告システムとして知られているのが、 ELSTER[↗︎](エルスター・オンライン税務署)です。そのほかに、民間の税務申告ソフトやアプリもあります。
ドイツ語での税務用語に不安がある場合、そして特殊なケースに当てはまる人は、入力画面だけを見て「これで合っているだろう」と判断するのは避けたほうがよいでしょう。
申告内容が特殊なケースになりやすい例:日本に所得がある、副業をしている、不動産収入がある、結婚や離婚などで家族状況が変わった、ドイツ国外との税務関係があるなど。
申告した結果は、還付を受ける・追加で納税する・差額がほとんどない、のいずれにもなり得ます。稀に追加納税が必要になることもあるので、「Steuererklärungをすれば必ずお金が戻ってくる」というわけではありません。
ドイツの所得税は、毎月の給与からLohnsteuerが引かれて終わりではありません。年間の収入や家族構成、通勤・在宅勤務、その他の所得などによって、Steuererklärungが必要になる場合があります。
特に日本からドイツへ移住した人は、日本のように「会社が年末にすべて調整してくれる」と考えず、自分の状況を確認することが重要です。
まずはこの記事の冒頭に戻り、5つの重要事項を確認してから、自分に関係する項目だけを詳しく確認していくと、ドイツの税金の仕組みが整理しやすくなります。
ちなみに、2026年9月2日に連邦政府が2027年以降の所得税改革案を発表していますが、これは将来の制度変更案であり、この先どうなるか分かりませんが・・・一般市民にとってより良い、そしてわかりやすい所得税改革を期待したいところですね。
参考・引用
Bundesfinanzministerisum(BMF) 所得税タリフ[↗︎]
Bundesfinanzministerisum Ihr persönlicher Lohn- und Einkommensteuerrechner [↗︎]
ドイツ暮らし11. September 2026ドイツの所得税|給与明細からSteuererklärungまで、日本人向けに仕組みを解説【2026年版】
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