ドイツのじゃがいもは美味しいと評判ですが、当然ポテトチップスも美味しいはず? 本誌NIPPONip vol.62 で掲載したポテトチップス・カタログ追加編、さらに、ドイツのポテトチップスのルーツを遡ったり、人気スナックブランド、LorenzのFabrikladenに行った際のレポートもお届けします。
ドイツのポテトチップス
みなさんはポテトチップス、好きですか? ポテトチップス・カタログの記事のために、食べ比べを実施したのですが、チップス好きとしては、まさに至福のひとときでした! 本誌スペースの都合で紹介できなかったものをご紹介します。
【ドイツ定番】
Chipsfrisch -Sour Creamは、繊細な味付けと軽い食感にこだわった薄切りチップス。「塩味ひかえめでサワークリームの風味が際立つ。口の中でサワークリームの香りも広がる」
【海外勢力】
Tyrrells sweet chilli & red pepper は、2002年、イギリスのじゃがいも農家が始めたブランド。創業から数年で海外に販路を拡大、その味と品質が評価され英国内外で数々の賞を受賞した。「厚めの皮付きじゃがいもに、パウダーがしっかりまとわりついていて、濃い味好きにはたまらない。スターアニスなど香辛料の香りも◎」
KETTLE CHIPS Sea Salt & Balsamic Vinegarは、アメリカ・オレゴン州に本社をおく、自然派ポテトチップスの筆頭ブランド。厚切りじゃがいもを低温でじっくりあげるケトル製法が特徴。「じゃがいもをそのまま揚げた感が強く、重い歯応え。味付けが全体的に薄く、バルサミコの風味も感じられない。油っぽさが気になる」
ドイツの定番のフレーバーといえば?
今回食べ比べたのは、全12種類。どれを紹介しようかリサーチ中に改めて思ったのが、パプリカ味がじつに多いこと。Splendid Research社の調査によると、チップスを食べる人のまさに60%がパプリカ味に手を伸ばすそうで、ドイツの基本フレーバーといえるでしょう。
お味は、プレーンな塩味チップスにほんのり甘いコクが加わった感じ。がつんとした味ではなくて、全体的に優しい。オーソドックスだから、それこそ定番になるのかも。ただ、日々チップスを追い求めている私としては、新しいフレーバー、新しいブランドの方につい触手がのびてしまいます。
それぞれベスト3を選んでみたら…
さて、食べ比べでは、味の感想のほかに、それぞれベスト3を出していたので、人気だったものを挙げてみましょう。
総合評価1位
全員が、1位か2位とつけたのは「Lorenz Naturals Balsamico」でダントツの人気!バルサミコのダイレクトな酸っぱさの中に、ほんのり甘みもあって、一口食べて皆おいしいと大絶賛。パリッと軽い歯触りが最高でした。
酸っぱさが人気
「Chio SALT&VINEGER CHIPS STYLE」も堂々のベスト3入り。湖池屋のスッパムーチョを思わせる酸味に強めの塩が効いていて、これまたクセになるお味。しっかり味なのに、ちゃんとじゃがいもが感じられるのも憎い。
オーソドックス定番部門
これらとは対照的に、オーソドックスなおいしさで、高評価だったのが、「Alnatura Bio Kartoffelchips Meersalz」。適度な塩けで、じゃがいもの味が引き立ち、まるでおいしいじゃがいもを食べているかのよう。
あまり低評価はなかったのだけれど、期待はずれだったのが、「KETTLE CHIPS SEA SALT & Balsamic Vinegar」。自然派ポテトチップスで、レビューも高かったので、楽しみにしていたものの、何せ味がしなかった…。
じゃがいも揚げた感はいいのだけど、少々油っぽく、重い歯応え。うーーん、もしかしたら評判がよかったのは、他の味だったのかも?
