1年が春夏秋冬の4つではなく、さらに細かく10の季節に分けられるフェノロジカル・カレンダー。前年の11月から約4か月続いた「冬」のあと、2月下旬から3月上旬にかけて、「春先」が始まります。季節学(フェノロジー)という学問に基づいた自然派のカレンダーによる、季節の見分け方をご紹介します。
春先フォアフリューリングに咲く花たち
ドイツで春が始まる兆しがみられるのが「春先」。通常、2月下旬または3月上旬に始まります。
この時期に、ハシバミ(Hasel、ハーゼル)、クロッカス(Krokusse、クロクッセ)、スノードロップ(Schneeglöckchen、シュネーグレックヒェン)などの初春の花がほころび、そして、オウバイ(Winter Jasmin、ウィンターヤスミン)の黄色の花が満開になることで、春の到来を知ることができます。
この時期にドイツで目にすることのできる花をご案内します。
ハシバミ(Hasel、ハーゼル)の花
ハシバミは、カバノキ科ハシバミ属の落葉低木で、日本語では漢字で榛と書かれます。
花の姿は地味ですが、ハシバミの果実はヘーゼルナッツ(Haselnuss)として、世界中で食されています。
欧州で人気のあるパンに塗るスプレッドであるヌテラは、ヘーゼルナッツのペーストを主な原料としています。
甘くておいしいスプレッドの他にも、ケーキやパンの材料などにもよく使われるヘーゼルナッツは、氷河期後、ヨーロッパ北部での分布を拡大した最初の低木といわれており、早くも中石器時代初期に、人類の栄養源のひとつとして欠かせないものでした。
欧州におけるハシバミの文化的意味
ドイツおよび中央ヨーロッパの伝統では、ハシバミは「生命」と「愛」、「豊饒」、「不死」、「春」、「縁起のよい始まり」、「願いが叶うこと」、「幸運」の象徴とされています。
古代ローマでは、ハシバミは平和の象徴として、休戦と平和の交渉の交渉者は、彼らの善意のしるしとして、その手にハシバミの枝を持っていました。
また、ローマとドイツ南西部、そして英国では、結婚式でヘーゼルナッツのバスケットが幸運のお守りと出産の象徴として花嫁に与えられたり、ヘーゼルナッツが結婚したカップルに投げられました。
古代ローマでは、結婚式の際に花婿が客にむかってヘーゼルナッツを投げたとも言います。
クロッカス(Krokusse、クロクッセ)の花
日本では水栽培で楽しまれることの多いクロッカス。ドイツでは庭先のあちこちに半自生しているような姿をよく見かけます。
まだ雪が残っているようなところに、クロッカスが芽を出しているのを見ると、もうすぐ春が来るなと心が躍ります。
アヤメ科クロッカス属のこの花は、いろいろな色や形があり、その数なんと235種あるそうですが、その中のひとつで、その姿かたちの愛らしさだけでなく、ヨーロッパの料理界にも大きな意味をもつのは、サフラン(Safran、ザフラン)でしょう。
サフランの雌しべをスパイスとして使った有名な料理は、ブイヤベース、リゾットアッラミラネーゼ、ルセカッター、パエリアです。
また、ペルシャ料理では、米料理がサフランで色と香りをつけられていることがよくあります。
サフラン入りのハーブティーもいろいろと出ています。
サフランティーには、気分を高め、視力を改善し、記憶力を良くし、癌のリスクを減らし、心臓の健康を保護する能力などがあります。
月経前症候群を和らげ、皮膚に張りをもたらす効果もあるとのことなので、特に女性には気になるお茶ですね。
スノードロップ(Schneeglöckchen)の花
スノードロップは、ヒガンバナ科の植物で、中央および南ヨーロッパから近東さらにコーカサス地方に20種類ほど分布しています。
欧州ではすでに何世紀にもわたり、春の訪れを告げる花として愛されています。
言い伝え
スノードロップにまつわる言い伝えなどもあるので、ふたつご紹介します。
- その年の間に結婚したい場合は、バレンタインデーにスノードロップを家に持ち込んではいけません。
- 好きな人に話しかけることのできない恥ずかしがり屋の若い男性は、その女性の前で襟先にスノードロップを着けたそうです。それを見て女性は、彼の気持ちを知ることができました。
スノードロップの花言葉は、「若く純粋な愛」です。
野生生物の活動状況
- クロウタドリ(Amseln、アムゼルン)は巣を作り始めます。
- ムクドリ(Stare)とひばり(Feldlerchen)が越冬地から戻ってきています。
- モグラ(Maulwürfe)は最初のモグラ穴を掘って、存在を知らせます。
- マルハナバチ(Hummeln)が春の花にやってきます。
おすすめのガーデニング作業
一般的な作業
- 花壇と冷床を準備し、必要に応じて堆肥を用意する。
- 種子の発芽テストと注文をする。
- 芝刈り機とガーデン用の器具の手入れをする。
果樹関連の作業
- 果樹の剪定に最適な時期
- 果樹の植え付け
- 感染を避けるためにフルーツミイラ(去年の果樹の残り)を取り除く。
- 果樹やベリーから挿し木を取る。
野菜とハーブガーデンの作業
- 発芽期間の長い野菜やハーブを屋内または温室で種まきする。
例:ナス、パプリカ、トマト、タイム、ローズマリー、コールラビ、マジョラム、セロリ、サマーリーク、レモンバーム。
- 屋外で低温で発芽する種子の種まきをする
例:行者ニンニク、ベアワート、アンジェリカ。
- 丈夫な野菜やハーブを屋外で種まきする。
例:ほうれん草、サルシファイ、チャイブ、ソラマメ、クレス、大根、大根、カブ、レタス、パースニップ、パセリ。(必要に応じてフリース*で保護すること!)植物のフリースの霜保護カバーのこと
観賞用植物の作業:
- 観賞用の草を刈り取り、多年生植物から枯れた花序を取り除く。
- 成長期間の長い夏の花*を屋内または温室に種まきする。
例:ゼラニウム、ペチュニア、ベゴニア、スイートピー、スナップドラゴン、マリーゴールド、カーネーション、サマーアスター、ベルバイン、ジニアなど、
- 屋外で低温で発芽する種子を蒔く。
例:コロンバイン、クリスマスローズ、ディプタム、トリカブト、クラウンインペリアル、オキナグサの花、スズラン、サクラソウ、芍薬、カウスリップ、ブリーディングハート、カンゾウ、グローブフラワー、スミレ。
- 丈夫な夏の花を屋外で種まきする
例:マリーゴールド、デルフィニウム、コーンフラワー、ポピー、ゴールデンポピー、カスミソウ、イベリス。
- 芝生から古い草や葉をすくい取る。
- シャクナゲなどの観賞用樹木を植える。
- 生け垣のトリミングと花低木の剪定。:例:レンギョウ、ウツギ、ブッドレア、タニウツギ。