ドイツ、コロナ危機のなか、トイレットペーパーについて考えてみよう

– Coronakrise, Hamsterkäufe und Toilettenpapier – 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機のまっただなか、トイレットペーパーはドイツ全土で品薄状態が続き、貴重なリソースのひとつとなりました。しかし、私達には本当にこの紙でできたアイテムが必要なのでしょうか? 緊急時にどんな代替手段があるのか考えてみました。

トイレットペーパーは本当に必要か?

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2020年3月現在、新型コロナウィルスによる危機により、ドイツ全土で Hamsterkauf – 「ハムスター買い」と呼ばれる買い占め行動が発生しています。ハムスターが食料を貯め込むように、人々も緊急時に備えて、大量に買い込んでいることから名付けられた言葉です。

中でも品薄状態が続くのは、トイレットペーパー、各種パスタ、米、小麦粉など、ある程度保存が利くアイテム。これらの品については、3月初旬から、あちこちのスーパーやドラッグストアの棚が空っぽになっている状態が恒常的になっているようです。

21世紀の現在では生活必需品になっているトイレットペーパーですが、そもそも一昔前は、これがなくても生活できていたときもあったのではないでしょうか?

現代でも、トイレットペーパーの代わりになるアイテムというのはあるのでしょうか?

トイレットペーパーの歴史

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トイレットペーパーが発明される前、人々は主にトイレを使用した後に天然物を使用していました。 これには、草、葉、干し草、スポンジ、平らな石、雪や苔が含まれていました。

ローマ人は天然の海綿を棒に結び、バケツに入れた塩水に浸して使用しました。

一方ドイツ人は、藁と葉を好みました。 中世では、苔がよく使用され、お金持ちは、布片や羊毛を使いました。

実際にドイツでは、2008年にバイエルン州北部にあるハイムブッヘンタル(Heimbuchenthal)近くのモーレ(Mole)城での考古学的発掘中に、トイレットペーパーと同等の役割を果たしたと思われるこぶしサイズの苔状の有機遺物が、先住民の居住地の堀から発見されたそうです。

ところで、人類最初のトイレットペーパーは、14世紀の中国で発明されたと言われています。明の洪武帝のために作られということです。

ちなみに、中国語ではトイレットペーパーは「手紙」(簡体字では「」)というそうです。日本語の意味とだいぶ違いますね。(日本語でいうところの手紙は、中国語で「」と言うそうです。)

1枚ずつの「手紙」のサイズは約0.5平方メートルで、約10万枚が生産されたそうです。

さらに、初めてトイレットペーパーが工場で生産されるようになったのは、1857年のアメリカ合衆国でのこと。やはり一枚ずつの形状で、アロエに浸されたものが箱に詰められて販売されました。

さらにその33年後、現在のようなロール状のトイレットペーパーが、Scott Paper Companyによって製造されました。

ドイツで最初のトイレットペーパーは?

ドイツでは、1928年に最初のトイレットペーパーが市場に登場しました。

メイドインジャーマニーのトイレットペーパーの最初のブランドはHakle でした。当時はガサガサとして硬いクレープペーパーで作られており、柔らかさは劣りましたが、1ロールには1000枚のシートがありました。

1950年代の終わりには、今日でも私たちが知っているティッシュペーパーのような柔らかい紙で作られるようになりました。さらに、1972年には3枚重ねのトイレットペーパーが誕生。以後、市場では3枚重ねが一般的になります。

人は一年間にどれ位のトイレットペーパーを使うのか?

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トイレットペーパーの消費量は、もちろん人によって異なります。たとえば、女性は男性よりも多く消費します。

ドイツの統計用のオンラインポータルである Statista によると、2018年のドイツでのトイレットペーパー消費量を1人あたり年間12.1 kgと計算しています。 各90グラムとして換算すると、約134ロールにあたります。

これはイタリアやフランスに比べるとかなり多い数値だそうです。

ドイツ人よりトイレットペーパーをたくさん消費するのはアメリカ人で、一人あたり年間12.7キログラム(141ロール)ということです。その1回ごと平均使用量は50cm程度だそうです。

日本では、トイレットペーパーの1回での平均使用量は80cmだそうなので、もしかすると総使用量では日本が世界1かもしれませんね。

トイレットペーパーの節約方法は? また代替品は?

では、上記のようなドイツにおける「ハムスター買い」により、トイレットペーパーがレアアイテムとなるコロナ危機の時代には、トイレットペーパーの棚が空っぽになったとききに、他にどのような代替品や選択肢があるのか知りたいと思いませんか?