今回は、じゃがいものチップスのみで食べ比べをしたけど、プリングルスのような成形したじゃがいもチップス、野菜のチップス、はたまた、各スーパーなどが発売しているプライベートブランドのチップスなど、まだまだたくさんあります。次回は違うカテゴリーで食べ比べしても面白そう!
ドイツのポテトチップス史の鍵を握る”ミスターチップス”!
さて、ドイツのチップスの歴史をたどっていくうちに、じつに興味深い人物を発見しました。ドイツで初めてポテトチップスを製造し、この分野の先駆者といわれるハインツ・フレスナー。人呼んで、”ミスターチップス”!!
―-自動車のエンジニアだった氏は、1939年、第二次世界大戦で徴兵されるも、終戦後に帰還。アメリカ軍が祖国から供給されるクラッカーが、長い船旅のために柔らかくなってしまうことに着目。そこで、彼らのためにポテトチップスを作ることを思い立つ。
はじめは自家製造していたが、1951年、ヨーロッパで初のポテトチップス製造工場を構え、Flessner KGを設立。ドイツで製造された初めてのポテトチップスをアメリカ軍に提供した。
また後に、Lay`sを扱うフリートレー社の創業者(!)であるハーマン・レイと出会い、関連するライセンスを取得し、機械を譲り受けた氏は、1959年、米軍に販売していたポテトチップスをドイツ人向けに販売するようになった(このときのフレーバーがパプリカ!)。
1964年には、有名ビスケットメーカー、Bahlsenとパートナーシップを結び、ドイツ最大級のポテトチップス製造者として名を馳せた。―-
大仰な愛称と思いきや、ミスターチップスと呼ばれるに値する、輝けるチップス人生! 彼なしに、ドイツのポテトチップスの歴史は語れないのですね。
ミスターチップスのFablikladenへ行こう!
The Lorenz Bahlsen Snack-Worldと社名を改めて、今もなお市場を賑わせている氏の会社。創業地であり現在も会社を構えるNeu-Isenburgは、フランクフルトの隣町で、我が家からすぐ近く。
工場見学でもやってないかなーと調べると、工場見学はないが、Lorenz Fabrikladenがありました! 工場のお店なら、お値打ち品があるに違いないと、早速お店へ繰り出すことに。
車のナビを頼りに向かうと、Neu-Isenburgのメインストリートではなく、オフィスビル建ち並ぶ一角へと誘導されていきます。
否応無しに胸が躍る、ポップな看板!そして着いた先は、倉庫と見紛うほどの簡素な入り口。勝手にアウトレットを想像していたけれど、工場付近で、そのまま新製品を置いて売っちゃえ!といった方が合ってるかもしれない(苦笑)。
中に一歩踏み入れば、段ボールのまま無骨に並ぶスナックたちが! やはり倉庫っぽいのだけど、そのスナックたちの壮観な並びっぷりに圧倒されます。箱ごと持っていって~と言わんばかり(言ってないけど・笑)。
入り口付近には、スナックを詰め合わせたお得セットが鎮座し、その脇には、スーパーではまだ見たことのないフレーバーのチップスがズラリお出迎え。
私がきょろきょろしている間に、普段はチップスに見向きもしない夫がじゃんじゃか商品をかごに入れていてびっくり。チップスに興味のない人まで惑わせる魅惑のチップス空間、恐るべし!!
立ち止まらなければ、5分もかからず見終わってしまう、こぢんまりした店内。だけど、バーゲン品や新製品、通常とは規格の違うスペシャルサイズ(通常より小さめサイズなど)といったラインナップで、お手軽に新たなお菓子に出会えるのが最大の魅力。
Neu-Isenburg以外にも、ドイツ国内に点在しているので、近くを通りかかる際にでも、ぜひ立ち寄ってみて!
Neu-Isenburg | |
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住所 | Gutenbergstr. 8 63263 Neu-Isenburg |
開店時間 | 月〜金 10:00 – 18:00, 土 10:00 – 16:00 |
HP | https://lorenz-snacks.de/fabrikladen |
*当記事内全ての画像は著者撮影