「欧米じゃ転職が当たり前」という意見をよく耳にします。確かにドイツでは終身雇用文化の根強かった日本に比べて「転職」の敷居が少し低いかもしれません。
とはいえドイツ人でも理由もなく転職を繰り返すわけではありませんし、転職回数が必ずしもポジティブに受け取られるとも限らないわけです。場合によっては転職活動時に「マイナス評価」になることも・・。
本稿では、日本人が誤解しがちな「ドイツ人の転職回数事情」について解説をおこないます。
ポジションや業界にもよりますが、ドイツ人の平均転職回数は生涯に3~5回とされています。仕事人生が40年だとしたら、およそ10年に一度転職するようなイメージでしょうか。
ただしこの数字はあくまで平均値であることに注意が必要です。IWCの統計によると、ドイツの平均勤続年数は約11年ですが飲食業では約5年と極端に短く、保険や銀行では15年以上と長い傾向にあります。
また、年代も大きく影響するでしょう。生まれ年に関わらず、一般的に「新卒時(卒業から数年)」のキャリアは安定しないことが常です。実際にドイツの新卒の中にも、最初の数年は職を転々として、本当に自分に見合った仕事を探す期間に充てることがよくあります。
| 項目 | 新卒 | ジュニア(~10年程度) | シニア(10年以上) |
|---|---|---|---|
| 転職頻度 | 複数回 | 2~6年 | 5年以上 |
| 転職に必要なスキル | ‐ | 職務上のスキル | 職務上のスキル、管理職経験 |
| 転職理由 | 適正探し | 給料、キャリアアップ | 給料、キャリアアップ |
新卒期間の「適正探し」を除くと、ドイツ人の多くの転職理由は「給与アップ」と「キャリアアップ」です。特にキャリアアップに関しては、5年前後を基準に一つの「停滞期」に差し掛かるため、そのサイクルでの転職が多いわけです。
日本では「3年は同じ仕事を続けなさい」と言われていますが、実はドイツでも3-5-7Regelという法則があり、実はこれが転職における目安の一つになっています。この法則を元にすると、ドイツ人の転職のボリュームゾーンが5年前後に集中しているのも納得できるかもしれません。この時期になると、多くの人が「停滞」を覚えるようになるのです。
| 項目 | キャリアの意味 | 転職への価値観 |
|---|---|---|
| 3年目 | 仕事を一人前に任せられるまでかかる期間。 | 3年目までは実績を積む期間であり、それ以下の期間での転職は時期尚早であることが多い。 |
| 5年目 | 自分の価値を創造できているかの指標。 | 5年目までに納得のいく成果が出せていない場合、ポジションや適性に問題あり。 |
| 7年目 | キャリアの熟成。自身のスキルから管理者としての道が開かれていく。 | 停滞を感じる人が多い。コンフォートゾーンを離れ新しく学ぶ環境に身を置くことも重要。 |
特に小さな会社ですと、いくら自分にスキルが合っても昇進できない環境であることが少なくありません。俗に言う「ポストに空きがない」状況です。この場合、上司の退職や転職を待たないと自分はいつまでたっても管理職になれないため、新たなキャリアアップのためには別の会社に移ることが考えられます。
ドイツ人の中で、昇進やキャリアアップは待っていて降ってくるものではなく「自分で勝ち取る」ものだとして見なされます。今の環境でそれ以上のキャリアアップ、スキルアップが望めない場合、ドイツ人は「転職」という道を選びます。
そう考えると、数年で「今の会社で学ぶものはもうない」と判断した時点で転職を重ねていくことは至極真っ当な判断と言えるでしょう。ステップアップを志し、常に自身のコンフォートゾーンを離れ勉強を続ける意味での転職は基本的に「ポジティブ」に捉えられます。
| ポジティブな転職理由 | 内容 |
|---|---|
| キャリアパスに関して |
|
| 給料面に関して |
|
逆にネガティブな理由による転職「上司と馬が合わない」「仕事がキツイ」「同僚との軋轢」など、1~2回程度であれば「運が悪かった」で済まされることもありますが、全ての転職理由がこれですと「自分に問題があったんじゃないの?」と見なされるようになります。
そういう意味で、ドイツの転職シーンにおいて「今まで転職●●回しているけど大丈夫?」という質問は意味を成しません。多く転職を行っている人でもロジックがしっかり組み立てられ、実績に繋がっていればプラスですし、少ない転職でも軸がブレブレだとマイナスに繋がるのです。