以下のような方法が考えられます。

ビデを使用する

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たとえば、トイレットペーパーの一人あたり消費量がドイツより少ないフランスでは、人々は古典的なトイレットペーパーの代替品に頼っているようです。フランス人は、ビデをドイツ人よりも頻繁に使用します。

欧州におけるビデの使用については、地理的に明快な分布があると言われており、北部ではまれで、 南部では、標準装備となります。

アルプス山脈をはさんでイタリアと国境を接しているドイツに住んでいる筆者も、旅行中、一歩イタリア側に入ると、お宿のトイレにビデが設置されていて、さすが! と感心した記憶があります。

さらに、ビデには長い伝統があり、 衛生的、という点に関して言えば、北部ヨーロッパのケア習慣よりもはるかに進んでいるといえるのではないでしょうか。

バッシュラッペン(Waschlappen)を使用する

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他にも、水の力を利用する解決策のひとつに、ドイツのタオルコーナーによく売っている、Waschlappen(バッシュラッペン)と呼ばれる親指のないミトンのような袋状になったタオル生地のアイテムを使用する、というものがあります。

このバッシュラッペンは、特にトイレでの使用に限らず、ドイツの人々の身体を清潔に保つために、日常的に使われているアイテムです。

その使い方は、まず温水などで 湿らせて、少量の石鹸またはシャワージェルを塗布し、それで腕などの上半身に始まり、下半身もこすり、洗浄します。その後、バッシュラッペンをよくすすいで もう一度全身をこすります。

平時でも人によっては、上半身用と下半身用に分けて使うこともあるようですので、緊急時にはここにさらに、トイレ用のバッシュラッペンを用意する、ということになりますね。

ただし、外出先では不向きです。もちろん、密封可能なビニール袋に入れて持ち運ぶことができますが、公衆トイレで洗い流したりするのは難しいでしょう。

そして多分、多くの人は、いくらドイツの洗濯機が95度の熱水で洗濯することができるといっても、トイレ目的で使用したあとのバッシュラッペンを、他の洗濯物といっしょに洗濯機に入れることを躊躇するのではないかと思います。少なくとも筆者は考えてしまいますが、あなたはいかがでしょうか?

お尻シャワー(Po-Dusche)を使用する

「お尻シャワー(ドイツ語:Po-Dusche ポー・ドゥーシェ)」ですが、これは「Happy Po ハッピー・ポー(幸せなお尻)」という商品名で、多くのドラッグストアやインターネットで携帯用のお尻シャワーが販売されています。 小さなボトルに水を入れ、それを勢いよく押すことで、自分で洗浄用の水流を作り出すものです。 持ち運びに便利で、旅行にも最適です。 トイレに行く前にボトルに水を入れることを忘れなければ大丈夫です。

トイレ苔(Klo-Moos )を使用する

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トイレットペーパーの代わりになり、水は特に使わず、さらに環境にも優しい代替品としては、「トイレ苔(ドイツ語: Klo-Moos クロー・モース)」があります。

その名の通り、苔を使用するわけです。

また、一部の文化では、ピートモスは月経期間中の月経帯としても使用されているそうです。

苔は特に柔らかく、自然のいたるところに見られます。特にドイツでは、ちょっと郊外へ行けば、自然の雰囲気がたっぷりと残った森や林がある地域も少なくないので、散策の際に自分で採集してくるというのもよさそうですね。

ただし、苔の欠点は、トイレで洗って再利用することがむずかしく、使用後に保管して持ち運ぶことも難しいことです。自宅で一度使用したら使い捨て、それも自宅の庭にコンポストなどの設備があるほうが安心ではないでしょうか。

シャワーを浴びる

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トイレットペーパーが不足した際の、家庭での最も簡単な解決策は水です。

特に男性の場合は、日々のトイレ使用の後に水をかけ、清潔を保つことはそれほど難しくないでしょう。 女性にとっては、排尿ごとにシャワーを浴びるというのは、少々手間がかかりますが、自宅でならなんとか実行できそうですね。

温水洗浄便座を使う

シャワーが無理なら、温水洗浄便座を使えばいいじゃない、ということで、温水洗浄便座(ドイツ語: Dusch-WC ドゥーシュ・ヴェーツェー)の登場です。

これは日本ではおなじみ、「ウォシュレット」や「シャワートイレ」などに代表されるアイテムです。

日本での普及率は70%以上と言われていますが、ヨーロッパではまず見かけません。それでも近年ドイツでも、ドイツのメーカー数社から温水洗浄便座が販売されていて、じわじわとその存在を知られてきています。

ハンカチ、ナプキン(食事用の布巾)、またはキッチンペーパー?

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トイレットペーパーがなくなると、多くの人々は代替品として、まずキッチンペーパーを使おうと思うのではないでしょうか?

そしてそれも入手が困難になったら、布製品を使用することになるのではないでしょうか?

しかしながら、ハンカチ、ナプキン、キッチンペーパーなどは、あまり良くない選択肢と言わざるを得ないでしょう。

トイレットペーパーは環境に優しく、トイレで廃棄するのが簡単ですが、ハンカチやナプキンなどの布製品はそうはいきません。 さらに、健康面での考慮もあります。キッチンペーパーやハンカチは、その表面がトイレットペーパーよりも粗いことも多いですし、カラフルなナプキンではさらに、敏感な粘膜に使用するには良くない染料が使われていることもあるかもしれません。

最後に

メルケル首相も、「第二次大戦以来の危機」と表現した新型コロナウィルスによる非常事態ですが、日々刻々と変わる状況に押し流されず、いま自分のできることを確実にこなしていくことにより、この危機を乗り越えていきましょう。

 

 

 




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